ヒートアイランド3

涼「暑い…」
ぱたぱたと団扇を扇ぐが、熱風のように感じる。
エアコンだと身体にあまりよくない。
本日の晩御飯は終了し、あとは寝るだけ。
すでにパジャマに着替えており、綾もパジャマ。
が、汗によってパジャマは全身が湿っていた。
綾「エアコン、つけましょうか?」
涼「いや、つけたら負けのような気がするんだよ…」
誰に負けなのかはわからないが、なんだか負けのような気がする。
…………………もういいや。
涼「綾、寝よう」
綾「そうですね。そうしましょうか」
涼「裸で」

綾「ええっ!?」
暑さで綾の思考回路も鈍くなっているようだ。
綾「はっ、はっ、はっ、はだかですか!?」
久々に動揺しているな。
涼「うん」
綾「はっ、恥ずかしいですよ!」
涼「…何で?」
何を今更と言いたくなる。
こっちは綾の隅から隅まで見たと言っても過言ではないぐらい見ている。
綾「だっ、だって恥ずかしいものは恥ずかしいですよ」
涼「…仮に着てたとしても脱がします」
我が家のベッドは1つしかないので逃げ場無し。
綾「うう……」

せめてもの抵抗か、『先にベッドに入ってますからね!』とキレ気味に言って寝室に向かっていった。
でもなんだかんだでちゃんと脱いでくれる所が可愛い。

涼「綾?」
寝室に入り、声をかける。
綾「は、はい」
ベッドからぴょこっと顔を出す。
かなり恥ずかしいようだ。
脱がされるのはもはや数える必要がないほどだが、自ら脱ぐのは数える程しかないのだろう。
自分も脱いで、ベッドの中に入る。
…さて、綾はちゃんと脱いでいるだろうか。
上半身を確認するため、肩の辺りを撫でる。
綾「っ……」
布の質感はないし、ブラ特有の細い布のようなものも指に伝わってこない。
ちゃんと来ていない。
次は下か。
ダイレクトに触ると絶対に怒るので腰の辺りを撫でる。
綾「んっ…」
よし、なし。
綾を優しく抱き締める。
涼「わざわざ俺のおねだりをちゃんと叶えてくれるのが綾の優しいところだよな」
綾「それは…その………私も涼さんが喜んでくれるなら…」
言いたい事だけをいってぽふっと顔をこちらの胸にうずめる。
おそらく顔は真っ赤なのだろう。
後はもう知りません。
なんとなくそう言っているように感じた。
…………予想はしていたが、やっぱり暑い。
裸なら少しは涼しくなるだろうと思った。
しかし、よく考えてみれば抱き合って寝てしまうと余計に暑くなる。
それを実証しているかのようにすでに綾と密着している部分が汗ばんでいる。
涼「……やっぱり暑いな」
負けた。
何に負けたのかわからないけど負けだ。
綾「エアコンつけますか?」
涼「ん、そうする」
そばにあったエアコンのリモコンを手にし、スイッチを入れる。
すぐにエアコンが動き出し、気持ちのいい風がやってくる。
涼「…でもさ、寝るのはこのままでいい?」
よく考えると裸で抱き合うのはあまり無い。
裸同士だと肌の密着感がすごい。
涼「たまに裸で寝る時があるけど、裸で寝るのって気持ちがいいんだよなあ…」
綾「何も着ていないからストレスがどこにもかからないんでしょうね」
下着姿でも胴体を締め付けるのだからやはり着ていない方がよりいいのだろう。
ひんやりとした空気が気持ちいい。
それと同時に綾の温もりが心地良く感じる。
ゆっくりと睡魔がやってくる。
涼「綾、寝れる?」
綾「……はい、涼さんも……私と同じ気分ですか?」
綾の気分はわからない。
でも、なんとなくわかる。
きっと自分と同じ気分なんだろう。
………というか裸同士で寝る事が気持ちいいって言いたくないのだろう。
涼「…うん……今日は気持ちよく…寝れそう」
綾「私も…です」
お互い言葉がたどたどしい。
この流れを断ち切る必要は無い。
ゆっくりと目を閉じ、心の中で綾に呼びかける。
おやすみ、

後書き

これを書いてるのは8月27日と夏真っ盛りの時期です。
が、この2、3日間であっという間に涼しくなりました。
1週間前は地獄のような暑さだったんですけどねえ。
で、これが掲載される頃には真冬。
…まあ、いつもの事なんですけどね(笑)。
今度の夏はどんな夏になるのでしょうか。
程良い夏になる事を期待しましょう。
それでは次回にて。