ガリガリガリとペンを走らせる音が部屋の中に響く。
その音は1つだけでなく向かい側の菜奈もペンを走らせていた。
レポートを一気に仕上げている最中。
菜奈が辛そうな顔をして書いている。
『無理すんなよ』と言いたいがあえて何も言わない。
無理をする必要がどうしてもあった。
このレポートを早く終わらせればその分夏休みを堪能できる。
そのご褒美のために頑張っている。
2人同時に書き終え、お互いのレポートを読み、間違いが無いか確認。
理「………………OK」
菜「………………うん」
終わった。
…………終わった。
理「…………よし!」
菜「海行こ!海!」
すでに遊びのスケジュールは決まっていた。
一泊二日の海水浴。
電車で一時間ほどで到着した。
そこそこ客がいるが過疎という程ではなく、海水浴を楽しむにはちょうどいい雰囲気だった。
予約していた民宿に寄り、一旦荷物を置く。
とりあえず昼飯代と水着をバッグから取り出す。
菜奈もごそごそとバッグから必要なものを取り出していた。
ふと、菜奈が手にしているものが目に入った。
サンオイルだった。
理「ん?日焼け防止ならわかるけどあえて焼くのか?」
菜「うん。試しに焼いてみようかなって」
サンオイル………。
理「手伝うか?」
欲望を口にした。
菜「うん」
あっさり許可をもらえた。
恋人という特権は強し。
荷物を持って海へ出発。
民宿から海まではほんの数分の距離。
ちょっとした土手を登りきると、砂浜と海が見えた。
菜「うわぁ…!」
菜奈はキラキラと目を輝かせていた。
そういえば去年のプールの時もはしゃいでいた。
そもそも今回の海水浴のプランを考えたのは菜奈だった。
これから毎年海かプールで菜奈の水着ショーを拝めるようになるか。
ビニールシートを敷いて場所を確保。
更衣室で水着に着替えた。
去年と同様のバミューダ型。
菜奈の方は時間がかかっているのか、こちらの方が先だった。
今年の水着はどんなデザインだろうか。
………男の水着は簡単だが女の水着ってトレンドの色とか色々大変そうだな。
菜「理央、おまたせ」
そんな事を考えていると菜奈の声がした。
菜奈の方を振り向き、まず水着を目視した。
理「おお…」
唸った。
『ザ・王道』という言葉が似合うシンプルなビキニ。
肝心の色は菜奈のイメージカラーとも言える若草色。
理「水着っていいな」
よくわからない言葉が自然と出た。
早速泳ぎたいのだが、菜奈は日焼けを希望している。
理「とりあえず……サンオイルか」
ビニールシートの所まで戻り、菜奈は早速サンオイルを塗る。
菜「最初は前を焼くから後ろを焼く時に手伝って」
理「あいよ」
菜奈を見ているのもいいが、せっかく海に来たのだからやはり泳ぐのが最適解か。
ばちゃばちゃと泳ぎながら、ふと疑問が出てきた。
何故菜奈は日焼けをしようとするのか?
海に来たからといえばそれまでなのだがそれ以外の理由があるはず。
まあこんがり焼けた後で聞けばいいか。
海なのに冷や汗をかいた。
理「あ…危なかった」
離岸流。
テレビでこれに関する番組を見た事があったがまさかアレに巻き込まれるとは。
対策として海岸に向かって泳がずに平行線を描くように横に泳げばいいと知って良かった。
さて、そろそろ菜奈が焼き面をひっくり返す頃か。
菜奈の所に到着。
菜奈の肌は程良く焼けていた。
健康的な色だ。
理「菜奈、ぼちぼち後ろか?」
菜「うん」
菜奈は身体を起こし、再びサンオイルを塗り始める。
手で届く範囲は塗り終え、菜奈はうつ伏せになる。
菜「じゃあ、背中塗ってね」
………彼女ができたらやりたいランキング10位以内に入るであろうこの行為ができるとは。
理「じゃ、塗るぞ」
菜「あっ、水着の所は塗らなくていいから」
理「うん?」
菜奈の注意がよく理解できなかった。
菜「水着の紐の下とかは塗らなくていいから」
それだと水着の跡が出るのだが。
理「それでいいのか?」
菜「うん。多分」
…………多分?
『?』が頭に浮かんだまま、菜奈の言う通りに塗った。
菜「理央はまた泳ぐの?」
理「……いや、さっき死ぬほど泳いだからいい」
菜「?」
その後は自分もサンオイルを塗って少し肌を焼いた。
夕暮れが近づき、ぼちぼち民宿に帰る時間だ。
理「んー……ちっとは焼けたか?」
短かったため、自分ではどのぐらい焼けたかわからないのでなんとも言えない。
しかし、菜奈ははっきりとわかる。
理「こんがり焼けたな」
例えるなら程よく焼いたトーストのようだ。
健康的な焼け具合。
これ以上焼くと昔流行った『ガングロ』になってしまうのだろう。
菜「うん、いい感じ」
理「…何がだ?」
何故菜奈は日焼けをしようと考えたのか。
それがまだわからない。
民宿に帰り、夕食を食べ終える。
理「あー…食った…」
海でがむしゃらに泳いだためか異様にメシがうまかった。
あとはもう寝るだけ。
すでに民宿側のサービスで布団が敷かれていた。
…………ピタッと布団が2つくっついているのはどういう思惑なのだろうか。
理「明日も早いし、とっとと寝ようぜ」
こちらの声掛けに、菜奈の反応は無かった。
理「菜奈?」
菜「……………」
菜奈は何も言わず、着ていた寝間着の浴衣をするすると脱いでいく。
理「へ?何し………て……………」
言葉が止まった。
止まった理由は菜奈の肢体。
浴衣を脱いだ菜奈の身体は何も身に着けていなかった。
ただ肝心の胸の先端はニプレス、割れ目は前張りで隠されていた。
しかし大事なのはそこではない。
今日一日菜奈はサンオイルを塗ってこんがりと焼いた。
だが水着の部分は焼けないのでそのまま残る。
つまり、水着のラインが白く残った菜奈の裸が目の前にある。
サンオイルを塗る時の菜奈の注意はこの為だった。
菜「前…ね……理央の本にこういうの載ってたからどうかなって思ったんだけど……へ……変かな……」
菜奈が顔を赤くしつつもじもじとする。
……………………………。
理「後ろ向いて」
菜「こ、こう?」
菜奈が振り向くと、ニプレスや前張りといった邪魔者は存在しなかった。
程良く焼けた肌に胸の高さに真横に一直線の白いライン。
チャームポイントと思っているお尻は日焼けと美白のツートンカラー。
理「エロの神様―っ!有難うございますっ!!」
眼福。
目の保養。
こういう言葉はこういう時の為にあった。