あんなに一緒だったのに

学校の屋上に出た。
空は闇になっていた。
夜だ。
チュイン
足元から音がした。
銃弾による音。
前方には誰もいない。
後方は壁。
上、用水タンクの上を見た。
いた。
風が吹いた。
長めのショートヘアが風によって乱れる。
潤子だった。
潤子「みつけたわよ。芹禾」
芹禾はナイフを構えた。
潤子も銃を構えた。
潤子「あなたが死んだら抱きしめてあげる。もし私が死んだら…私を抱きしめて」
芹「…俺でよければ」
パンッ
開戦
芹禾はすばやく近くにあった資材の入った木箱の後ろに回りこむ。
潤子「それで避けたつもり!?」
潤子は芹禾のいる方向とは違う、あさっての方向へ撃った。
放たれた弾丸の先には柱があった。
柱に当たった。
その弾丸の軌道は芹禾の方向へ修正された。
スキッピングショット。
俗に言う跳弾だ。
弾丸は芹禾のいる所から30センチ程ずれた所を飛んでいった。
ここにいると当たる。
ズボンのポケットから小型ナイフを3本取り出す。
木箱の裏から飛び出ると同時に、ナイフを投げる。
だがナイフは潤子には当たらない。
芹「くっ!」
潤子「避けきってみなさいよ!!」
潤子が銃撃を数発。
それも跳弾。
そのうちの一発が芹禾の足をかすめた。
芹「うっ」
芹禾の足が止まる。
潤子「終わりよ!」
潤子がトドメの銃撃を放とうと、トリガーをひこうとした。

その刹那だった。
潤子の左眼が爆発した。
その爆発により、潤子の左眼は飛び出し、地面に落ちる。
そして潤子と、その身体の一部だった肉片も。
それっきり、潤子は動かなかった。
潤子より後ろで、何かが動いた。
『一発で殺せたか。無駄玉を使わずに済んだな』
芹「…涼」
涼「どうやら、残ったのは俺とあなただけか」
芹禾は残りのナイフを確認した。
残り3本。
涼「葵のやつ、無駄玉使わせやがって……これが最後のリロードか」
涼もまた玉数は少なかった。
残り5発。
涼「盛大に死んでくれよ」
芹「俺は死なない」
涼「あっ……そ!!」
銃撃
避ける
芹「くっ!」
ナイフを投げた。
涼「おっと」
素早く木箱の後ろに隠れた。
涼「うろちょろすんなって!」
銃撃
バンッという音と共に木箱の一部が吹き飛ぶ。
44マグナム。
スコーピオン等の連射タイプとは違うが、間違いなく単発では最高の破壊力だ。
潤子の左眼が爆発したように見えたのもこのマグナムによるものだった。
残りのナイフは2本。
残りの弾丸は3発。
芹「このっ!!」
木箱を蹴り飛ばした。
涼「うぜえっ!!」
木箱を撃った。
木箱は粉砕した。
足元を見た。
光る何かがこちらへ来る。
ナイフ。
木箱は罠。
涼「させるか!!」
ナイフを撃った。
ナイフは弾丸の衝撃で涼の足元で止まった。
先程の木箱がなくなり、障害物はなくなった。
芹禾との距離は5メートル。
ナイフの届く距離ではない。
涼「終わりっ!!」
涼は銃を構える。
芹禾もナイフを構えた。
だが、何かが違う。
ナイフによる近接戦闘の構えではない。
刃を突き出している。
まるでそこから何かを…
出た

涼「スペツナズナイフかっ!!」
発砲した。
弾丸と刃
交わる事はなかった。
刃は涼の胸
弾丸は芹禾の腹部
2人は倒れた。

よろよろと芹禾が起き上がり、涼の元に歩み寄る。
芹「涼……」
涼「……なんで…こうなったんだろう」
芹「…」
涼「葵に眞一郎、そして潤子さんも殺した。この手で」
芹「…」
涼「なぜ……殺してしまったんだろう」
芹「…」
涼「あんなに一緒だったのに」
芹「…」
涼「芹禾さん……俺は一体…」
芹「…」
涼「芹禾さん?」
芹「」
芹禾はすでに息を引き取っていた。
涙が溢れ出てくる。
一体どうして。
なぜ、なぜこうなってしまったのか。
わからない。
どうして、こんなになってしまったのか。
空を見た。
夜の空。
闇のようだった。
自分の意識がなくなりつつある。
終わりが近づいてくる。
死が近づいてくる。
闇が世界を包んだ。
そして意識も闇へ。