JR線京都駅。
新幹線から多くの生徒が降りてくる。
光「やっと着いたか…」
ぐっと光一が背伸びする。
光「ええっと……」
事前に配布された修学旅行のしおりを読む。
日程ではホテルに直行。
光「……普通はどっか観光するもんなんだろう……」
春「でも、もう夕方ですから」
出発時刻が昼過ぎのため、京都に着く頃には夕暮れになっていた。
ホテルに到着。
光「えーと、俺らの部屋はと…」
しおりに書かれた番号を見て探す。
春「あっ、ありましたよ」
同じ番号のドアがあった。
ロビーでもらった鍵を使ってドアを開ける。
中に入っての一言。
光・春「あっ」
……………………ダブルベッド。
先生「ああ、それしかなかったんだ」
光「だからってダブルはあかんでしょう」
普通はツインだ。
先生「いや、ちゃんとセパレートするぞ」
先生の言った通り、確かにセパレートできる。
が、ちっちぇー。
これじゃ緊急患者によく使われるようなベッドだ。
光「……どうする?」
春「別に私はいいですよ」
光「と、おっしゃいますと?」
春「セパレートしなくてもいいですよ」
………その一言は嬉しいと思うのだが、よく考えてみると幼馴染という立場を考慮するとがっくりときそうな一言だ。
男として見られてないというのはやっかいである。
ま、その反面友好的なのはありがたいけども。
夕食が終了し、あとは就寝となる。
ま、夜更かしは翌日に響くので早めに寝る事にした。
そして寝る時にこの修学旅行史上最大の難問が待ち受けている。
春香の隣で寝る、という事だ。
そうそう女と寝るのなんて滅多にない。
好きな人ならなおさらだ。
なんとかうまく寝れる方法を考えつつ、シャワーを浴びる。
なんとかして春香と寝ない方法を考えないと……。
春香と寝る…ねえ……………。
………春香と寝る……………はっ!いかんいかんいかん。
別の方向で考えてもうた。
煩悩退散っ!!
ガスッッ。
……痛てて、壁に頭突きをしたにゃいいが強過ぎた。
…………あ、そうだ。
春香が布団に潜り込む前に寝ちゃえばいいんだ。
そうすりゃ問題無い。
よし!風呂出たら速攻で寝よう。
シャワーを終え、浴衣を着てバスルームを出た。
…………………作戦失敗。
もうすでに布団に入ってました。
そういや風呂も春香が先だったし。
………寝れんのかなあ、俺。
そして就寝時間。
………エキストラベッドとかソファもないし、かといって床で寝ようとしたら春香に『風邪をひいちゃいますよ』と注意されたし、やむなくベッドで春香と寝る事になる。
………あかん、全然寝れん。
……んでもってこの娘さんは早くも寝そうだし。
すごい神経だな。
目ぇつぶって羊数えればなんとか寝れるかも。
………駄目だ、もう200匹程数えたが眠気がまったく寄って来ない。
むしろ逃げて行く感じだ。
……しょうがない、しばらく起きているか。
目を開け、ちらりと春香の方を見る。
身体が固まったというのはこういう事なんだなと実感した。
それほどまでに春香の寝顔はすごかった。
一言では語り尽くせない。
論文でようやく語り尽くせる感じだ。
あえて一言でいわせてもらうと『反則』。
プロレスラーが鉄パイプを持ってぶん回すよりも反則だ。
光「…………っ」
ごくりと生ツバを飲みこむ音が聞こえた。
部屋中に響いたのではないかと思ってしまうほど大きく聞こえた。
おそるおそる人差し指で春香の前髪を触る。
さらっとした髪の質感が気持ち良かった。
すごい女の子に惚れたもんだなあ。
幼馴染という立場から、頑張って進みたいな…。
ふと、自分のまぶたが重く感じているのに気付いた。
ようやく眠気が来たか。
やっと眠れる…。
明日から……いやもうベッドに入ってから時間が経ってるからもう明日になっているかもしれない。
2日目はどうなるのやら………………。