ピンポーン。
またしても勉強中に玄関のチャイムが鳴る。
……また菜奈なのだろうか。
まあこんな時間だし他に来ないだろう。
親は今はいないし、自分が行くか。
理「はーい」
椅子から立ち上がり、玄関へと向かった。
玄関のドアを開けると案の定菜奈がいた。
しかし、前回と違うのは洗面器にタオル、シャンプーを入れて持っていた事だ。
理「どした?そんな昭和チックな恰好は」
菜「うん、なんかお風呂の調子が良くないから理央の家のお風呂を借りにきたの」
理「ん、別にいいぞ。寒いから早く入れ」
菜「うん」
菜「それじゃお風呂借りるね」
理「あいよ」
居間に行き、適当な所に座ってテレビをつける。
勉強の続きでもしようかと思ったが、菜奈の様子も気になる。
まあ使い方を間違える事はないと思うが。
風呂……ねえ…。
ん?
ん!?
菜奈がすぐそこの風呂に入っているのか!?
裸の菜奈が。
すっぽんぽんの菜奈が。
産まれた時の姿の菜奈が。
一糸纏わぬ姿の菜奈が。
肢体を露わにしている菜奈が。
裸体をさらけ出している菜奈が。
な…なんで『裸』だけでこんなにボキャブラリー豊かな文章が出るんだ。
俺が男だからだろうか。
そう思った直後、
菜「きゃああああっ!」
菜奈の悲鳴が聞こえた。
理「どうした!?」
大急ぎで風呂場に向かう。
ふと、先程の妄想を思い出した。
今、菜奈は裸だ。
見てはいけない。
ぐりっ
風呂場に通じる戸を勢いよく開けた。
理「どうした菜奈!?」
菜「とっ、トカゲが窓に…」
理「なんだトカゲか」
焦って損した。
……菜奈の方を向いてしゃべってるように思われるが、実際には顔を180度近く回して後ろ向きに近い状態で話している。
これなら問題は無い。
が、この安全な状態を菜奈がぶち壊してきた。
菜「……前、向いていいよ」
理「はあ!?何バカ丸出しな事言ってんだオイ!?」
菜「大丈夫だから」
理「いやお前の方はふんぎりついても俺の方がまだ…!」
菜「いいから!」
菜奈が両手で頭をつかみ、ぐりっと正面、つまり裸になっている菜奈の方に向かせた。
…………あれ?黒い。
身体のパーツでこんな黒い部分ってあったっけ?
菜奈から少し身体を離してみてみると、水着を着ていた。
夏の時に見た水着ではないし、高校は水泳の授業は無い。
理「………中学の時の競泳水着か?」
菜「正解。これなら見られても大丈夫だもん」
理「………こ、こんな貴重なモン拝めるならもうちょっと近くでおぶっ」
正拳突き炸裂。
菜「ジロジロ見ないの!?」
先程の言葉と矛盾しまくってる言葉と暴力をおみまいされた。
理「ま、大丈夫みてーだからとっとと出るわ」
戸を閉めて、一息ついた。
ま、レアなもの拝めたし、よしとするか。
菜「まったくもう…あんな近くで見る事ないのに」
……もう大丈夫だし、水着を脱ごうかな。
理「ん?」
ふと床を見ると菜奈が持ってきた洗面器が置いてあった。
なんだ風呂場に持ってくの忘れたのか。
どうせ菜奈は水着だし、勝手に開けてもいいだろう。
理「おい菜奈、洗面器忘れるぞ」
ガラッ
理「!!!!」
菜「!!!!」
バタンッ
…………………………………。
菜「ね、ねえ理央」
戸越しに菜奈の声が聞こえる。
理「な、な、何だ?」
菜「………見た?」
理「……か………」
菜「…か?」
理「か、可愛いお尻だったぞ」
ガラッ
菜「理央のスケベーッ!」
シャンプーボトル砲炸裂。