戦後の放課後

授業が終わり、菜奈と一緒に家路に向かった。
理「あー………やっと終わった」
授業が終わっただけではない。
大学の試験が昨日終わったのだ。
ざっと一年かけて戦った受験戦争がやっと終わったのだ。
ところが、菜奈の方は終わってはいなかった。
菜「まだ試験の答え合わせをしていないから早速やっちゃおうよ」
理「うへえ……まだ続くのか」
菜「合格するまでが受験戦争なんだから」

一旦自宅に帰って私服に着替え、菜奈の家にすぐ向かった。
チャイムを鳴らさず玄関の戸を開ける。
理「おーい、菜奈」
菜「あっ、今飲み物準備してるから先に部屋に入ってて」
理「あいよ」
階段を上がり、菜奈の部屋に向かう。
部屋の戸を開けると、ふんわりとした香りが鼻に届いた。
たびたびこの部屋に来るが、やっぱり『女の子の部屋』って感じだな。
さて、菜奈はまだみたいだしちょっと待つか。
ベッドに座り、太腿に肘を乗せて頬杖をつく。
………なんかすげえ眠い。
夜更かしをしているわけではないのに眠い。
一年以上続けていた受験勉強の反動なのだろうか。
……………菜奈のやつ、まだかな……。
………………。

お盆にお菓子と飲み物を乗せ、階段を上がる。
自分の部屋の戸を開け、いると思う理央に声をかけた。
菜「理央、お待たせ……あれ?」
ベッドに腰掛けて寝ていた。
……頑張ったもんね。
理央が起きたら答え合わせを始めよう。
お盆をテーブルに乗せ、理央の隣に座る。
すると、ベッドのバランスが崩れ、理央の身体がぐらりとこちらに倒れてきた。
菜「きゃっ」
理央の頭が胸元にぽふっと乗る。
菜「あ……」
無意識に手が理央の頭を抱擁していた。
………受験……終わったもん……ね。
理央の頭に鼻を近づけ、匂いをかぐ。
…あったかい……。
菜「はー……はー……」
知らない内に息が荒くなっている。
…変態みたい………。
理「……ん……ん………」
でも今なら………。
理「………ん!?」
菜「えっ!?」
起きた。
理央がこっちを見ている。

『な………何やってんだ………』
『あ………えっ…と……そ…の……』

目だけで会話をこなすが…どうやっても誤魔化せない。
菜「しっ、知らないっ!」
ぎゅうっ。
理央の頭を抱き締める。
菜「おとなしく……しててよ」
もう少しだけ、このままでいたい。
自分の息がすごく荒い。
……勝手に抱き締めたりして……変なのかな、自分。

ほどよく満足して、抱擁を止める。
それに合わせるように理央が離れる。
理「んー………」
真っ赤になりつつ頭をボリボリとかいている。
多分、私も赤いと思う。
理「な……なあ……その………俺もやっていいか?」
菜「えっ!?」
理央の発言は自分にとって予想外だった。
ただ、理央のお願いはこの状況からすれば正論と言える。
菜「う……うん」
断る事はできなかった。
理「じゃ、じゃあ俺の膝に座ってくれ」
菜「う、うん」
同じ事をされる。
どんな事をされるのかは自分はしたからわかってはいる。
けれど、自分がどうなってしまうのかがわからない。
その事だけで恥ずかしさや興奮を感じる。
理央の言う通りに膝に乗る。
その直後、理央の片腕が私の両肩を巻き込むように抱擁してきた。
菜「あ……」 
自分の時は両腕だったが、体格の差なのだろう。
じゃあ残った腕は?と思った直後、頭部に大きなものが触れた。
頭を撫でられている。
それだけなのに。
ただそれだけなのに頭の中がぐらりと揺れてくる。
体中が敏感になってくる。
先程まで気づかなかったが理央の息が荒く聞こえる。
全力疾走した時のような荒さじゃない。
もっと野性を感じる。
……けだもの。
それが一番しっくりくる。
ど…どうなっちゃうんだろ私…。
や…やだ……頭の匂い嗅がれてる…。
昨日洗ってないのに……。
だ…だめ……そんな撫でちゃ………。
変な声……出ちゃ……。

菜「ゃぁ………」

理「!?」
菜「!?」
理央と目が合った。

『き…聞いた?』
『は…はっきりと』

一気に何かが込み上げた。
理央をぐいぐいと部屋の外に出そうとする。
菜「きょっ、今日は帰って!!」
理「なっ!答え合わせはいいのかよ!」
菜「そんなのどうでもいい!」
無理矢理家の外に出し、玄関の戸を閉め、鍵をかける。
菜「はー……はー…」
あーもー……私何やってんだろ……。

後書き

今回の話はプロジェクトの最初期に考えたものです。
というかほとんどの話が最初期に考えてるんですけどね。
今までのプロジェクトではここまで細かく話を考えた事はないんです。
考えてもせいぜい6、7話ぐらいで。
今回のプロジェクトは図面に書かれた通りにキッチリと組み上げていく感じです。
ただまあ最終的にはアドリブ全開だったりするんですけどね(笑)。
それでは次回にて。