たまには、ね。

綾の母「こんにちは、綾」
綾「お母さん、こんにちは」
辺りを見るが、涼の姿が見当たらない。
綾の母「あら、涼君は?」
綾「涼さんでしたら、お昼寝中です」
綾の母「……じゃあ、ちょっと行ってみるわね」

廊下を歩くと、柱に体を預けて寝ている涼を見つけた。
涼「…くー……」
ふふ、かわいい寝顔。
こうしてみると男の子という感じに見える。
涼の横に座り、少し涼の顔を眺める。
時折、表情を変えるので飽きがこない。
涼「ん……」
すると涼が、態勢を変えようとした。
が、背中の柱1本しか涼を支えていないので、そのままずるっと頭が下の方へと落ちた。
だが、ちょうどうまい具合に綾の母が座っていたので、頭は綾の母の腿のあたりに落ち、膝枕のような状態になった。
膝枕で寝ている涼の寝顔にどきりとした。
男の子とも男性とも見える表情だった。
時折態勢を変えようとして、一緒に表情を変えていく。
その時の顔がどこかくすぐる感じだった。
…………………………。
はっと我に帰り、顔を赤くした。
涼君はすでに綾の夫だ。
それはいけない事。
けど……。
どうも涼君は多くの女性にもてるタイプだろう。
理由はこの胸の鼓動の早さが物語っていた。

綾「あっ、お母さん」
綾は母親を見つけ、呼びかけた。
綾の母「あら、綾」
綾「涼さんは……まだ寝ていますね」
綾の母「そういえば、綾」
綾「はい」
綾の母「晩御飯の仕度は?」
綾「ええ、これから行こうと思っています」
綾の母「それだったら、涼君は私が見ているから、行ってらっしゃい」
綾「でも……」
綾の母「大丈夫。私はもう晩御飯は買って来ているから、それに……」
綾「それに?」
綾の母「涼君には手を出さないから♪」
綾「お、お母さん!」
綾は真っ赤になった。
こういうところはまだ綾は慣れていない。
要はからかいがいがあるという事だ。
綾の母「ふふ、それじゃ行ってらっしゃい」
綾「もう………それじゃ行ってきます」
綾は買い物に出かけた。

そっと涼の髪を撫でた。
涼「んっ………」
涼は撫でた辺りを寝つつカリカリとかく。
そんなかわいらしい行動が可愛らしく感じた。
…もし、綾と同い年の息子がいたらどうだろうか。
きっと、涼君に似たような、良明さんに似た息子になっていただろう。
綾の母「たまには、ね」
気持ち良さそうに寝ている涼に向かって優しく微笑んだ。

後書き

タイトルの『たまには、ね。』は綾母のセリフだと言う事はおわかりになったと思いますが、実はもう一つの意味があるんです。
今回は再び涼×綾母になりましたが………ま、『たまには、ね。』
それでは次回にて。