涼「じゃ、悪いな」
葵「気にすんな。とっとと行ってこい」
涼「あいよっ」
そう言って、涼は教室から出ていった。
俺と涼の会話を聞いていたらしく、和佳奈さんが俺に聞いてきた。
和「どうしたんですか？」
葵「早退だ」
和「りょ、涼君のお家で何かあったんですか？」
葵「正確には藤原さんの身に何かがあったんだ」
和「綾ちゃん、今日はお休みですが………あっ」
葵「そう。お見舞いに行ったんだ」
和「でもまだ３時間目ですよ」
葵「そうなんだよ…」
軽く溜息をついた。
あいつはそれほどまでに藤原さんを好きだと言う事を。
いや、好きではない。
愛しているのだ。
葵「しかし、まあこれでクラスの全員が涼が藤原にベタボレだと言うのがわかったようだな」
和「素敵なカップルになれるといいですね」
葵「なれるさ。きっと」
和佳奈の方を見た。
俺達はどうなるんだろうか。
まだ友達という状態だ。
これ以上の進展は、勇気がいる。
…俺に、勇気を出せるのだろうか。
翌日、藤原さんは無事に登校してきた。
さらに翌日。
葵「あれ、涼の奴、休み？」
和「ええ、なんでも風邪らしいです」
葵「風邪ぇ？あいつがぁ？」
……………信じられん。
あいつが休むなんて。
葵「あいつ………何があったんだ…？」
その日の昼休みである。
綾「あの、篠原さん…」
藤原さんが俺に来た。
葵「どうしたの？藤原さん」
綾「あの…涼さんの事でちょっと……」
……藤原さんは何か知ってるのか？
葵「わかった。じゃあ屋上で」
綾「わかりました」
屋上に行くと、すでに藤原さんはいた。
葵「ごめん。待たせて」
綾「いえ、私も今来たところですから」
葵「それで、涼の事で何か？」
綾「実は……その………揉め事を……」
葵「揉め事？」
すっとんきょうな声を出した。
涼と藤原さんが？
信じられん…。
綾「それで………どうしたらいいかわからなくて…」
多分、揉め事の原因は涼が藤原さんの家に見舞いに行った時だろう。
他に揉めた理由がない。
揉め事が昨日なのだから、ほぼそうなのだろう。
葵「……お見舞いに行った時に、何かあったんだ」
綾「はい…」
葵「それで……涼の方は、怒ってる？」
綾「いえ……怒ってるのではなく……その………」
葵「怒っていない？」
俺は喧嘩のようなものだと思っていたが、違ったようだ。
葵「じゃあ一体……何が…………」
綾「実は……耳、貸してください」
葵「？うん」
………そういうことか。
葵「そうか……あいつはショックで寝こんだんだ」
綾「私…どうしたら…………」
おろおろしている藤原さんを見て、微笑んだ。
…なんだ、藤原さんも涼の事を……。
だったら、話は早い。
葵「じゃあ、今度は藤原さんが涼の家にお見舞いに行けばいいさ」
綾「私が…？」
葵「藤原さんが涼に風邪をうつしたと思ったなら、お返しにお見舞いに行けばいいさ」
綾「でも……」
葵「大丈夫。あいつは藤原さんを怒るわけがないよ」
だってあいつは藤原さんに惚れてるんだから。
綾「………わかりました。お見舞いに行ってみようと思います」
葵「ああ、それがいいと思うよ」
綾「ありがとうございます。篠原さん……」
そう言って、藤原さんは教室へと戻っていった。
……やれやれ、両思いなのに大変なカップルだな。
……………………………………………………………………………………………………にしても。
あんの野郎〜。
藤原さんの下着、見ただと？
俺なんか和佳奈さんの水着姿だけだぞ、ちっきしょ〜。
……あいつが学校に復帰したらシバく事にするか。
…………………………はあ〜。
なんで俺は他人の恋愛の手助けするのかな……。