隠し事の境地

涼「だから〜、いいじゃないですか」
先生「よくはない、とっととその長髪を短髪にしろ」

葵「ま〜た始まったな」
綾「どうしたんですか?」
葵「恒例になりつつある髪切れ抗議だ」
和「如月君の髪の毛、確かに長いですね」
葵「まあ、そういうわけで先生に髪切れ髪切れともう2年半」
綾「2年半もですか!?」
葵「あいつの髪は小6の頃からのばしてきて、今は腰の辺りにまで伸びてきたんだ。それなりに愛着があるんだろうな」

涼がふらふらと教室に戻ってきた。
葵「お疲れさん」
涼「今日は一段とハードな説教だった……」
葵「いいかげんに切ったらどうだ?」
涼「そういうわけにはいかねえよ、ここまで伸びてんだし」
綾「でも…切らないとずっと言われつづけますよ」
涼「いや、大丈夫。対策があるから」
葵「ああ、アレね」
対策?アレ?
綾と和佳奈はちんぷんかんぷんだった。

2日後。
葵「おーい、できたぞ」
涼「サンキュ」
葵「で、報酬は?」
涼「ほれ」
そう言って、封筒を渡した。
葵「今度は………おおっ!」
封筒の中には写真があり、写真には和佳奈が写っている。
和佳奈の隠し撮りである。
まあ隠し撮りといってもそう言った方ではなく、ただ単純に隠れて撮っただけのスマイル写真である。
どういうわけか正面を向いてのかわいらしい笑顔が撮られている。
普通はカメラに気付くはずである。
葵「毎度毎度、どうやって撮ってんだ?」
涼「お客さん、それを言っちゃ商売にならんよ」
葵「越後屋、お前もワルやなあ」
涼「いえいえ、将軍様かて」
しばらく時代劇風の密会をし、
葵「あっと、そうそう。渡すの忘れてた、ほい」
涼「うーし、これでしばらくはごまかせる」

翌日。
先生「おっ、涼。やっと切ってくれたか」
涼「でも、俺ってよく髪の毛伸びるほうですよ」
先生「構わん構わん、切ったという事がいいんだ」

涼と先生の会話を見ていた3人は、
綾「切っちゃいましたね……」
和「せっかく伸ばしていたのに………」
葵「……ふふ、どうかな?」
綾・和「え?」

翌日、異変が起きた。
昨日はスポーツ刈りだったのに、すでに髪の毛が4、5センチほど伸びている。
綾「??どうなっているんです?」
和「本当に如月君は髪の毛が伸びやすいんですか?」
……いくらなんでも一晩でここまで伸びる奴はいないだろう。
クラスの連中は何度も見たことがあるので見向きもしない。
唯一、綾と和佳奈だけが知らないため、訳がわからない状態になっている。

さらに翌日、髪の毛はさらに伸び、おかっぱに近い状態になった。
葵「もういいんじゃねえの?藤原さんと和佳奈さん、心配してるぜ」
涼「あ、綾さんと和佳奈さん知らないんだったな」

ほんでもって翌日、
髪の毛は前日と同じだった。
綾「涼さん、今日は伸びないんですね」
涼「だって、これは伸びるわけがないから」
和「え?」
涼「まあ見てなよ」
そう言って、頭をがしっと掴む。
涼「……ん……よっと」
力を入れた瞬間、頭が抜けた。
綾「きゃぁっ!?」
和「ひっ!?」
だが、取れたのは髪の毛だけだった。
一方、残った方はちゃんと髪の毛があった。
以前と同じ長髪だった。
葵「驚いたろ、カツラなんだ」
涼「こいつの知り合いに床屋がいてね、カツラをいくつか作ってもらったんだ」
葵「一日ごとに髪の毛の多いカツラに変えていって、こうなっ…………ああっ!!?」
涼「あ、綾さん!」
先程の頭が抜けた光景を見て、2人ともショックで気絶していた。
綾にとっては好きな人の頭が、和佳奈にとってはホラーのようで、ショックを受けてしまった。
葵「わ、和佳奈さん、しっかり!」
…………またか。
クラスメートはそんな風に見ていた。
誰かが気絶する。
これも恒例になりつつあった。

後書き

学校の規則で髪の毛の長さはやはりどの学校にもあるでしょう。
涼はどうやってそれを回避してるのか。
そんな疑問からこれが生まれました。
この長髪は結婚してしばらくして切ることになりますが。
それでは次回にて。