AUDIENCE

あんだけ仲良かったのに少し前はギクシャクしていた。
そして最近になって以前のように戻った。
……というよりもさらに仲良くなった気がする。
付き合ってんだろうなーという推測は容易にできる。
しかし、推測は推測に過ぎない。
となると、その推測を確信に変える必要がある。
つまり、あの二人から聞かなければならない。
二人とも友人の関係である人物に白羽の矢がたつわけで。
『えー、あたしぃ?』
そこで二人とも友人の関係に当たる河本知美(かわもと ともみ)が選ばれる。

男子「頼む!お前しかあの二人から聞き出せないんだ」
知「……あたしの依頼料、高いわよ?」
男子2「今日のランチ定食2つでどうだ?」
知「カツ丼追加ね」
男子「ぐっ…この『アメ車』めっ!」
異常なまでに食べる割にはまったく太らず、すぐ腹が減る。
あまりの燃費の悪さに『アメ車』の異名が付けられた。
知「まあちゃんと依頼はキチンとこなすわよ」

休み時間。
さて、まずはどちらから攻めるか。
理央が教室から出ていく。
ちょうど菜奈だけしかいない時間が出来た。
早速聞いてみる。
知「ねえねえ菜奈」
尋問が始まった。
教室にいる生徒全員が2人の会話に耳を傾ける。
菜「何?」
知「理央ってさ、彼女いるの?」
菜「えっ!?」
知「なんで菜奈が驚くのよ」
菜「い、いきなりそんな事聞かれたらビックリするわよ」
知「…ふーん、そう。いなかったらあたしが彼女になろうかなーって思ってさ」
菜「だっ、だめっ!理央は私のだもんっ!」
知「……ほっほーう」
菜「あ……」
みるみるうちに顔を赤くする菜奈。
誘導尋問成功。
グッジョブ!
生徒全員が心の中で親指をビシッと立てる。
とりあえず依頼を果たしたが、もうちょい深く聞いてみよう。
知「んで、いつ頃から付き合うようになったの?」
菜「…に…二月の……アレ…」
真っ赤になりつつも律儀に答える菜奈。
二月のアレというとバレンタインデーか。
そういえばあの頃からギクシャクしていたのが無くなった。
つまりバレンタインデーに告白とかして付き合う形になったのだろう。

なんでこんな事になったんだろう。
逃げ出したい状況なのだが逃げ出せない雰囲気が出ている。
知「…あいつのどこが好きになったの?」
菜「ええっ!?」
知「元幼馴染なんだから理央のほとんどは知ってるでしょ」
付き合っている事をカミングアウトさせてしまったのにまだ聞いてくる。
しかも好きな所。
聞かれた以上は言わなければならない。
好きな所……。
理央は基本的に優しいし、嘘とかつかないし、勉強は前は悪かったけど最近頑張ってるし、
キスの時だって男らしく迫ってきたけどちゃんと私の事を考えてたし…。
それに私が通り魔に襲われた時に助けてくれてとてもかっこよかったし…。
菜「い……」
知「…い?」
菜「いいとこばっかでわかんない…」

知「うわ…」
うわっ。
全員ドン引き。
教室の空気がおかしくなっている時に、理央が来た。
理「ん、顔赤いけどどうした菜奈?」
菜「なっ、なっ、なんでもない」
知「…ほんじゃね」
聞くだけ聞いて席に戻った。

次の休み時間。
菜奈が教室から出て行ったのを確認して、理央の方に行く。
付き合っているという事実はわかったが、一応こっちも聞く事に。
知「ねえ、理央」
理「ん、何だ?」
知「…単刀直入に聞くけど、菜奈と付き合ってんの?」

理「ぶっ!」
思わず吹いた。
一体誰からそんな情報を聞いたのだろうか。
理「だ…誰から聞いた?」
知「菜奈から」
……ああ、道理で。
知「んでさ、菜奈のどこがいいの?」
理「いいとこ……」
菜奈のいい所?
あいつは俺の勉強を手伝ってくれるくらい優しいし、真面目だし、背が小さいところもかわいい要因だし……。
理「よ……」
知「……よ?」
理「良すぎてわかんねえ……」

知「………」
バカップル。
全員が理解した。

男子「河本、お疲れさん」
知「ん……ちょっと今回は厳しかったわ」
別の意味で。
男子2「よし、今回の報酬のメシ代な」
男子から昼食の代金を受け取る。
知「………あたしドン引きしたからカツ丼の分はいいわ」
食欲がなくなった。
でもランチ定食2つは食べるけども。

後書き

今回は第三者の視点要素を絡めてみました。
他人の恋愛程気になるものは無いと思います。
さて、しばらくは進展話はありません。
多少はくっつく話はありますが当分は平行線になります。
それでは次回にて。
今回のコラムはこちらっ