DANCING

眞「なあ、臣よ」
臣「んだよ」
眞「なんでせっかくの正月だってのに、俺ら男2人で初詣行くんだ?」
臣「んなもん知るか」
眞一郎と臣はせっかく21世紀になったので初詣へ行くことにした。」

和「〜♪」
葵「あの、和佳奈?」
和「はい?」
葵「なんでまた、俺達の地元じゃなくて、ここなんですか?」
和「ええ、正月は別荘で過ごそうと……」
別荘…。
お金持ちってすごいな…。
和「それじゃ、行きましょう」
葵「あっと、そうですね………ん……あれは?」」

臣「うー、寒っ」
眞「文句言うなよ。もう1、2時間したら人増えるから、わざわざ午前6時にしたんじゃねえか」
臣「それもそうだけどさー……………んー、あれは……」
眞「……プロジェクト・ギアのカップルじゃないか」
臣「……呼ぶ?」
眞「いや、向こうも気付いたな」」

葵「向こうも気付いたようですね」
和「ん――、一緒に初詣しましょうか」
葵「それもそうですね。バトルは引き分けでしたし」」

眞「お、こっち来た」
臣「こっち…敵だぞ」
眞「いいじゃん、昨日の敵は今日の友ってことで」
臣「それもそうか」」

和「あけましておめでとうございます」
眞「こちらこそおめでとさんで」
臣「あけましておめでとう」
葵「おめでと、臣ちゃんに眞一郎」
臣「ちゃんは余計だ」
眞「どうしたんだ、今日は?」
葵「和佳奈の別荘で過ごす予定なんだ」
臣「別荘……」
和「そんなたいしたものじゃありませんよ」
いや、十分たいしたもんだ。
臣と眞一郎はほぼ同時にそう思った。
眞「2人はもう初詣済ました?」
葵「ああ、さっきな」
臣「じゃあこれから別荘か」
和「よろしければ、一緒に行きませんか?」
眞「いいのか?」
和「大丈夫ですよ。お二人が来ても大丈夫な広さですし」
臣「それじゃ、お言葉に……」
臣は眞一郎の方を見た。
眞「甘えるとするか」
葵「お前ら、車は?」
眞「いや、歩きだ」
葵「じゃあ、俺のに乗ってけよ。和佳奈も一緒に乗るから後部だけど」」

そして葵のレビンで和佳奈の別荘に行くことになった。
臣「ここから宮崎さんの別荘までどのぐらい?」
和「だいたい、2時間くらいです」
眞「じゃあ、着くのは10時過ぎか」」

そして1時間ぐらい経った頃、
峠の上りにさしかかっていた。
葵「……和佳奈」
和「はい?」
葵「その………いいか?」
和「え?」
葵「いや、最近馬力あげたんだけど足まわりのチェックしてなかったんだ」
和「…今ここで?」
葵「うん……駄目?」
和「ちょっとだけですよ」
和佳奈はそう言いつつはっしと辺りの捕まるところに手をつけた。
臣「え?」
眞「お?」
一方、臣と眞一郎はあまり聞いてなく、半分程度しか理解できなかった。
葵「じゃ、早速」
言った刹那、ゴンッと瞬時にギアを3速に入れる。
その途端、エキゾースト。
そして一気に加速。
あっというまに130キロ。
そして2人の会話を理解していなかった別の2人は、
臣・眞「だ―――っっ!!ちょっと待てえ!」
ようやく理解した。
だが、言っている間にすでにコーナーに突っ込んでいた。
急激な横G。
和佳奈はすでに準備ができていたし、すでに何度かあるので怖がりもしなかった。
だが、
臣・眞「ぎゃ――――っ!」
男2人は叫んでいた。」

和佳奈の別荘に到着。
葵「ふー、着いた着いた」
和「ここに来るのも久し振りですね」
この2人は平然としていたが、他の2人は虫の息だった。
臣「う…………う………」
眞「……死ぬかと思った…………他人のドリフトなんか見たことねー」」

