ベル

携帯が鳴る。
ひょい、と携帯を拾い、サブ画面を見る。
非通知になっている。
誰だろう。
『もしもし』
しかし、返事はなかった。
『もしもし、誰ですか?』
返事はない。
『…?』
プー、プー、プー…
通話中の音が鳴った。
向こうから切ったようだ。
『何だろう…』
非通知のため、こちらからかけ直すのは出来ない。
いたずらだろうか。

翌日。
シャワーを浴びて、ベッドに潜り込む際、携帯が鳴った。
『誰かな?』
携帯を拾い、サブ画面を見た。
非通知。
…昨日の人だろうか。
とりあえず、出るしかない。
『もしもし』
返事は無かった。
『もしもし、昨日の人ですか?』
プッ、プー、プー、プー…
またしても切られた。
『もう、何なのよ…』
気味が悪い。
電源を落として、かかってこないようにした。

翌朝。
『んーっ…』
ぐっ、と背伸びをして、ベッドから出る。
『学校へ行く準備、しなくちゃね』
そういえば、携帯の電源を落としたままだった。
電源を入れ、起動の音楽が鳴る。
が、その直後、携帯が鳴る。
非通知。
そのあまりにも不気味なタイミングだ。
出るのをためらった。
けど、出ないわけにもいかない。
『…もしもし』
返事は無い。
『もしもし?何の冗談なの?』
プッ、プー、プー、プー…
また切れた。
…気持ち悪い。
嫌悪感を感じた。

翌日。
また携帯が鳴る。
やはり非通知。
…とるのはやめよう。
すぐに諦めるだろう。

だが、10分経ったが、一度も鳴り止まない。
確か鳴りっぱなしは出来ない仕組みのはずなのに…。
壊れたのだろうか。
…今度新しい携帯に買いなおそう。
ついでに新しい番号に変更すればこんな気味の悪い着信ともおさらばだ。

学校から帰ってすぐ、携帯ショップに行って買い換えた。
これであの気味の悪い電話もなくなる。

そう、思っていた。
その日の深夜まで。

携帯が鳴る。
リリリリリリリリリリ…
聞き覚えのない着信音だ。
そういえば買い換えたため、いつもの音はなかった。
『んー…何よ…』
時計を見た。
午前2時。
こんな時間にまで…。
サブ画面を見た。
非通知。
…おかしい。
番号を変えたはずなのに。
その時、携帯の音が止まった。
…気味が悪いから電源を落とそう。
電源のボタンを押した瞬間、
ぶるっ
携帯が震えた。
『ひっ』
その異常な動きに思わず手を離す。
携帯は床に落ち、そのままだった。
…買ったばかりだから変なボタンを押したんだ。きっと。
携帯を拾う。
電源は落ちている。
…とりあえずこれで鳴る事はない。
もう寝よう。
ベッドに潜り込んだ時、

ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

鳴っている。
携帯の電源は落ちているはず。
耳元で、鳴っている。

ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

耳鳴りなだけだ。
すぐに止む。

ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
時計を見た。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
午前3時。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

耳鳴りは止まない。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
止まれ!
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
止まれったら!
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
そうだ、睡眠薬。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
これで、眠れる。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
…だめだ。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
もっと、薬を飲まないと。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
…もっと、もっと。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
…あ…れ……
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる
RURURURURURURURURURURURURURURURURURURU
RuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRuRu
rUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrUrU
rururururururururururururururururururu
もっ…と…聞こ…え…る……。

気がつくと、病院のベッドにいた。
睡眠薬の過剰な摂取。
それが原因でここにいる。
でも、原因はそんなんじゃない。
電話が鳴ってるから。
ル…
あ、ほら…。
ルルル…
また…
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
…うるさいなあ…。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
どうやって止めよう。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
あ、お見舞いの果物のところに…
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
果物ナイフ
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
そっか、これで耳を切っちゃえばいいんだ。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
痛いけど、聞こえなくなるからいいよネ。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
…おかしいなあ。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
両方とも切ったのに。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
あ、そっか。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ちゃんと耳の奥までちゃんと刺さないと。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
…まだ聞こえる。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
うーん…じゃあ、しょうがない。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル死んじゃおルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

…あれ…止まった。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
あ。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
また鳴ってる。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
しょうがないなあ。
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

後書き

この作品が猟奇か、オカルトか、ホラーか、電波かは読んでくださった皆さんに考えてもらいましょう。
それでは次回にて。