ピピピッ、ピピピッ。
理「ん……」
朝だ。
むくりと起き上がり、ぐっと背伸びをする。
睡眠時間は短かったが、目覚めは悪くない。
やはり昨日、というか昨日から今日にかけての出来事の影響だろう。
やっと日常が戻ってきたような気がした。
朝食を食べ終えて身支度をし、玄関に向かう。
靴を履いて玄関の戸を開けようとすると、勝手に開いた。
自動ドアに改造されていた、なんて事は思ってない。
開けたのはいつもの人物。
幼馴染…改め『彼女』の菜奈。
菜「おはよう、理央」
菜奈はにこりと笑う。
理「おう、おはよう」
こちらも笑って挨拶する。
日常が、戻ってきた。
学校に行きながら会話をし、昼食も一緒に食べる。
日常が戻って……あれ?
も…戻り過ぎてないか?
今までの行動を思い返すと、『幼馴染』の頃とまったく変わらない。
……まさかタイムスリップはしてないよな。
確かに告白をして、返事はもらった……はず。
実は夢でしたなんて事はない……はず。
……自信がなくなりつつある。
肝心のもらったチョコレートはすでに胃袋に収まって原型は残っていない。
包装も下手をするとウチのオカンが処分してしまった可能性がある。
で、授業が終わる。
菜「理央、一緒に帰ろ」
理「お、おう」
……どうする。
どうすれば菜奈が『彼女』になっているのか確認できる?
…………ここはもう一度告白するべきなのか?
もうそれしかない。
悩んでいるうちに、もう家が見えてきた。
ヤバイ。
早く告らないと。
いや告白しなきゃ世界が消滅するわけではねえけど。
理「な、なあ、菜奈」
菜「うん?なあに」
…………う、緊張してきた。
あの時の告白は話の流れで言ってしまったようなものだ。
……ええい、勇気を出せ。
一世一代の大博打に勝ったはずの男だ。
理「す、好きだぞ」
よし、言った。
言ってやったぞ。
菜「ぇ……」
肝心の菜奈の反応がすごい気になった。
みるみるうちに顔を赤くして、うつむいてしまった。
そしてちっちゃめの声を発した。
菜「あ…あたしだって…好き……なんだから…」
かわいい。
めっちゃかわいい。
こんなかわいいリアクションをしてくれるとは。
神様、ありがとう。
菜「もおっ!なによそのニヤニヤ顔!」
理「…いやぁ…俺この世界に生きてて良かった…」