ここで、和佳奈達2人と臣達2人には車の勉強の仕方の違いがあることを説明しておこう。
和佳奈達は『夫婦型』、臣達は『狼型』である。
『夫婦型』というのはその名のとおりお互いが協力して成長していくというタイプだ。
一方、『狼型』は群れを嫌い、俗に言う一匹狼の状態で、敵と戦うたびに成長していくタイプである。」

和佳奈達は助手席に乗っていい所と悪い所をチェックしているため、先程の葵のクライムヒルでは怖がりはしなかった。
しかし、臣達はそういうことはまったくしていないため、他人のドリフトを見たことがないため、2人は絶叫していたのである。」

ぐ―――。
葵の腹の虫が鳴った。
和「ふふ……」
和佳奈に笑われて、葵は赤くなった。
ぎゅ――――。
そして臣と眞一郎の腹の虫も鳴った。
臣「そういえば、朝飯食ってない……」
眞一郎は黙ってうなづいた。
和「それじゃあ、ちょっと早いですけれど、お昼ご飯にしましょうか」
三人一致でうなづく。
和「じゃあ、私は準備しますから、山を下りて買出し、お願いします」
臣・眞「え?」
また、乗るの?
あんなのに?
葵「あんなので悪かったな」
眞「エスパーか、お前は……」
葵「『え?』の喋り方でわかったよ」
そう言いつつ、葵は臣と眞一郎の襟首を掴む。
葵「さー行くぞ」
ずるずると2人とひっぱっていく。
臣「嫌だ――!!」
眞「俺はまだ死にたくない――っ!!」
先程はクライムヒルであったが、今度はさらにきついダウンヒルであることを2人は瞬時に察知した。
葵はぽいっとリアシートに2人を投げ入れ、バタムと閉める。
葵もさっと運転席に乗り込む。
その途端、眞一郎がドアから出て、逃げ出そうとするが、ドアからにゅ―――っと手が出て、再び捕まり、そして戻される。
そしてエンジンに火を入れる音、そしてスタート。
和「いってらっしゃーい」
それから30秒後、スキール音と同時に2人の絶叫がしたとかしないとか。」

1時間後。
葵「ただいまー」
和「お帰りなさい、葵君」
葵は満足そうな顔で車から出てきた。
一方、残りはというと、白髪だった。
臣「もう、車乗りたくない……」」

そして昼食。
和「すぐに作りますから待っててくださいね」
和佳奈はそう言いつつエプロンを着た。
3人はおおっと歓喜の声をあげた。
眞「いいな……エプロン」
臣「ああいう嫁さん、欲しいな…」
葵「俺がツバつけてんだ。手ぇ出すなよ」
葵がメンチを切った。
たまらず後ずさる2人。」

そんなこんなで和佳奈の料理が完成した。
臣「う…うまい」
眞「ここしばらくまともなモン食ったことなかった……」
葵「おまえらどーゆー食生活してんだ………」
ちなみに葵は実家からの働きのため、母親の料理を食べている。」

昼食が終わり、一段落ついた。
和「これから、どうしましょうか?」
葵「ふむ…………」
臣「正月だから大半の店が休みだしなあ………」
眞「…………じゃあ、俺達で新年会ってのは?」
葵「新年会か……いいかもな」
和「それじゃあ、また買出しに行きましょうか」
臣・眞「あ、俺ら留守番」
さすがにもう乗りたくはなかった。」

そして1時間半後、
葵「おーい、買ってきたぞ」
和「荷物が多いから、運んでください」
臣「あいよ」
ダンボールにひとまとめされたのを2人で運ぶ。
眞「けっこう重いけど、何入ってんだ?」
葵「んー、晩飯と酒」
眞「おっ、酒あんのか」
眞一郎は嬉しそうだった。
臣「こいつ、かなり酒好きでな」
和「3升ぐらいありますから、大丈夫ですよ」」

そして夕食か済み、新年会に突入。
眞「えー、それでは新年、そして新世紀ということでおめでたいということで、乾杯!」
和・葵・臣「乾杯」
4人同時にくいっと日本酒をあおる。
眞「おっ、この酒…」
和「ええ、腰の寒梅です」
臣「それって、すごい高いんじゃなかった?」
和「いえ、そんなには高くなかったですよ」
お金持ちの金銭感覚はある意味異常なのだろう。
葵「和佳奈、お酒、飲めました?」
和「ほんのちょっとですけれど…」」

