さて、あの出会いから2週間が経過した。
しかし、あの事を気にする必要は特にはなかった。
昔だからだ。
2人とも昔の事を根に持つタイプではなかった。
それに、恋人とかいうレベルではなく、あくまでも幼馴染の関係。
そんなこんなで一気に恋人、という事はまったくと言っていいほどなかった。
だが、
春「光一君、一緒に帰ろ」
光「ん、ああ」
春香の性格が仲良しというレベルに保っていた。
春香はその優しい性格のため、嫌われている人間は誰もいない。
多少、ガラの悪い人がいても春香には好意的である。
人徳。
一言で片付けるのがもったいないほどだ。
春「光一君、今日は暇なの?」
光「ああ。今日はこれといって特に」
春「……じゃあ、私の家に来ます?」
光「ええっ!?」
唐突な一言にどきっとした。
春「?どうかしたんですか」
…………天然だろうか。
男を家に呼びこむ(?)とは。
………というよりすでに面識があるので平気でそういう事ができるのだろうか。
光「……いいのか?」
春「うん。お父さんやお母さんにも光一君を見せたいですし」
光「…………」
……まだ男として見てないのだろうか。
嬉しいやら悲しいやら。
光「……なんか緊張するな」
幼少時、一度だけ来た事があるが、その時の記憶はない。
悲しいが記憶というのはそういうものだ。
春「それじゃ、お上がりください」
光「あ、お邪魔します」
玄関を開けると、まず最初に見たのは涼だった。
光「あっ、春香のお兄さんですか。初めまして」
涼「え?あ、いや、春香の父親だけど」
光「……いやまたそんな冗談を」
涼「いや、冗談じゃないんだけど」
やはり父親に見えないのだろうか。若過ぎて。
すると、そこに綾が。
綾「春香、お帰りなさい」
春「ただいま帰りました。お母さん」
光「……………お母…………さん?」
綾「お久しぶりですね。光一君」
光「………本当に母親なんですか!?」
やはりどう見ても姉のように見える。
涼「本当に母親。で、俺の嫁」
光「………すごい」
涼「ま、大抵の人はそうだな。俺と綾はもうちょいしたら40だし」
すると今度は綾の母が。
綾の母「あら、みんなお揃いで」
光「……と、すると………このお母様らしき方は…」
綾「私の母です」
涼「別名、春香のおばあちゃんとも言います」
光「アダムスファミリーですか!?」
涼「よく知ってるね、昔の映画」
綾「でも、まったく肉体の面では老化しませんから」
光「何がどうしてこんな呪いのようなのになったんですか?」
涼「そう言われてもねえ………俺はこの血族ではないんだけれども何故か老けなくてね。まあ遺伝子レベルの問題だろうね」
光「色んな意味ですごい………」
綾「それじゃ光一君、ゆっくりしていってね」
光「あ、はい」
座布団に座り、お茶をいただく。
春「あ、私は着替えてきますから」
光「ん、ああ」
お茶をすする。
光「ふう…………」
………しかしまあすごい一家だ。
春香の母さん、春香と姉妹のようだったもんな。
つーか祖母も入れれば3姉妹状態。
……年齢が1世代ずつ差があるけれども。
光「………トイレ、どこだ?」
尿意を催した。
誰かに聞くべきか。
光「んー………と………」
とにかく人気のある部屋を探さないと。
少し歩くと、手前の部屋から物音がした。
誰かいるのだろう。
ちょうどいいや、トイレの場所を聞こう。
その部屋を戸を開けた。
着替え中だった。
……………春香の。
んしょっ、と長袖のTシャツをかぶるように着衣中だったため、こっちには気づいていなかった。
そのため、思いっきりブラがあらわになっていた。
かわいいタイプのブラだった。
そんな思考のためか、すぐに戸を閉じるという思考がなかった。
そして、春香が光一の存在に気付くと同時に、光一の思考回路にようやく戸を閉じるという思考が生まれた。
戸を閉じる時、すでに春香の視線は光一を見ていた。
パタン
春「ふきゃああああああっっっ!!!!」
その声は家中に響いた。
涼「春香の声だな」
綾「何かあったんでしょうか………」
涼「……………多分、大丈夫だ。ハプニングだな」
綾「本当ですか?」
涼「間違いない。デジャヴを感じた」
光「春香、ごめんって!」
光一が必死の謝りをしている。
故意ではないにせよ、やはり初めて父親以外に裸を見られた事がショックだったようだ。
春「うー…………」
ぷうっと頬を膨らませている。
それはそれでかわいいが、状況が状況だ。
涼「うーん………光一君は大変だな」
綾「女性にとって見られたのは大変ですからね」
光一と春香の一部始終を覗き見する涼。
悪趣味ですよと言いつつ、結局見ている綾。
涼「……ほんとにデジャヴだな」
綾「もしかすると…………もしかしますね」
涼「ま、あの2人にゃ悪いけど見てて面白いわ。下手なB級映画見ているよりよっぽど面白いよ。きっとおじいさんや母さんもこんな立場で見てたんだろうな」
綾「もう………」
涼「まあ、俺達が手を出すものじゃないさ。彼等は彼等なりに物語がある…………と思う」
綾「昔の私達に似ていますから大丈夫ですよ」
涼「ま、時間はたっぷりあるし………気長に見ますか」
綾「……ですね」