告白

季節は冬。
ちょうどこの日はバレンタインデー。
それを実感というか痛感させられる時は学校の玄関からである。
カチャッと靴箱を開けると梱包された2つの小包がある。
理「ん?」
2つとも取り出す。
理「誰からだ…?」
くるくると回転させて送り主を確認しようとする。
しかし、名前は書かれていないし、手紙やメッセージカードも挟まれていない。
勝手な推測だが運動会で自分が走っているのを見て好きになったのだろう。
でなければこうやってバレンタインに送られてくる事は無い。
嬉しいと言えば嬉しい。
が、素直に喜べない自分がいる。
理「…あいつからなら嬉しいんだけどな」
ぽつりと呟いて教室に1人で向かった。

教室でもこの『特別な日』である事を実感させられた。
机の中にも3つ入っていた。
合計で5つ。
しかも朝から。
という事はもうちょい増える可能性がある。

予想通りの展開が始まった。
昼休みに他のクラスの女子がやってきて手渡しで持ってきた。
持ってきた理由はなんとなくわかっていたが、『何で俺に?』と聞いたら今朝の推測通りだった。
そしてこのパターンは3回続き、その度にあいつからの視線が痛かった。
さすがにどんな顔をしているのか見る事はできなかった。

ようやく授業が終わった。
菜奈の方を向くと、菜奈は教室から足早に出て行った。
追わないと。
追って何ができるのかはわからない。
ただ、このままではマズイはず。

もうすぐ家に着く前になんとか菜奈に追いついた。
理「なあ、待てって」
菜「何よ」
足を止めくるっとこちらに向いて返事をしてきた。
明らかに機嫌の悪い返事だ。
理「…そんなに俺がチョコもらったのが嫌なのか」
この場合は直接言った方がいいと判断した。
菜「そ、そんなわけないでしょ」
少し動揺しているように感じた。
理「それに、チョコは全部ダチにあげたよ」
菜「えっ!?」
この行動に菜奈は驚いたようだ。
ただ、もらいっぱなしは失礼なのでお返しをするために送り主の情報は控えてはいる。
菜「な、なんでそんな事したのよ」
自分にとって一番大事な所を突かれた。
……ここで言うべきか?
一瞬躊躇した。
言おう。
今言わないとまたこの嫌な関係がずっと続いてしまう。
理「…一番欲しい人からもらってねえんだよ」
菜「だ、誰よ。そんな変わった女の子」
理「…お前だよ。菜奈」
自然と言葉が出た。
偽りのない言葉が。
菜奈は予想だにしない言葉に驚いていた。
理「菜奈」
そして、前から言おうと思っていた言葉を口にした。
理「お前が好きだ」

後書き

この話は続きます。
やはりバレンタインデーというのは特別な日だと思います。
多分、女性にとって一番勇気が出せる日なんじゃないかな?
人によっては一世一代の大博打になるかもしれませんし。
多くの人が賭けに勝ってほしいものです。
…まあこれ掲載されるの間逆の夏ですが(苦笑)。
それでは次回にて。

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