進展

臣「あっ、そういえばさ」
葵「そういえば、何?」
電話越しに臣の声が聞こえる。
臣「宮崎さんとはどうだ?」
葵「どうだって、何が?」
臣「要はやったかどうかだ」
葵はぶっと吹き出す。
葵「な、な、なっ」
臣「その様子だとまだみたいだな」
葵「当たり前だって」
臣「お前はしたいって気持ちはないのか?」
葵「え…うーん………どうなんだろう」
臣「もったいないな」
葵「え?」
臣「あんだけ美人で、スタイルもいいし、おまけに頭もいいしクルマのテクもある。これほどいい女はいないと思うが」
葵「……和佳奈はどうなんだろうな」
臣「…さて…な……」
そればかりはわからない。
女というのはクルマのセッティングよりも非常に複雑だからだ。




葵「ふむ………」
電話を終え、ベッドに寝転がる。
そういう事は考えてもなかった。
葵「臣の馬鹿…」
そんな事を言うから変に意識しちまうじゃねえか。
どんな顔して和佳奈に会えばいいんだ。
その時、電話が鳴った。
さきほど臣と電話をしていたため、手元に受話器はあった。
受話器を取って、耳にあてる。
葵「はい、篠原ですが」
相手の声は女性だった。
女性「宮崎和佳奈と申しますが、篠原葵さんはご在宅でしょうか?」
葵「え、ええ、俺ですけど」
和「あ、葵君…明日、お時間ありますか?」
葵「ええ、大丈夫ですけど」
和「良かった……それじゃあ、峠で待っていますから」
葵「あ、はい。わかりました」
和佳奈の声を聞くたびに妙にドキドキする。
和「それでは失礼します」
葵は電話を切った。
葵「ふーっ……」
電話なんて何度もしてんのに、なんで緊張してんだろ、俺…。






葵と和佳奈の地元である峠に葵は着いた。
和佳奈はすでにいた。
葵「ごめん、待たして」
和「いいえ、私も今きたところですから」
葵「そっ……か………」
改めて和佳奈を見る。
確かに、臣の言う通りだ。
俺にはもったいないぐらいだ。
和「……どうかしましたか?」
和佳奈の言葉ではっとした。
葵「い、いや、なんでもない。ところで、和佳奈」
和「ええ、なぜここへ呼んだかですね」
葵はうなづいた。
和「実は……その……」
和佳奈はてれてれの状態になっていた。
和「私達……恋人……ですよ…ね?」
葵は和佳奈の言葉に衝撃を感じた。
恋人。
やはり、和佳奈も意識していたんだ。
葵「う…うん……」
和「そ……それで………その…………ちゃんとした…恋人に…なりませんか…?」
葵「そ………それっ…て…………」
する、という事だろうか。
和佳奈は恥ずかしそうにうなづく。
葵「で、でも…なんでまた今?」
和「そ…それは………………眞一郎さんが………」
こっちは臣でそっちは眞一郎がか。
葵「……くくくっ」
葵は笑った。
和「そ、そんなに笑うことないじゃないですか…」
和佳奈はしゅんとなった。
せっかく告白したのに…。
そんな顔だった。
葵「ごめんごめん、実は俺も臣に同じ事言われて…」
和「え…?」





一方、臣と眞一郎は、
臣「うまくやってっかなー、あいつら」
眞「うまくいってるだろ。せっかく俺らがそういう風に仕込んだんだから」
臣「まあ、そうだな」
眞一郎は缶ジュースを手にして、
眞「あいつらの未来に乾杯」
臣「はあ……」
眞「どしたよ」
臣「なに、お前も美夏がいるしな…俺だけなんだよな」
眞「だったら、梨花の方は?」
臣「うーん………美夏ちゃんから聞いてみてくれ」
なお、後に臣と梨花がくっつくことになるのはまた別の話である。




葵「……結局、俺達はあいつらの策にかかったか」
和「それで………その………………どうします…?」
和佳奈が真っ赤になりながら、聞いてきた。
葵「……走り屋らしく、勝負で決めよう」
和「どうやって?」
葵「俺が勝ったら、まずキス。2連勝したらちょっと長めに。3連勝だと強く抱きついてのキスで、4連勝したら、舌を絡めて、そして5連勝でするっていうのは?」
和「……じゃあ、私が負けるたびにキスしなきゃいけないんですか?」
葵「しかし、いきなりするっていうのはお互い心の準備ってものが…」
和「じゃあ、私が勝ったら………やっぱりキスですね…………………」
和佳奈は溜息をついた。
葵「よーし、じゃあ、早速バトルしようか」
和「えー……わかりましたよ……もう……」
葵はくすっと笑って、和佳奈に近付く。
葵「和佳奈…」
和「葵君…」
葵「愛してるよ」
と言って、葵はクルマに乗り込む。
和「え、え、え!?」
葵「どうした?」
和「こ、この場合、言った後、キスするんじゃ………」
葵「それは後のお楽しみにしておくよ」
和佳奈の顔から湯気が出そうなほど赤くなっていた。
和「もーっ!絶対負けませんよっ!!」
和佳奈が怒りながら言った。
だが、その怒り方はかわいらしいものだった。
和佳奈もクルマに乗り込む。
涼「よーし、それじゃあ行くよ」
キーを差し込み、エンジンを起動させる。
クラッチをつなぎ、一気にアクセルペダルをベタ踏み。


峠に2台のスキール音が鳴り響いた。
後書き
これにてプロジェクトエボリューションは終了です。
プロジェクトギアの最初が和佳奈と葵でしたので、続編の最後もやはりこの2人でしめようと思います。
それでは、次回作である三部作完結編、『プロジェクトゼロ』でお会いしましょう。



参考作品
講談社 しげの修一著 『頭文字D』
小学館 松岡圭祐著 『千里眼 運命の暗示』
avex globe 『euro global』
move 『euro movement』
『Gamble Rumble』
タイトー 『バトルギア2』
元気 『首都高バトルZERO』
コナミ 『ビートマニア UDX 4th Style』
NAOKI 『B4U』