菜奈の部屋に繋がるドアノブをつかみ、ゆっくりと回しつつ奥の方に押していく。
ベッドに菜奈が座っており、クリスマスの時にプレゼントした熊のぬいぐるみを抱いていた。
なんとなく、菜奈もそわそわしているのがわかる。
理「えっ…と……隣、座っていいか?」
立ちっぱなしだと何も進まない。
菜「あっ……う、うん」
菜奈は熊のぬいぐるみをタンスの上に置き、自分の座るスペースを開ける。
とりあえず菜奈の左隣に座った。
………………ど、どうする?
座ったと同時にスタートというわけではない。
何かしらこの緊張をほぐす必要がある。
会話が一番無難なのだろう。
………やはり、自分の菜奈に対する気持ちを言うべきなのだろう。
理「…一年半ぐらい前…だったかな?」
菜「えっ?」
理「ほれ、菜奈が通り魔に襲われた時あったろ?」
菜「あ、うん」
理「あん時から、なんだよな。菜奈を好きになったのって」
菜「理央も……そうだったの?」
理「『も』って……菜奈もか?」
菜「う、うん……あの時の理央……すごくかっこよかった」
理「そ、そうか?」
菜「今まで単なる幼馴染で、異性とか、男の子とかそういう感覚はまったく無かったの」
理「俺も……菜奈をただの幼馴染ってずっと思ってた。あん時まで」
菜「理央…」
理「あれからずっと菜奈を意識してた。バレンタインの時も」
菜「もしかしたら、あの通り魔って恋のキューピットだったのかも」
理「ははは、そうかもしれないな」
今となっては通り魔に感謝したい。
この一年間はきっと忘れられない。
菜奈と目が合う。
菜奈の瞳はほんの少しだけ潤いを持っていた。
菜「私……理央と幼馴染で良かった」
理「うん、俺も」
菜奈の目が閉じる。
それに合わせて、目を閉じてキスをした。
菜奈の手が自分の背中に回り、ぎゅっと抱擁をしてきた。
こちらも菜奈を抱きしめ、キスをしたままベッドに押し倒す。
唇を離し、菜奈を見た。
顔を赤くし、潤んだ瞳でこちらを見ていた。
菜「理央………電気、消して」