Re:Re:

理央は机の上にある合計100円にも満たない小銭を見て悩んでいた。
どうしたものやら。
そんな気分だった。
バレンタインのお返しにと、もらったメンツ用の分を買ったら肝心の菜奈のお返しの分の予算がなくなってしまった。
前借りは無理。
どうしたものやら。
さすがにお返しをしないわけにはいかない。
金のかからない方法はないだろうか。
ホワイトデーは明日。今日はもう夜。
理「んー…どうしたもんかな…」
ごろんとベッドに横になって雑誌を読む。
理「んー…ん?」
雑誌の記事の中にクッキーの名店コーナーという記事を見た。
クッキー……。
理「………これだ」
もうこれしか解決策は無い。
理「よし、さっそくおっぱじめるか」

翌朝。
玄関の戸を菜奈が開ける。
菜「おはよう、理央…っ……えっ!?」
菜奈が理央の顔を見て驚いた。
それは目の下のでっかいくまを見たから。
菜「どっ、どうしたの理央!?」
理「んー…ちょっと徹夜…ああ、違うか…『完徹』ってやつだ」
要するに寝ていない。
菜「なっ、何で!?どうして!?」
徹夜ならともかく完徹は異常と言える。
理「話せば長く……ならねえか。とりあえず行きながら話すぞ」
菜「う、うん」

菜「そ、それで?どうして完徹なんかしたの!?」
家を出てほんの数歩で早くも菜奈が聞いてきた。
理「…とりあえずコレ、食ってくれ」
鞄の中から取り出したのはビニール袋に入ったクッキー。
しかし、そのクッキーは市販されているのとだいぶ違う。
形は円でもなく、かといって四角でもない歪な形。
色はとりあえず『焼けてます』といった色。
生っぽくはなさそう。
菜「……大丈夫?」
理「…言うと思ったぞ。俺も試しに食ってみたから大丈夫だ」
菜「う、うん。それじゃ食べるね」
とりあえず一口。
理「ど、どうだ?」
菜「うん、見た目と違ってまあまあおいしいかな」
理「…そ、そうか…良かった…」
理央は満面の笑みを浮かべる。
しかし菜奈はその笑顔の理由がわからない。
その理由を突き止めるにはこのクッキーが全てを知っているはず。
菜「…このクッキー、どうしたの?」
理「ああ、それか。俺が作ったんだ」
菜「ええっ!?」
衝撃の一言だった。
理「色々と考えてみたけど、これだったら手作り感が出ると思ってな」
菜「………」
理「まあ、おいしいって言ってくれたし、俺は満足…っておい?」
菜奈は泣きそうな顔をしていた。
理「な、何も泣く事ねえだろ」
菜「…だって、私が理央にあげたのは市販のだったし、すごく遅くに渡しちゃったから…」
おそらく菜奈は自分の時のと比べてしまっている。
なんとかフォローしないと。
理「そ、そんな事はないぞ。俺のだって他のやつのお返しを買ってったらお前の分の資金がなくなったもんで苦肉の策でクッキーを大慌てで作ったんだからよ」
菜「え……」
理「そ、それにな、チョコうまかったし、返事もらえてうれしかったし、俺のろくでもないクッキーの方がダメだろ」
菜「そ、そんな事ないもん。すごく嬉しかったよ」
理「そ、そうか」
どうやら菜奈の機嫌は治ったようだ。
菜「あの…えっと…………お返し、ありがとね」
菜奈がにこっと笑う。
理「お、おう」
……完徹して頑張った甲斐があった。
おかげで今日の授業がつらいかもしれないが、良かったと思った。

後書き

そういえばチョコをもらう話は結構書きましたが、お返しをする話はまったく書いた事がありません。
まあ男子は買って渡して終了という流れがほとんどなので書く必要がないと思っていたんでしょうね。
金をかけずに喜んでもらえるお返しは何だろうと考えると、こういう手作りのやつがウケやすいんでしょうかね?
『お返しは3倍』という物騒なルールがあったりとホワイトデーというのは複雑怪奇なものだと思います(笑)。
それでは次回にて。