好きだった人

受験が終わり、あとは卒業。
だけど、ちょっと気になる事がある。
あいつと、あいつの関係。
あれからどうなったんだろう。
……聞くしかないか。
椅子から立ち上がり、菜奈に声をかける。
知「ねえ菜奈、昼御飯終わったら屋上に来てくれる?」
菜「えっ?いいけど」
菜奈と理央がくっついたのかどうかクラス全員が気になり、代表で選ばれた事があった。
だけど、今度はあたし自身が気になる。
どうしても、気になる。

早々に昼御飯を食べ終え、先に屋上に行き菜奈が来るのを待つ。
……あれから学校では2人はイチャイチャしてるようには見えない。
もしかすると、別れたのかもしれない。
……………嫌な女だ。
自分の都合のいいように考えてしまう。
足音が聞こえてくる。
菜「知美、お待たせ」
知「ごめんね、呼び出しちゃって」
菜「ところで、用は何?」
知「…ああ、うん………聞きたい事があってさ」
菜「聞きたい事?」
知「…………ハッキリ言うわ。理央と今どんな関係なの?」
菜「……えっ、えええっ!?」
…このリアクションでだいたい予想がついた。
そして次に発した言葉で確信に変わった。
菜「い、言えないよぉ!」
知「い、言えないような事までしちゃったの!?」
いつの間にそんな関係にまでなってたなんて…。
知「先を越されたっ…!」
これまでに彼氏は何度かできた。
でも、キスをしないまま終わった。
原因はあたしの大食漢なとこ。
菜「そ、そんなに騒がないで!」
知「あ、ああ…ごめん。つい取り乱しちゃった」
そっか……。
知「話はそれだけ聞きたかったの、ごめんね。クラスの連中には何も言わないから」
菜「ぜ、絶対だよ」
知「モチロンよ」
今回はあたし個人の問題だから。
知「じゃあ、あたし帰るね」
くるっと菜奈に背を向けて屋上を出ていく。
菜「……え…知美…?」
菜奈はあたしの挙動がおかしく見えたのかもしれない。
でもあたしは無視した。

トイレにこもってあたしは泣いていた。
知「ふぐっ…………ぐすっ……」
制服の袖で涙を何度も拭う。
泣くな、あたし。
そう言い聞かせても涙は止まらない。
菜奈のせいではない。
言えなかったあたし自身のせいだ。
だからこうなった。
自業自得だ。
やっと涙が止まった。
……もうちょっとだけここに籠ろう。
いつか理央よりいい男を捕まえてやる。
そんな風に考えられるまで。

後書き

今回の話は『誰かが結ばれる時は誰かが泣く』をテーマとしました。
TMRのPhantomPainという歌で『どうしたら誰も泣かずに君を奪い去れる』とあるように幸せと不幸は表裏一体なのだと思うのです。
ただ、この世は等価交換で一方的な得は存在しないのだと実感しています。
次の話は真逆でイチャイチャしとります。違う人が書いたみたいと思われそう(笑)。
それでは次回にて。