KISS -6th-

綾「涼さ〜ん」
呼んでも返事がない。
綾「……?……涼さ〜ん」

ととと、と廊下を歩く。
綾「涼さ〜……あっ」
いた。
綾の部屋にいた。
なぜかはわからないが。
そして涼はソファで寝ている。
涼「くー……くー……」
綾「…………」
相変わらず素敵な寝顔である。
どうも寝顔を見ているとクラクラする。
ここ最近寝顔を見るのが趣味になりつつある。
かわいい、とでも言うのだろうか。
綺麗、とでも言うのだろうか。
なんとも言いようがない。
……………無性にキスしたくなった。
そういうのが無性にしたくなる寝顔なのだ。
…………魔性の顔、とでも言うのだろうか。
きょろきょろと辺りを見回す。
誰もいない。
すばやくやればよく邪魔しに来る母もこないだろう。
………………今がチャンス。
すすすっと、目の前に唇があるまで近付く。
……涼さん、ごめんなさい。
普通はお互い起きた状態で、お互いがしようという意識を持ってからするものだと思う。
……この行為は反則。
綾「………涼さんが悪いんですよ…………そんな顔をするから…………」
『どういう顔かしら?』
綾「それは、涼さんの寝顔………………えっ!?」
バッと声のした方に振り向く。
綾「お……お母さん………」
ごおっ、と顔が熱くなる。
綾の母「あらあら、お取り込み中悪いわね」
綾「お、おかあさ………えとっ……そのっ……」
頭の中が真っ白で何を言ってるのか自分でもわからなかった。
綾の母「……………まあ、若いってのはいいですけども、あまり世間様に顔向けできないような事はしてはだめよ」
嫁と姑のような状態だ。
実際は違うのだが。
綾「べ、別にいいじゃないですか。涼さんは私の夫なんですし」
毎回毎回言われっぱなしではない。
たまには綾だって反撃する。
が、そこは年期の差、綾の母の反撃のターン。
綾の母「あら、私にとって涼君は息子みたいなものよ。だから私にだってそれなりの権利はあるわよ」

綾「え――――――っ!!」
綾の母「あらあら、すっとんきょうな声を出して。涼君が起きちゃうわよ」
涼「んっ………誰の声だ………?」
本当に起きた。
綾「あ…ああ………あ……涼さん………」
目をごしごしさせながら、回りを見た。
涼「……………」
寝ぼけているのだろうか。
綾「あの……涼さん?」
涼「………ああ、はいはい」
すっ、と綾に近付く。
そしてキス。
綾の母「………っっっ!!」
綾の母は非常に驚いた。
だが、当の本人はさらに驚いていた。
綾「りょ、りょっ、りょっ、涼さんっ、な…な…何をするんですかっっっ!!??」
涼「……………………」
そのままぽてっ、と綾の肩にもたれる。
涼「……………くー…………くー……………」
再び寝てしまった。
完全に寝ぼけてのキス。
綾「…………もう……」
…でも、こういうところも涼さんらしいと言えばらしいのだが。
綾「……涼さんらしいな……………」
きゅっと涼の胴を抱いた。
一方、夫婦のやりとりを見ていた人は、
綾の母「………しょうがないわね、このバカップルは…………」

後書き

……なんか妙なモノに(苦笑)。
まあ、こんなKISSもありってことで。
さて、人気音ゲーのシリーズぐらいまで続きましたが、まだネタがありますので7thはやると思います。
それでは次回にて。