チャイルドパニック9

涼「…ん……」
目が覚める。
ゆっくりと目を開けると、朝日が目に入る。
もうすっかり朝だ。
むくりと起きて、ぐっと伸びをする。
涼「んー…朝か」
隣で寝ていると思われる綾の方を見た。
いない。
その代わりにいたのが子猫だった。
涼「…あぁ?」
白の子猫。
…どういうことだろう。
一晩で人は子猫に変身できるような魔法は取得していないはず。
ふと、枕元を見た。
指輪。
あの幼くなる指輪だ。
…まだ確かめていない、『親指』だ。
なるほど…子は子でも子猫か。
最後の謎が解けてスッキリしたが、直後に悩みが出来た。
…猫の飼い方だ。
いかんせん人ではないのでいつもの元に戻す方法が出来ない。
うーん……。
……まあいいや、戻り方はわかってるんだ。
のんびり待つ事にしよう。

で、朝食。
綾が子猫になったわけで準備は俺がする事に。
……はっ。
綾の朝食、どうすればいい!?
…いかん!猫缶食わせるわけにはいかん!
どうすればいい!?俺!??
………あ、子猫だから牛乳とかでいいのか。
…綾が子猫になった影響で俺までパニクり気味。
えーと、人肌ぐらいに暖めて、と…。
浅めのボウル皿に入れて、とんと綾の前に置く。
涼「はい」
……。
しかし、綾は牛乳を飲もうとしない。
涼「あれ、食べないのか?」
正確には飲むの方が正しいが。
んー……………んっ?
皿に注がれた牛乳を手ですくい、その手を綾の口元に近づける。
すると、綾は喜んでそれをぺろぺろと舐める。
てっ…てのひらじゃないとダメってか…っっっ!!
だらだらと流れる鼻血を手で抑えつつ、皿ならぬ手皿で綾の食事を促した。
…あーもう、食べちゃいたいよコンニャロウ。
いやすでに食べちゃったのだが。

食事が終わり、居間にて座ってテレビを見ている。
すると、ちょこちょこと綾が近づいてくる。
あぐらをかいていたその中心に入り、その場で丸くなる。
…おかしいな、本当に綾か?
ここまで積極的なのも珍しい。
……あ、本能か。
基本的に動物は本能で生きているから、人間と違って理性がないので欲望に忠実な動きをするわけか。
それなら先程のてのひらぺろぺろも納得がいく…!

テレビを見終え、ふと綾の方を見る。
…運動もさせないとなあ。
喰っちゃ寝は健康的ではない。
とりあえず猫じゃらしのような物を作るか。
割り箸に紐をつけて、さらにその紐の先端にピラピラとした紙を束ねたものをつける。
これで簡易猫じゃらしの完成。
綾の前にそれを取り出し、ひらひらと動かす。
ピラピラ部分を触ろうとする。
が、素早く回避。
再びピラピラを追う綾。
さらに回避。
追う。
回避。

ぼーん…。
時計から音色が鳴った。
時計の方を向くと、時計の針は長針と短針が重なって真上に向いていた。
げっ、もう昼!?
夢中になりすぎるのも考えモノだな…。

鼻血を抑えつつ、綾の食事(朝食と同じ牛乳)を済ませ、午後。
…とりあえず運動もしたし、あとは夕食か。
それまで何をするかな…。
綾の方を向く。
寝ていた。
猫は寝子。
一日の半分は寝ているらしい。
綾が寝ているのを見て、それにつられて欠伸をした。
…俺も昼寝するかな。

………ん。
あー…夕焼けが綺麗だな…。
…ん、夕焼け?
がばっと起き上がる。
うわ、寝すぎたな。
…俺の方も喰っちゃ寝だな。

三度目の鼻血をこらえつつ、綾の夕食を済ます。
さて、やる事もないし、とっとと寝ようかな。
…さっきまで昼寝をしていた人のセリフではないと思うが。

ベッドに潜り込む。
そして、綾もベッドの上に飛び乗り、枕の上で丸くなる。
そのまま目をつぶった。
多分枕の上がベストポジションなんだろう。
…さて、俺も寝るとしますか。

涼「んー…」
朝か。
目を開けると、そこには綾が寝ていた。
ちゃんと人の姿で。
……ああ、戻ったか。
念のため自分の頬をつねる。
…うん、痛い。
夢ではない。
さて、綾も無事に戻ったし、めでたしめでたしと。
綾「ん…」
綾も目が覚めたようだ。
涼「おはよう、綾」
綾「ん…おはようございますにゃ」
涼「……あぁ?」
…にゃ?
綾「…どうかしましたにゃ?」
…副作用。

親指の効果:子猫になる。ただし戻った時に副作用として語尾に『にゃ』がつく。

涼「げふっ!」
吐血。
綾「りょっ、涼さん!?大丈夫ですにゃ!?」
お、親指は…強烈だ…。

後書き

ろりじゃねえじゃんかよというツッコミがあると思いますね(笑)。
どうも今の所ろり好きの部分が沈静化しているため、最近はまったくですね。
逆に猫好きの部分が活性化しています(笑)。
猫は癒しの象徴です(断言)。
ここ最近猫カフェに行ってきたせいかもしれませんが、猫がたまらなくかわいく見えます。
ウチではちょっと飼えない方にオススメしたいスポットです。
さて、これで100作目となりました。
…まあ、実際には緊急座談会とかで数を稼いだりしてるので実のところは100ではなかったり(笑)。
これからも書き続けていきますのでよろしくお願いします。
それでは次回にて。