綾「あの、涼さん」
涼「なんだい、綾?」
綾「その………ですね…」
涼「うん?」
綾「…………できちゃった」

USD

ぴしっ。
瞬時に凍った。
涼「………………………………え?」
すっとんきょうな声が出た。
涼「な、何だって?」
綾「だから、できちゃったの」
再びぴしっ。
………………………妊娠だろうか。
…………しかし、俺の計算ではそれはありえない…。
………………………………まさか。
俺がいない時に…。
涼「………もう一度聞くけど、何が?」
綾「ですから、できちゃったんですよ」
しかし、口調、表情から見ても悲しそうには見えない。
……………………………ということは、俺の計算ミス?
そして、ダメ押しの一言。
綾「責任、ちゃんととってくださいね」
……やはり妊娠か。
涼「ちょっと、風呂に入ってくる」
綾「まだお昼ですよ」
涼「じゃ、じゃあシャワーを」

涼がシャワーを浴びている最中、
綾の母が来た。
綾の母「綾、どう?」
綾「ええ、かなり動揺したみたいですけど」
綾の母「ふふ、成功したみたいね」
綾「でも、涼さんのおかげで健司さんに恋人ができたから、涼さんがその2人の責任をとって、と言おうとしたのに、どうして…できちゃっただけしか言ってはだめなんですか?」
綾の母「ふふ、でも涼君の反応、面白かったでしょ?」
綾「ええ、とっても」
綾は男はできたと言われると固まることを知らないのである。
知らないという事は幸せである。

涼「…………名前、決めないとな…」
一方、そのことを知らない涼は真剣になって名前を考えていた。

後書き

タイトルのUSDは『UP SIDE DOWN』の略語です。
ちなみに意味はさかさまという意味です。
今回のテーマである『できた』と関係があります。
何故『できちゃった』と女が男に言うと男は固まるのかと言いますと、できたというのは動詞です。
本来、言葉として○○がどうしたというように最初に主語がつきます。
そのため、順番を逆にしていきなり『できた』等の動詞がいきなり出ると何ができたのかわからなくなるわけです。
そして、カップルで『できた』というのはもっぱら妊娠ということですから、固まるのも無理はありません。
元ネタはずいぶん前に放送された恐怖の法則からです。
ちなみに余談ですが健司はこの女性と結婚することになります。
それでは次回にて。