その異変は2人だけでなく、教室にいる生徒達もすぐに理解できた。
いつも一緒に登校しているのに、今回は別々。
しかも、話もしない。
明らかに何かがあった。
聞いてみるのが一番なのだが、下手をするとより2人の関係がこじれるのではという危険もある。
とりあえず傍観。
2人に知られないように生徒達は密かに会議を行い、こういう結論に達した。
はたから見るとユニークな生徒達である。
菜「それじゃ行ってきまーす」
玄関を出て、学校との逆の方向を向いたものの、足は動かない。
菜「………どうしようかな」
理央の家に行くべきか。
菜「……やっぱり…いいかな」
理由はあまり考えたくなかった。
考えたら、何か余計なものが出てきそうで怖かった。
それが何で怖いのかも考えたくなかった。
いつも一緒に歩いていた道を一人で歩くことにした。
理「……来ねえな…」
いつもだったらガラッと玄関のドアが開いて「おはよう、理央」と菜奈が来るはず。
それが最近ない。
理「…たまにはこっちが行ってやるかな」
これまで毎回菜奈が迎えに来たのだから、こっちが迎えに行くのもいいだろう。
玄関を出て、菜奈の家の前に着く。
ドアホンを押そうと手を上げた。
が、すでにその手は下に降りた。
理「………やっぱいいかな」
やめた理由はわからなかった。
いつも一緒に歩いていた道を一人で歩くことにした。
それは朝だけでなく昼もだった。
昼食はいつも一緒に食べていたのに、あれから別々に。
そして帰りも。
そのまま別々に帰る。
菜「ただいま」
玄関で靴を脱ぎ、階段を上がり、自分の部屋に入る。
鞄を机の上に置き、ベッドに座る。
こんな感情は初めてだった。
ハッキリとしない、もやもやしたもの。
存在するのに、存在しないもの。
説明のできないもの。
誰かなら知ってるのだろうか。
菜「……つらいなあ」
一人つぶやいた。
理「ただいまー」
階段をトントンと上がり、自分の部屋に入る。
理「あー、疲れた」
ぽいっと鞄をベッドの上に置き、椅子の背もたれを正面にして乗馬のように座る。
深い溜息をついた。
例えようの無い感情に襲われていた。
別の事をしていてもどこかひっかかる。
理「あーもう…なんなんだよっ…」
一人愚痴った。