KISS -11th-

とんとん、と首に軽い衝撃が来た。
あの合図なのだが、綾からというのは珍しかった。
涼「…わかった」
顔を見て言うと綾が真っ赤になりそうだったのでやめた。
綾「……あの…」
涼「え?」
ぽそっ、と耳打ちをしてきた。
綾「忘れていた…事があったんです…………今日、それを………」
そう言って、この場から離れた。
……忘れていた事………?

そして夜。
ベッドの横で待機していると、綾が部屋に入ってきた。
……忘れていた事とは、なんだろう。
綾「……」
涼「ところで、忘れていた事っていうのは?」
綾「…………このパジャマ、わかります?」
涼「ああ、綾のお気に入りのだったな」
綾「そして、私が気に入っているシャンプーで洗った髪の毛、私が一番好きな下着、私が一番好きなヘアースタイル」
そう、綾の代名詞とも言えるロングの漆黒の髪。
いつにも増してしっとり感、髪の毛一本一本までさらりと分かれそうなサラサラ感が出ている。
ぞくりと来るような美しさがあった。
綾「これが、私です」
涼「………」
綾「今まで、本当の私を抱いてもらった事、なかったんです」
涼「綾…」
ぽふ、と胸に顔をうずめた。
言ってて恥ずかしくなったのだろう。
立派な告白だ。
綾「今まで、愛してくれていたのに、私だけ愛してないのは不公平ですよね」
涼「……そう…かな。形から入るのも必要だけどさ、一番大切なのはさ、気持ちじゃないかな?」
綾「………」
涼「今まで、ずっと…ずーっと俺を愛してくれたじゃないか。それだけでも俺は嬉しいよ。君が俺を愛してくれているということを」
綾「………はい」
涼「……じゃあ……改めてだけど、本当の君を抱きます。いいですか?」
綾「は、はい………よろしくお願いします…」
どことなく不自然な返事だが、それが綾らしいといえば綾らしいのだが。
うずめていて見えない綾の顔を見えるように動かす。
綾「あっ……」
真っ赤になっている綾がいる。
さら、と綾の髪を優しく撫でる。
気持ちのいい感触だ。
わざわざ俺の為にセットしてくれた。
たまらなく嬉しかった。
涼「愛してる。今までよりも。そしてこれからも」
そっと唇にキスをした。

後書き

今回のネタはYayaの所持してる同人誌から。
試しに読んだところかなりツボにきたので『よし、書く!』とリクエストに近い形になりました。
こういう初々しいのは大好きな部類に入ります。
なんでもっと早く気付かなかったんだろう(笑)。
ただ、俺はその本を持っておらず、その場で暗記したため、実際に異なる場合がありますがなんとかYayaに気に入ってもらえればいいのですが。
それでは次回にて。