反骨精神の表れ

涼「で、今回の大学祭の催しはなんだい?」
葵「………知らない方がいいと思うぞ」
綾「どういう事ですか?」
葵「正確にいうとだな、涼が嫌がるシロモノなんだ」
涼「じゃあなんだ、綾さんと和佳奈さんは問題ないって事かよ」
葵「んー、まあそうなるわな」
涼「で、内容は?」
葵「オカマバー」

涼「ふざけんなーっっっっ!!!!」
葵「決まったもんはしょうがねえだろ」
綾「そうですよ。私達だって男装するわけですから」
涼「いや、それとは次元が似てるようだけど違う」
葵「とにかく、やるしかねえんだ。それにお前ならかなりウケるぞ」
涼「それが嫌だっちゅーんじゃ」
ダッ、と涼が逃げた。
葵「待てっ!涼っ!!」
涼「待てと言われて待つ馬鹿いるかっっ!!」
ぴゅーっと涼は疾風の如く走り去っていった。
葵「くそっ、なんとしてでもあいつを女装させてやる!」
キッ、と視線を教室内の男子に向けた。
葵「総動員で涼を捕まえろ!!」

涼「あんにゃろう……まさか男子全員を使うとは……」
こりゃなんとしてでも逃げないと。
すでに文化祭はあと2日しかない。
セッティング等もあるし、何より俺自身の衣装も作らねばならないため、タイムリミットは今日と見る。
だいたい5時間くらい逃げれば問題はないだろう。
さて、どこで5時間潰すか………。
男子生徒「見つけたぞ!!」
涼「げっ、国分!」
あいつはクラスの中で一番の俊足だ。
やばい!どうするっ!
そうこうしてる間に国分との距離が縮まっていく。
すぐ側には窓。
涼「くっ!」
窓を乗り越え、外に出………。
足場がないっ!!
しかもここ3階!!
涼「だあっ!危ねえっ!」
とっさに窓の手すりの部分をつかむ。
ふいー、危機一髪……というわけにはいかない。
捕まったら一巻の終わりだからな。
ぶらさがっている隣には別の校舎があり、少し振り子のように勢いをつければ足が届きそうだ。
涼「せーの……っと!」
ギリギリで足場に届いた。
よし、これで逃げ切れた。
と思いきや、
別の男子「いたぞ!」
げっ、またいやがるか。
とっとと逃げるか。
上の方だと逃げ場を失う。
すぐさま滑り降りるように階段を降りていった。

2階の通路にて。
涼「くっそ〜、どっかに5時間潰せる所はねえかな」

そして同じ階の涼が通っている通路につながっている別の通路にて。
葵「あんにゃろう、どこへ隠れやがった」

少しずつ2人の距離が近づく。
そしてバッタリ
涼「あ」
葵「あ」

一瞬の静寂。
涼「ぎゃ――っ!」
葵「待てコラァッ!」
猛ダッシュで逃げる。
だが、通路の向こうにはすでに待ち伏せが。
しかも手に持っているのは…………ホットパイ!!??
顔面にぶつける気だ!!!
まずい!前門のパイ後門の葵だ。
しょうがねえ、葵から片付ける!
葵「おとなしく捕まれっ!」
涼「誰がっ!」
力では勝てない。
だったらスピードで勝負。
右に行くと見せかけて、左へ。
葵「そんな子供騙しが効くか!」
涼「ちいっ!」
読まれた。
葵の手が俺の腕をつかむ。
涼「しまった!」
それと同時に、後ろからホットパイを投げてきた。
すかさず、葵の残った手をつかみ、ぐいっと引っ張る。
葵「うわっ!?」
バランスを崩した。
すかさず葵の後ろに回り、頭をつかむ。
そして葵の頭の位置をホットパイの飛んでくる位置と合わせる。

ばしょっ
葵「あっちぃぃぃぃっっ!!!!」
ものの見事に顔面にヒット。
葵の顔から湯気が出ている。
……………ほんとにクソ熱いのをぶつけてきたか。
投げた男子はこの状況に立ちつくしているし、葵はまだホットパイ攻撃でダウン中。
今のうちに。
素早くその場を後にした。

葵「くっそ〜、涼のやつ…」
冷えたタオルで顔を拭く。
男子「デザインとか寸法のタイムリミットまであと1時間ないぞ!?」
葵「こうなったら、待ち伏せして一気に取り押さえるか」
男子「しかし、どうやって?そうそううまい具合に所定の位置にいるかどうか……」
葵「いや、策はある」
男子一同がどよめく。
どんな方法なのか。
不可能と言えるこの状況を。
葵「ただし、この方法は諸刃の剣だ。失敗すれば俺達はこの大学から入れなくなる」
全員がどよめいた。
葵「だが、成功すれば絶対にあいつを捕まえられる」
男子「………よし。このままだと俺達の負けだ。やろう」
葵「わかった。作戦はこうだ…」

時計を見た。
涼「あと10分か……」
あれからまったく敵は見当たらない。
どうやら諦めたか。
涼「くっくっく………」
笑いが込み上げてくる。
これで女装しなくて済むんだ。
そう思うと自然と笑みがこぼれる。
………………必死なんだよ、こっちだって。
さて、と。
目の前にある扉を開けた。
ギイッという鈍い音と共に扉が動く。
隠れていた場所は、普段使われていない講堂の掃除用具入れの中だった。
元々使われていないため多くの学生は知らないし、さらには掃除用具入れの中に入っているなんて想像…………つくかもしれないけどさ。
男子「見つけたぞ!」
やべっ。

ちっ、もう少しあそこで待ってればよかった。
まあいい、また別の所にでも隠れるか。
………妙だ、1人しか追ってこない。
どうやら諦めたようだ。
さーて、とっとと逃げ切るか。
……ん、向こうからも来たか。
よし、こっちだ………。
時間は…………あと3分か。
はっはっは、今回は俺の………おおおっっ!!??
な、何で綾さん!?
しかも裸!?
ぴたっと足が止まる。
葵「今だっっ!!」
突如四方八方から男子が出てきた。
そしてあっという間に取り押さえられた。
涼「汚ねえぞっ!!綾さんの顔とヌード写真をコラージュすんな――――っっっ!!!」
葵「しょうがねえだろ、お前を捕まえるのにはこれしかないし、それに失敗したら俺ら女子に殺されるし大学も退学させられるんだからよ」
涼「む、無念……」
葵「おい、そのコラージュ写真、速攻で燃やせ」
男子「了解」

そしてその後、デザインも決まり、涼の服は完成し、大学祭では驚異的な人気を誇り、涼の靴箱から一昨年の白雪姫の時の倍のファンレターが入る事になりましたとさ。
めでたしめでたし。

涼「いや、めでたくないって!」
葵「いいじゃん、お前大学祭ん時妙にノリノリだったじゃねえか」
涼「う……」

後書き

ちょいとメタルギアソリッド入りました(笑)。
まあ作者は1しかやったことがないので2はわかりませんが。
実はみかん箱に隠れるネタもありましたが(笑)、それはやりすぎだろうと言う事でボツに。
一応続いている大学祭シリーズは次回の大学祭でラストになります。
それでは次回にて。