KISS -5th-

トントン、と綾の首をつつく。
これが今夜の情事の合図である。
涼「今夜………いい?」
しかし、続けて口で言ってしまう。
合図の意味がまったくない。
綾「……う…うん」
ちなみに綾も情事の合図の返事がどうしても『うん』になってしまう。
はたから見ると奇妙な夫婦である。
が、俺達にとってはこれが当たり前であると同時にこれがいいのである。

で、夜。
始めるよ、という意味のキスをする。
綾「ん……ふっ………」
そのままパジャマ越しに胸を揉む。
綾「んっ………あ……」
胸を揉みつつ、パジャマのボタンに手をかける。
胸元辺りまでボタンを外した時、胸元に黒い何かが見えた。
黒?
胸元に黒?
涼「……………………………」
綾「…あの……涼さん?」
涼「…………………………………………って事は」
残りのボタンを外し、上着を脱がせた。

涼「黒の………ブラ?」
固まった。
予想だにしなかった事のため、ぴしーんと固まった。
涼「ちょ、ちょっと待て、綾」
綾「………似合いませんか?」
涼「とりあえず、似合う事に関しては置いといて、何で…………このブラを?」
綾「…………涼さんのため、なんです」
涼「…俺の……ため?」
綾「……私、涼さんのためになれる事、何もしていないじゃないですか…」
涼「………くす」
そっと綾の頭を撫でた。
涼「してるさ。十分」
綾「え?」
涼「だってさ、俺が首をつついた時は全部、断っていないじゃないか」
綾「…………」
涼「したくない日だってあるのに、それでも『うん』って言ってくれる」
綾「……」
涼「………まあ、挙式の日にだって…………まあその……ね」
十分です。ええ、もう。
涼「………どう、これでもまだ、綾が俺のためにしてくれてないって言うの?」
綾「………で、でも………」
涼「綾がそう思わないなら、今回で今までの貸しは無しさ」
綾「え?」
涼「だってさ…………その…………色っぽすぎるよ。黒のブラは」
綾「そ、そうなんですか?」
涼「………綾のイメージって俺にとって白だからさ。高校の時、綾が風邪を引いて、俺がお見舞いに行ったの、覚えてる?」
綾「はい」
涼「その時の綾のパジャマが今着ている藍色でさ。それ見た時すごいドキッとした」
綾「そんなに……色っぽかったんですか?」
俺は何も言わずにうなづいた。
涼「というわけでさ、綾が気付かないところですでに俺にしてくれてるんだ」
綾「はい…」
涼「ま………というわけで逆に借りができたわけだから」
綾「え??」
黒のブラは一発逆転。
涼「今度は俺がサービスする番だ」
綾「えっ?…あ、きゃ…あ…………」

後書き

なんでしょうか、これは(笑)。
作者の中で、唐突にできたのはかなりいいのができる、というセオリーがあるのですが、今回…………めっちゃ例外っす(爆)。
まあどんなセオリーにも例外があるという事で。
さて、KISSシリーズはとりあえず5thまでいきました。
次はどうしよっかな〜と考えています。
またちょくちょく書いてみたいと思います。
…………これを書いた後、風邪をひきました。
……………………………呪いですね、これはもう。
まあ今回は短かったので(それに最初の辺りしか書いていませんし)寝こむほどではありませんでした。
それでは次回にて。