理「あー……暇だな…」
昼食を食べて、ベッドに寝転ぶ。
親には友人達と合格パーティーをすると言って外泊の許可をもらった。
しかし、菜奈との約束の時間にはまだまだある。
街にでも出かけて時間を潰そうかと考えたが、いざ外に出たら菜奈とバッタリ会ってしまいそうで怖い。
だからこうして自宅待機という状態に陥っている。
…それに夕食を食べたら菜奈の家に行くと言ったが、実際に何時頃に行けばいいのか迷う。
仮に行ったしてもすぐに始まるわけじゃないし、気まずい雰囲気になるだろう。
したくないというわけではない。
ただ、そのタイミングが自分の意思とは無関係にやってきてテンパっている。
約束の時間までまだ6時間以上もある。
暇というものがこんなにも苦痛とは思わなかった。
同時刻。
玄関のドアを開け、顔だけ外に出す。
…………。
い、いないよね。
夕食は家にあるもので済まそうと思ったが、食材が全く無かった事は予想外だった。
おそらく泊りで出かけるので冷蔵庫にある食材を片付けてしまったのだろう。
玄関を施錠して、大急ぎで理央の家を通り過ぎる。
何か変だ、自分。
言いだしっぺは自分なのに、もの凄く緊張してる。
この緊張があと6時間以上も続く。
それどころか緊張はさらに強くなっていくと思う。
緊張が、こんなにも辛いとは思わなかった。
…理央が夕食の後に来ると言って安心した。
そうじゃなかったら発狂していたかもしれない。
午後6時。
少しだけ早い夕食を食べ終え、自分の部屋に戻った。
そろそろか。
……本当に『そろそろ』なのだろうか。
行くタイミングがわからない。
初体験を迎えたカップルは当時こんな気持ちなのだろうか。
同時刻。
コトコトと味噌汁の入った鍋に火をかけていると、炊飯器の炊き上がりの電子音が鳴る。
熱したフライパンに薄い豚ロース肉を入れ、火を通し、焼肉のタレをかける。
夕食の献立がいまいち決まらず、スーパーに行っても決まらず、焼肉になってしまった。
ス、スタミナつけなきゃいけないよね。
わかったようなわからないような理由でこの献立になってしまった。
味は正直わからなかった。
それどころではなかった。
あと少しで理央が来る。
私の頭の中はそれでいっぱいだった。