彼女がおねだりをする場合

ざばーん…。
涼「ふー…」
湯に浸かって一息。
涼「………」
コンコン。
ぼーっと浸かっていると、ノックが。
綾「お湯加減はどうですか?」
涼「うん、ちょうどいいよ」
綾「……背中、流しましょうか?」
涼「え?」
この展開は珍しい。
一緒に入る場合は背中を流してくれるが、個々の場合はあまり無かったりする。
まあ断る理由はないし、やってもらうとするか。
涼「じゃあ、お願いするよ」
綾「わかりました」
ぱさっ
すると、布がふわっと落ちる音が。
涼「…ん?」
……なんだろこの音。
………もしかして……綾が脱いでるのか?
…何故?
動揺はしないが疑問が出てくる。
しばらく悩んでいると、綾が入ってくる。
バスタオル一枚。
…まあ脱いでたんだから当然ではあるが。
綾「それでは流しますね」
涼「うん」
ごしごしと背中を洗ってくれる。
うーん……。
何か変だ。
というより明らかに変。
逆に裏を感じる。
………ん、裏?
………………………あっ。
少し前にテレビでやってたな。
何か買いたいものがある娘が、父親が風呂に入っている時に背中を流そうとしておねだりをするやつだ。
……なるほど。
…………となると、だ。
綾のおねだりは一体何なのか?
……まあこればっかりは聞いてみないとわからないな。
涼「ねえ、綾」
綾「はい」
涼「何か買って欲しいものでもあるの?」
綾「えっ!?」
予想通りのリアクション。
俺の考えは的中。
涼「いや、こういう風にしてくれるパターンは今までないからさ、ひょっとしたらおねだりの為にこういう事をするのかなと思ってさ」
綾「あ……えっ…と…」
しどろもどろの返答。
……買いたいものはそんなに高いシロモノなのだろうか。
綾「あの……だめ……ですか?」
後ろにいるから見えないが、なんとなく表情がわかる。
しょぼんとしつつも、ちょっと期待している感じ。
まあ、ちょっと高い買い物だけど、喜ぶんならいいかな。
涼「いいよ、奮発して買ってあげるよ」
綾「本当ですか!」
うわー、わかりやすいリアクション。
思いっきり喜んでる。
まあとりあえず何を買いたいのか聞いてみよう。
まあ出せても4、5万かな。
涼「で、買いたいモノって何?」
綾「中華鍋です」
涼「………………中華鍋?」
だいたい3000円程。
まあウチには中華鍋は無いけど。
涼「……どうして、また?」
綾「中華鍋ではないとちょっと作りづらい料理が多いんです。うまく作れれば涼さんが喜んでくれると思って…」
……俺の……ため?
ぷちっ
ぐるっと振り向いて抱擁。
涼「買う!買っちゃうよ俺!3000円とは言わず2、3万のやつ買っちゃう!!」
綾「えっ、あのっ、そんなにたかくてもっ…」
もはや綾の声は聞こえなかった。
涼「あーもうこの娘さんかわいすぎっ!」

後書き

10万もする中華鍋があるようです。
いっぺんどんなもんか見てみたいものですね。
ちなみに自分の家にも中華鍋はあります。
某中華料理漫画のように生米を黒くするまであおりの練習をしていたものです(笑)。
今ではひょいひょいと簡単にできます。
これ書いてるのは2009年の年末ですが、果たしてこの作品はいつ掲載されるのでしょう?
書き溜めとして書いてるので当分はなさそうです。
多分、2011年以降だと思いますが…。
それでは次回にて。