彼女がツンデレになる時

綾「♪〜」
掃除を終えて部屋が綺麗になって上機嫌。
ふと、鏡に映った自分を見る。
綾「…伸びた…かな…」
自分の髪を撫でるように触り、長さを確認する。
確かに長い髪ではあるが、長すぎると色々と不便な事がある。
これからの予定はないので美容院に行こう。

美容院に入ると、待っている客は誰もいない。
しかし、従業員は全員カット中。
少し待てばいいかな。
椅子に座り、棚にあった女性向けの雑誌を取り出し、読む。
パラパラとめくっていると、ちらりと何かが目に入った。
聞いた事のない言葉。
そのページまで戻り、その言葉を見てみた。
『ツンデレ』
綾「…………?」
どういう意味だろう。
そのページをもう少し読んでみると、『ツンデレ』というものは人前では強気でツンッとしているが、2人だけの時だと甘えてくるようにデレッとするキャラクター性の総称との事。
……変わっている。
普通はどんな時でも甘えていたいものだと思うけど。
素直になれない子……なのかな?
さらに読み進めると、この『ツンデレ』は男性受けしやすいとの情報が。
綾「………………………」
………涼さんも…かな?

その後も呼ばれるまで『ツンデレ』のページを読み続けた。
そして髪をカットしてもらっている間もツンデレについて考えていた。
……涼さんもツンデレな態度だったら喜ぶのかな?
この美容院で得た情報をまとめると、このような結論になった。
とりあえず褒められたらツンデレな態度をとる。
……ただ、サンプルの『嬉しくなんかないんだからねっ!』という言葉は言いづらい。
もう少し自己流にアレンジしてみよう。

美容院を出ると、夕暮れになっていた。
夕食の下ごしらえはすでに終わっているのですぐにできる。
そろそろ涼さんも帰ってくる頃だろう。

玄関のドアは開いていた。
となると涼さんはすでに帰ってきている。
綾「ただいま帰りました」
涼「おかえり、綾……ん?」
涼さんは私を見て何かに気づいたようだ。
涼「ああ、髪切ったんだ。綾はこのぐらいの長さが一番似合うなあ」
いきなり来た。
よし、早速実践してみよう。
綾「…べ……」
涼「……べ?」
綾「べ、別に嬉しいとは思っていませんからね」

直後、目が点になる涼さん。
涼「あ、綾…?な…何を言って…?」
ここまで動揺する涼さんは見たことが無い。
というより喜んで……ない。
綾「ち、違うんです違うんです!い、いえっ、違ってはないんです!」
褒められて嬉しいのは事実。
女心は難しいと聞くが、男心もまた難しいのです。

後書き

綾とは一番縁の無さそうなタイプですが、『海へ』では主人公の言う事を頑として聞かないシーンがあったりします。
まあその時点でバッドエンド確定なんですけどね(笑)。
シリーズ化となりました『彼女シリーズ』ですが、このシリーズは『原点回帰』と思っています。
綾が好きでこの小説を書き始めたわけですが、綾の魅力をどんどん出したいという目標もありました。
綾のどんなところが好きか。
そういった好きな部分をちょっとずつ出していって今に至るわけです。
『こうしたら綾はどうなるか』『こんな綾はどうか』といった綾の……リアクション(笑)を堪能してほしいと思います。
それでは次回にて。