NEW ERA

涼「よっと」
持っている平鍬を地面に振り下ろす。
ザクッと深く刺さり、てこの原理で柄を持ち上げて刃の部分を起こし、土を掘り上げる。
最初は慣れなかったが余計な力を入れずに刃の重さで振り下ろすだけで充分と理解してからスムーズにできるようになった。

定年を迎えたら畑をやりたい。
そう考えていたら車で30分くらいの所で畑を借りれると聞いて早速契約した。
広さも丁度良く、土もいい感じ。
おまけに値段もリーズナブルで近くの農家から助言をもらえたりと言い事尽くし。
よくまあ他の人に取られなかったと思う。

ある程度畑を耕して休憩をしていると、誰かが来ていた。
肩まで伸びた黒髪。
白いワンピースを着ており、綾によく似た顔。
涼「よう、華蓮」
華蓮と呼ばれた少女はこちらにバッと抱きついてきた。
華「わーい、じいちゃーん!」
涼「はっはっはっ、お前ほんとハグ好きだよな」
華「えー、じいちゃん好きだもん」
華蓮の頭を撫でていると、さらに二人来た。
涼「おう、春香に光一も来たか」
自分の娘と、その娘を奪った義理の息子も来ていた。
春「こら、華蓮。おじいちゃんに何してるの」
光「そうだぞ、お前も17なんだから…」
華「うっせー、親父」
ただし父と娘の相性は酷いものではあるが。
二人と孫のやり取りを見ているうちにもう少し向こうにいる二人を見つけた。
涼「おーい、母さん、綾」
春・光・華「えっ!?」
松葉杖をついてこちらに歩いてくる義母の幸枝と、母を支えながらこちらに来る妻の綾。
ただし、距離は300メートル程離れている。
春「…おじいちゃん……何で見えるの……?」
光「おかしいでしょ、あんた」
涼「え?そうか、近いだろ?」
やがて涼の傍まで近づく。
綾「涼さん、お弁当持ってきましたよ」
涼「ああ、ありがとう」
涼が弁当を受け取った途端、独特の空気感が漂う。
俗に言う『二人の世界』。
春香と光一は『またやってる』と少々うんざり。
一方華蓮はむーっとふくれっ面。
じいちゃんLOVEとしては面白くない。
綾母「さあさあ、皆の分も持ってきたから一緒に食べましょう」
すでに慣れた綾母は平然。

還暦を迎えた涼の、最後の物語。

後書き

このプロジェクトは涼の人生において最後にあたる物語になります。
ただヒロインは綾ではなく孫の華蓮になりますが。
ちなみにタイトルは全てfox capture planの曲名にしています。
久々に『タイトルが曲名』のパターンになります。
ただこのプロジェクトは長く書き続けるものではなく数話書いて終了と短いものになっています。
短いプロジェクトになりますがしばらくお付き合いください。
それでは次回にて。