そして新年会が始まって1時間後、
平気なのは葵と眞一郎のみだった。
眞「お前、意外といける口だな」
葵「ん、高校の時からひそかに飲んでたからな」
眞「あ、俺も」
妙なところで気が合う2人だった。
一方、他の2人はというと、
和「……………」
すでに顔が真っ赤だった。
葵「和佳奈、横になった方がいいですよ」
和「……………うん」
そう言って、葵の腿を枕代わりにして横になった。
和「……すー……」
眞「ん、宮崎はギブアップか」
葵「彼女、あまり飲めないんだ」
眞「ま、無理はしない方がい……」
突如、臣が眞一郎に後ろから抱きついた。
臣「眞ちゃ〜ん」
……あかん、完全に酔っぱらいだ。
眞「だ――っ!!俺はそんな気はねえっっ!!!」
ドンッッ。
臣のみぞおちに崩拳炸裂。
臣は崩れるように倒れた。
葵「……ナイス震脚」
眞「俺を姦そうなんざ、10年早いんだよ」
葵「どっかで聞いたな、そのセリフ…」
和「ん……」
眞「あ、起こしちまったか?」
葵「ん、いや……寝返りだ」
がすっ。
寝返りしようと、和佳奈はテーブルの裏に頭をぶつけた。
いまさらなんだが、テーブルで新年会をしていた。
和「ん―――――――っ」
小動物のような泣き声を出した。
そしてまた眠った。
葵「か、かわいい……………」
眞「………お前、ハムスター好きだろ」
葵「よく分かったな」
眞「今の反応でよくわかった」」

そして翌日。
葵「う……頭痛え………」
完全に2日酔いだ。
いや、下手したら5日酔いかもしれない。
眞「うーしっ、今日は何すっかな」
……お前、何で平気なんだ。
葵は頭を抑えつつそう思った。
臣「なー、俺なんかすげえみぞおち痛えんだけど」
眞「ん?寝惚けてどっかうったんだろ」
さすがに昨夜の事は言えなかった。
和「…………」
寝起きが悪いのか、和佳奈はぼーっとしている。
葵「さてと、これからどうすっかな……」」

和「昨日はとても楽しかったですよ」
葵「そりゃ、俺達もですよ」
臣と眞一郎はうなづいた。
臣「ま、機会があったらまたバトルでもしようや」
眞「そうだな…」
和「それじゃまた会いましょう」
葵「臣、眞一郎。送ってやるよ」
臣・眞「ああ」
2人を後ろに乗せて、葵は運転席に乗り込んだ。
その直後、
臣「俺は降りる!」
眞「俺も!」
2人は昨日の事を思い出した。
葵「まーまー、そう言うなって」
にゅーっと手が伸びる。
眞「ぎゃ―――っっっ!!」
臣「バケモノかーっっ!お前はっ!!」
そして2人は捕まり、車に戻される。
和「気をつけてくださいね」
なんでそんなに平然としているんだ。
2人は心底思った。
この2人はある意味最強のカップルなのかもしれない、と。
そして、2人は家路に着いた時にはすでに真っ白に燃え尽きていた。

後書き

作者初のギャグ系です。
ほのぼのとしたものは前にもあったのですが、全編ギャグはこれが初めてです。
ちなみに話の流れは最終+2話といった感じです。
ネタとしてはまあ時事ネタということで。
眞一郎が崩拳をかましたのは声優ネタです。
アニメ版バーチャファイターの晶役の声が三木眞一郎さん、ということでやってみましたが……知ってる人、いるんだろうか(笑)。
基本的に全員、狂わせていますが、本当はちゃんとしていますので、ご注意を。
葵はバケモノのようになっていますが(笑)、こちらも非常識的に変更していますので……。
和佳奈は…………どうも俺色に染めたような(笑)。
さて、今回でプロジェクトギアは終了となります。
そして、次回である、プロジェクト・エボリューションが近日発表になります。
それでは次回作であるプロジェクト・エボリューションにてまた会いましょう。