復帰への道

藤原さんが、交通事故…!?

藤原さんは静かに眠っていた。
事故のキズはなく、とても事故に遭ったようには見えなかった。
………涼の姿はいなかった。
和「綾ちゃんのおじいさん、涼君は…?」
信「涼君は昨日、ここに来たんだが…………」
葵「昨日…来たのか…………」
信「もし、よろしければ涼君の家に行ってきてもらいたいのじゃが…」
あいつを、励まさないとな。
葵「わかりました」

涼「葵…か」
今までに聞いたことのない声だった。
声が涸れているような感じだった。
葵「…ああ、ちょっと…いや、かなり気になってな」
涼「大丈夫だ」
葵「大丈夫なわけないだろう。そんな声…」
涼「大丈夫」
大丈夫と連呼する涼にカチンときた。
葵「最愛の人が事故で、さらには意識不明なんだぞ。そんなことが起きてんのになんで…なんで大丈夫なんだよ!」
涼「うるせえっ!!」
涼が初めて怒鳴ったのを聞いた。
初めて聞いたのもあってか、俺は何も言えなかった。
涼「……………悪い…葵。とにかく……大丈夫だから」
葵「……わかった。でも……藤原さんが死んだ訳じゃない。信じれば……信じれば必ず…………………………………じゃ、じゃあ」

葵が去っていった。
…………………………信じる?
………何を信じろってんだよ。

あれから3日が経った。
涼はどうしたのだろうか。
ショックで自殺。
そんなことにならなければいいのだが。
涼の家の前に立つ。
ドアホンを押し、しばらく待つ。
足音が聞こえてきた。
戸が開くと、向こうには涼がいた。
涼「よお」
3日前とは違っていた。
絶望の顔色はなかった。
葵「…元気そうだな」
涼「この3日、色々あってな」
葵「……何が、あったんだ?」

涼の部屋に上がり、この3日間を聞いた。
涼「自殺まで考えていたんだ」
……かなり、思い詰めていたのか。
涼「おじいさんが、止めてくれた」
葵「…………」
涼「おじいさんと口論になって、おじいさんに殴られて、やっと目が覚めた」
葵「……」
涼「俺が綾さんを守るんだ」
その言葉は重みを感じた。
涼「俺がこんなんじゃ、綾さんに笑われちまうからな」
涼は苦笑いをした。
葵「そっか…………」
俺は一安心した。
葵「涼、大丈夫か?」
3日前にも言った言葉で聞いてみた。
涼「ああ」
涼の顔には決心の色が見えた。

後書き

綾の交通事故か葵と和佳奈の恋愛話のどちらを書こうか考えていたのですが、綾の方を優先しました。
この交通事故から綾が意識を取り戻すまでの1ヶ月の空白を埋めたいと思います。
ちょっとの間綾がおりませんのでしばらくは涼と葵のみの話になります。
それでは次回にて。