雨の中で

ザ―――――………
急にどしゃぶりか。
まいったな、綾さんの家から出てすぐこれか。
………戻るべきかな。
うーん、でもなあ………。
涼「………ぶえっくし!!」
このままだと風邪をひくし、しょうがない。
綾さんの家に戻ることにした。

家の門の所まで行くと、すでに綾さんがいた。
大きめのタオルを持って。
涼「綾さん………」
綾「風邪、ひいちゃいますよ?」
涼「どして……わかったの?俺が戻る事を」
綾「涼さんの事ならよくわかりますよ」
涼「え?」
綾「……その……涼さんのお嫁さんなんですから」
綾さんは真っ赤になりつつ言った。
………………。
その一言で嬉しくなり、そのままきゅっと抱いた。
綾「あっ…………」
涼「………」
濡れたまま抱いたため、じわりと綾さんの服にも濡れる。
綾「濡れ……ますよ…」
涼「うん………でも…………少しだけ…このままで…」
綾「………少しの間…ですよ…」
綾さんの方も抱き返してきた。

綾「とりあえず……お風呂、沸きましたから」
少々名残惜しいが抱くのをやめて、うなづいた。
涼「…………」
あ、そうだ。
涼「ねえ、綾さん」
綾「はい」
涼「………一緒に、入らない?」
その途端、ボンッと綾さんの顔が赤くなった。
綾「え……そ、その………」
涼「……嫌?」
綾「それは…………その………………嫌じゃないです」
涼「じゃ、入ろっか?」
綾「……………はい」
非常に小さい声が返ってきた。

カラカラと風呂場の戸を開けると、むあっと湯気が目の前を覆った。
湯気を無視して、中に入ると檜の風呂があった。
お湯の中に手を突っ込む。
ちょうどいい熱さだった。
そのままドブンと入る。
じわあっと手足に熱さが染み渡る。
かなり冷えていたようだ。
涼「ふー………」
………………………あ。
そういや…………入ってくるのだろうか。
………綾さんの事だからホントに入ってきそうだが。
まあ入ってきたら背中でも流してもらうとしますか。
さてと、体も暖まったし、洗うとするか。
風呂から出て、イスに座って石鹸を取る。
ええっと……アカスリは……。
その時、カラカラと戸が開く音がした。
多分綾さんだろう。
涼「あ、ちょうど良かった。ちょっと背中流してくれる?」
綾さん?はアカスリを持って背中をゴシゴシと洗ってくれる。
ちょうどいい強さで洗ってくれている。
さすが未来の嫁さんだ。
なんでもわかってらっしゃる。
ざばあっ、とお湯で流して完了。
が、その時
綾「お待たせしました」
と戸の向こう側から声がした。
え!?
涼「綾さん!?」
だって綾さんはここに………。
ばっと後ろを向いた。
………………
涼「か、母さん!?」
それと同時に戸が開く。
綾「お、お母さん!?何をやっているんですか!?」
どうりで妙に綾さんにしては力の入った洗い方をすると……。
ちなみに綾さんは水着。
ちょっと残念だがまあ一緒に入ってくれるんだし。
まあそんな事はおいといて、だ。
涼「何故に母さんが洗うんですか」
綾の母「あら、もう少ししたらあなたの義理の母親になるわけですから、母として洗っても問題はないわよ」
………そう言われましても。
綾「りょ、涼さんは私の夫になるんですから、お母さんは…」
綾の母「あら、水着で一緒に入るのはまだ妻として失格ねえ…………」
綾「う……」
見事な正論で反論できない。
涼「とにかくですね、俺は綾さんに洗ってもらいたいんですから」
綾の母「あら、私だったら裸にタオルで洗ってあげますけど」
涼「え」
………………
綾「涼さん」
涼「はい」

そしてこの綾さんと母さんの戦いは結婚してからも続く事になる。
まあそれは別の話で。

後書き

これがホームページで公開される時にはまあ涼×綾をまたやってると思われがちですが、実はここ1ヶ月くらいはちゃんとした涼×綾をやっとりません。
久々に書くとやっぱ楽しいっす。
つくづく俺はほのぼの路線が好きなんだなと実感しました。
それでは次回にて。