長い一日@

本日は大学入試の合格発表。
自分と菜奈は志望校の大学に向かっている。
菜「うー………やっぱり不安…」
どうも菜奈は答え合わせの時にいくつか間違っていたのが気がかりになっている。
理「ちょっとぐらい間違えたぐらいで心配すんなよ」
そういう事を考えたら自分は回答用紙の記入の場所を全てずらして書いてしまったかもと不安になってしまう。
答え合わせをした結果、自分はギリギリで、菜奈も同じぐらい。
あとは祈るしかなかった。

大学の校門が見えた。
合格発表の看板がある場所は校門を通ってすぐ。
校門を通ると、すぐに自分達の運命が決まる看板が見えた。
受験番号を確認する。
菜奈の番号は自分と一つ違い。
看板の前に立つ。
ずらりと並んでいる番号を目で追う。
理「………………………」
菜「………………………」
あった。
菜奈の番号も。
理「あった!」
菜「あった!」
菜奈の顔がぱあっと明るくなった。
多分、自分の顔もこれでもかというぐらい明るいのだろう。
一年間の努力が今報われた。
あまりにも嬉しくなって菜奈を抱いた。
菜「りっ……理央……」
しまった。
公衆の面前でやってしまった。
理「わ、悪い」
菜「う、ううん」
周りの目線が痛い。
合格も決まったし早々に立ち去ろう。

家路へと歩きながらぐうっと背伸びをした。
理「あーっ、これで大学も一緒に行けるな」
菜「う、うん…そうだね」
しかし、菜奈は合格したのに何故かうつむいている。
どういう事なのだろう。
そんな事を考えているうちに菜奈の家の前に着く。
菜「あ、あのね…理央………ちょっと……言いにくい事なんだけど」
理「言いにくい事?」
菜「ほんとにちょっとだけ……う…かなりかもしれないけど……」
言いにくい事。
理「…………ま、まさか…」
考えたくは無かった。
まさか菜奈はそんな事になっているなんて。
理「親の転勤でもう会えないのか…!?」
菜「ち、違うわよ!もしそうだったら同じ大学を受けないでしょ!?」
理「あ、それもそうか」
となると、菜奈の言いにくい事とはなんなのか。
菜「その…………うんと………ね………きょ…今日……親……いない…の」
理「っ!!」
菜奈の言葉で理解した。
合格したのにうつむいていた事。
そして、それをわざわざ俺に伝えたという事を。
菜「も…もう合格したから勉強する事もないし……り、理央も頑張ったし…その…ご褒美とかじゃないけど…その…」
喋れば喋る程菜奈の顔は赤くなっていき、それに伴って声も小さくなっていく。
理「わ…わかった……晩飯食い終わったらそっち行くから」
なんとなく、返事をした。
理「う…うん……じゃあ…………待ってる…から」
言いたい事を言った後、逃げるように家に入った。
理「……………」
……と…とりあえず帰るか。

玄関の戸のカギを閉め、何かに追われているかのように大急ぎで自分の部屋に入った。
菜「はーっ……はーっ……はあっ…!」
呼吸を整えようとするが、全然止まらない。
心臓の鼓動が大きく聞こえる。
このまま破裂しそうなぐらい大きく聞こえる。
言っちゃった。
大事な事、言っちゃった。
時計を見た。
…まだお昼になったばっかり。
……今日、すごく長く感じるかも。

後書き

今回から進展話となります。
今までのように『前編』ではないのは話の区切るポイントが前中後編だと非常に難しかったのでナンバリングにしました。
ハッキリ言ってしまうと一年では終わらないぐらい長くなります。
それでは次回にて。
今回のコラムはこちらっ