KISS -8th-

夜中にふと、目が覚める。
それがなんだか怖い。
具体的に説明しようのない、得体の知れない何かによって。
その恐怖が、眠りを妨げる。

駄目だ。
どうしても眠れない。
目をつぶっていてもまったく眠気が来ない。
起きてからどのくらい時間が経ったのだろう。
このまま起きていたら、どうなるのだろうか。
何かに怯えたまま朝を迎えてしまう。
涼「ん………うう……ん」
どうやら涼も起きたようだ。
もしかすると起こしてしまったのかもしれない。
涼「眠れ……ないのか?………何時?」
綾「あ……ごめんなさい。起こしました?」
涼「ん……いや、なんとなく目が覚めて…」
そう言って、私の右手をきゅっと握る。
綾「え……」
そして、涼の余った右手は私の顔のすぐ左隣。
2人の体制は今は寝ているが、それを縦にすると壁を背にして抱いているような形になった。
綾「涼…さん……?」
涼「………夜中にさ…目を覚ますと、何故かはわからないけど、すごく寂しくなるんだ……それは俺だけかもしれないけどさ……」
そんなことはない。
現にそうなっている自分がいる。
首を振った。
涼「…………そっか……でも……俺がここにいるからさ、安心していいよ………ね」
綾「ありがとう、涼さん…」
私の上に置かれている涼の右腕を残った腕で優しく抱く。
心地よい暖かさだ。
綾「人の重さが気持ちいいって、聞いた事がありますけど……本当ですね」
何故かは、なんとなくわかるような気がする。
綾「体温で、安心するんでしょうか………」
涼「じゃあ………これは知ってる?人を抱きしめている方も安心するって事…」
そっと私の頬にキスする。
体温は優しさも伝えてくる。
切ないくらい、泣きたいくらい、痛いくらい―――――――――――――
綾「涼さん……もう少し、こうしてくれますか?」
涼「…ああ………俺もそう、言おうと思ってた」
少しではあるが、先程にはなかった眠気が来た。
涼「……………もう……眠れる?」
綾「はい…」
除々に来ていた睡魔は大きくなり、自然とまぶたを閉じていった。
すでに意識は飛んでいるのかもしれない。
けど、これだけは言おう。
……ありがとう……涼さん。

後書き

今回のネタはとある同人誌から。
何の本ですか?というツッコミが来そうですが、言わない事にします。
言ったら9割9分の確立で作者の人格が疑われますから(笑)。
キスはあんましてませんけども(苦笑)、シリアスだけどほのぼの、こういうスタイルがやっぱいいなあと思います。
9thは…………あるかどうかはわかりませんが、ネタが出来次第やりたいと思います。
それでは次回にて。