正月と猫

正月。
世間ではめでたい日だが受験生は最後の追い込みになる。
期末試験はヤマを張る事なく50位、菜奈も49位と順調に上がった。
目標の大学が見えてきたように感じた。
過去の問題集を解いていると、玄関のチャイムが鳴る。
親が出るだろう、と思ったが初詣に出かけているので誰もいないのを思い出した。
理「はーい」
椅子から立ち上がり、玄関へと向かった。

玄関の戸を開けると、そこには菜奈がいた。
菜「理央、あけましておめでとう」
理「おう、おめでとう。ところで勉強は?」
菜「さっきまでやってて、今は休憩」
理「そっか、じゃ俺も休憩するわ」
菜「ねえ、あがっていい?」
理「ああ、いいぞ。誰もいねえし」

居間に座ってもらおうと居間に向かう。
両親は居間でおせちを食べていたらしく、おせちやら飲み物が置いてある。
理「散らかってっけど居間でいいか?」
菜「うん、いいよ」
座椅子に座り、おせちをつまむ。
理「なあ、初詣どうすっか?」
菜「うーん、どうしよっか?」
菜奈は手元にあったコップの水を飲む。
理「合格祈願も兼ねて行くか?」
菜「………………」
菜奈からの返事が無い。
理「菜奈、どうした?」
菜奈は突然立ち上がり、こちらに歩み寄ってくる。
理「菜奈?」
菜「んふふふっ」
……何かおかしい。
何だ?何があった?
そう考えていると菜奈が飛び込んできた。
理「ぐおっ」
菜「んー♪」
菜奈はすりすりと頬を擦り合わせる。
一体何が起こっている?
…そういえばさっきコップに入った水を飲んでいた。
こちらにも同じコップがあった。
…………まさか。
コップを手にし、恐る恐る中の水を口に入れる。
違う、水じゃない。
酒だ。
ということは菜奈は間違って酒を飲んだのか。
つまり、菜奈は今酔っぱらっているということか。
菜奈の態度がおかしいのはそういうことか。
菜「んー♪」
……怒り上戸とか泣き上戸とかあるが、菜奈の場合は『猫上戸』か。
…………こういう甘えん坊な菜奈を見てると可愛く感じる。
頭を撫でようとすると、
バシッと手をはたかれた。
菜「ふーっ!」
さすが猫、やりたい事はするがやられるのは嫌か。
ふと、菜奈がじーっとこちらを見ている。
理「ん?」
何だろうと思った瞬間、
ぺろっ
理「うおっ!?」
頬を舐められた。
毛づくろいをしているのだろうか。
普段ならこんな事は絶対しない。
これが酒の力か。
菜「ん………ふー………くー……」
やりたい事をやってすっきりしたのか、ぽふっとこちらの胸元に顔を預け、寝てしまった。
……起こすと色々と面倒な気がする。
このまま寝かせよう。
………もう今日の勉強はいいや。
どうせやってもこんな気分じゃ頭に入らない。

一時間程経過すると菜奈が意識を取り戻した。
理「おっ、起きたか」
菜「…………理央………すごく頭が痛い…」
二日酔いならぬ一時間酔いか。
理「お前間違って酒飲んだだろ」
菜「ぇ…………覚えてないんだけど」
理「お前酒飲むのやめろ」
アレは人様に見せるものでは無い。絶対。

後書き

今回の話は自分が幼少時にあった出来事を参考にしました。
間違って飲んだ瞬間、異質な味がしたのですぐに戻したので酔う事は無かったんですけどね。
まあそういう事もあってか飲むのは1年に数える程度ですかね。
また飲む量も生中1杯で出来上がってしまうので下戸に近いかも。
一度飲み過ぎてヤバイ状態に陥った事もあるのでほどほどがいいですね。
それでは次回にて。