五木

すぐそばの扉が開いているのに気付いた。
中が見えた。
誰かが、吊られている。
顔を見なくても、服装で判断できた。
二史納だ。
『くそっ!』
五木と六車のいる外まで走った。
死んだ。
2人とも。
こんな時は、涙が出るものと思っていた。
しかし、まったく出ない。
出てくるのは殺人鬼に対する怒りだけだった。

飛び出すように外へ出た。
外はまだ吹雪だった。
すぐそこに五木と六車がいた。
『五木!六車!二史納と三浦がやられた!』
その言葉を聞いて2人の表情が青ざめる。
『ほ、本当か!?』
『ああ、確認した』
『二史納はともかく、三浦とは一緒だったろ!?何でだ!』
『すまん、一部屋ずつ調べてたらいつの間にかいなくなってた』
『……あとは、俺達だけか』
『…殺人鬼は、建物の中か?』
『いや、殺人鬼は見ていないからわからん』
『…となると……俺達を探してるかもしれないな』
五木が物騒な事を言い出す。
『何でだ?』
『六車、もし殺人鬼がお前で、俺達が生き残っていたら、どうなると思う?』
『…そりゃあ、すぐに警察を呼ばれ…あ』
『ああ、警察に通報されたくないから俺達を殺すんだ』
『……じゃあ、何で最初に壱原を殺したんだ?殺される理由なんかどっこもねえだろ』
『そこまではわからん。あの殺人鬼は元から殺人鬼であって、人里離れたこんなところに隠れてるというならわか』
ドンッという爆発音がした。
それもすぐそば。
壁が崩れ落ちる。
壁が爆発したとは思えない。
辺りを見回す。
人がいた。
何かを持っている。
猟銃だ。
撃ってきた。
『逃げるぞ!』
『どこへ!?』
『この中しかねえだろ!』
全員が建物の中へと入ろうとした。
が、
発砲音がした。
『があっ!』
声がした。
五木の声。
五木が、撃たれた。
『五木っ!』
後ろにいた五木の方を振り向く。
五木は立っておらず、倒れていた。
『五木!手ぇ出せ!』
あと2メートル程で建物の中に入れる。
『…悪い、ド…ア…閉めろ』
『馬鹿言え!見捨てられるか!ほら!』
六車が手を出すが、五木は手を出そうとしない。
『はら……撃たれちまっ…ぐうっ…もう…だめだ……』
五木が力を振り絞って立ち上がる。
『…五木?』
『生きろ』
六車と自分を突き飛ばした。
そして、ドアを閉めた。

『五木!五木っ!』
ドアの向こう側から声がする。
意識が朦朧としてきた。
実際の声なのか幻聴かわからなくなってきた。
暗闇の中から誰かが来る。
…死神という名の殺人鬼、か。
『…ここは意地でも通さねえぞ』
殺人鬼が銃の弾をこめる。
『殺せるもんなら殺してみろっ!』

はるか後ろで発砲音が聞こえる。
何発撃ったのかわからないほど。
適当な部屋に入る。
……あと、2人。
………………。
『………なあ、六車』
『な、なんだ?』
『…………あいつを……殺そう』