KISS -2nd-

涼「やな季節ですね」
信「?どういう事じゃ」
涼「台風ですよ」
信「おお、そういえば今日の夜にこちらに来るの」
涼「やなタイミングで来ましたよ」
信「……?」
涼「綾は、夜の台風が怖いんですよ」
信「ああ、そういえば……」
涼「最近、夜に来るパターンがないから忘れてたんですけど、怖くて泣き出すんですよ」
信「それでやな季節と…」
涼「そういう事ですよ」
信「それで、今回もか?」
涼「いえいえ、よっ…と」
俺は立ち上がり、
涼「妻を守るのが夫ですよ」

夜の時間帯だ。
部屋の中にいても風の音が凄い。
暴風域に入った。
さて、そろそろかな。

綾の部屋の前に着く。
トントンとノックする。
涼「綾、俺だけど」
綾「涼さん……」
泣きそうな声だ。
涼「入るよ?」
綾「あっ…はい、どうぞ」
安心したような声色だった。
戸を開けて、綾の様子を見る。
怯えている。
やはり台風が怖いのだろう。
涼「……怖い?」
綾「……っ………い…いえ…」
ぴくっと反応があった。
無理をしている。
やせ我慢か。
くすっと笑い、綾の横に座る。
涼「綾、お願いがある」
綾「え?」
綾の髪をそっと撫でる。
涼「俺だけに、素直になってほしい」
綾「…………」
涼「以前、今日と似たような日に、君は泣いていた。俺は………」
守れなかった。
涼「……君のそばに俺がいる」
だから、素直になって。
綾「涼さん………はい」
涼「……………一緒に、寝ようか」
綾「……はい」

普段なら恥ずかしがっているのだが、今回は違う。
妻が夫を支える時もあれば夫が妻を支える。
それが夫婦というものだろう。
そして後者が今だ。

ガタンと戸が音を立てた。
びくっと綾が震える。
ベッドの中で綾を優しく抱いた。
涼「…………大丈夫、俺がいるよ」
綾「涼さん………」
涼「怖くなくなるおまじない、してあげようか」
綾「おまじない?」
涼「目…閉じて」
綾は目を閉じた。
俺はそっと綾の額にキスをした。

しばらくキスを続けていると、もう震えは止まっていた。
寝息が聞こえる。
どうやら安心して眠りについたようだ。
かわいらしい寝顔を見て、くすっと笑った。
涼「おやすみ、綾」

涼「と、まあこんな感じで対処しましたけどね」
信「ふむ、さすがわしが認めた男じゃ」
涼「それほどでも…」
信「…しかし、なぜ綾は夜の台風が怖いのじゃろうか…………」
涼「……………………………………」
俺は何も言わなかった。
それはあなたが綾が幼少の時にお仕置きの時に押入に閉じ込めた日が台風だったから夜の台風が嫌いになったんだから原因はあなたですよ、と。

後書き

このKISSシリーズは根本的には甘々なものです。
まあ具体的にはらぶらぶ+キス=KISSシリーズと考えていただいて結構です。
ちなみに5年後シリーズではありませんのでご注意を。
せめて5thぐらいまでやりたいものですが…。
蛇足な追加ですが、KISSの読み方はキスとキッスがありますが、キスの方です。
それでは次回にて。