風のささやき

翌日、翌々日は団体行動で、個人で動けるのは4日目だった。
最初は団体行動で、その後から自由行動になった。
団体で行った場所が嵯峨野の化野念仏寺だった。

涼「徒然草、だったっけ?」
綾「はい、吉田兼好のです」
涼「結構有名なんだな……徒然草でも書かれているんだから」
綾「六面六体地蔵が有名ですね」
葵「地蔵というと、この………1000体以上の………この地蔵?」
和「六というのは人間の六道である地獄、餓鬼、畜生、修羅、天上、人間をを表しているんです」
葵「すごいな……この光景は」
なんとも言い様のない光景だった。

念仏寺を見終え、その場で解散となり、自由行動となった。
葵「涼はどうする?」
涼「綾さんと一緒に天龍寺へ行く予定だけど」
葵「ん、そっか……俺はどうしようかな」
和「それじゃあ、渡月橋へ行きませんか?」
葵「ああ、そうしようか」
涼「それじゃ、俺達は先に行ってるから。俺達も後で渡月橋へ行くから」
葵「あいよ」

涼達が念仏寺を出て、天龍寺へと向かっていった。
葵「じゃあ、俺達も行こうか?」
和「あ……あの……ちょっと待っててください……」
……ああ、トイレか。
葵「ああ、いいよ」
和「ありがとうございます。すぐに戻りますから」

しばらくして、和佳奈さんが戻ってきた。
葵「もう大丈夫?」
和「あ、はい。お待たせしました」

渡月橋は山を降りて、広い通りを繋ぐ橋のため、念仏寺は高地にあるので山を降りていく。
どうやら俺達が最後らしく、後ろにも前にも誰もいない。
竹林に挟まれた小道を2人で歩く。
そのまま歩いていると、和佳奈さんの足が止まった。
………………………………………和佳奈さん?
葵「どうしたの?和佳奈さん」
和「ごめんなさい……葵君…」
葵「ごめんって………」
和「実は……昨日の東本願寺の事ですが……」
葵「ああ、疲れて眠った事?」
和「はい……で、ですが………その…」
和佳奈さんは顔を真っ赤にしつつ言った。
和「あの時……寝ていなかったんです」

和佳奈さんの言葉を聞いた時、あの時を瞬時に思い出した。
葵「じゃ…じゃあ…………」
和佳奈さんは真っ赤になりつつうなづいた。
……………誰もいない。
……もう一度、勇気を出そう。
葵「…………返事、聞かせてほし」
和「いえ、いいんです。また言わせるのは失礼ですから」
え?
葵「………」
和「私からも言わせてください…」
和佳奈さんは赤くなりつつ、深呼吸をした。
他人にもわかるように大きく深呼吸していた。
和「……あ……葵…君……、わ、私と…………………つ……付き合ってください……!」
和佳奈さんの告白を聞いた後、しばらく静寂が続いた。

葵「……俺で、いいの?」
和佳奈さんはうなづく。
和「あなた以外に……考えられません」
…………カップル……成立、か。
そう思った瞬間、緊張の糸が切れた。
その場にへたりこむ。
和「あっ、葵君!?」
葵「い…いや……。安心しすぎてちょっと…………」
和「………くすくす…」
葵「……ふふっ…」
その思いが通じたのか、今の状況のせいなのか、お互いに笑いあった。
ふいに、風が吹いた。
おめでとうと、ささやいているようだった。

渡月橋に着いたのはいいが、葵達の姿が見当たらない。
涼「おかしいな……俺達の方が遅いはずなのに…」
綾「……あ……来ましたよ」
………………………………………………………来た?
いたのではなく、来た?
俺らよりも遅いって事?
葵「よおっ、涼」
………しかもなんか嬉しそう。
…………なんかあったな。
……………和佳奈さんも嬉しそうだが。
……………………………………………………………まさか。
涼「葵、もしかして……」
葵は何も言わずに、
ビシッとVサインを出す。
涼「……ついにやったのか」
葵「やった言われると別のやったを考えちまうな」
涼「ふーむ………先を越されたか」
葵「ま、そういうわけだ。がんばれや」
涼「あいよ」

あ〜〜〜あ…………。
先越された……
俺が綾さんに告白できるの、いつなんだろうな……。

後書き

と、いうわけで無事にゴールインしたわけですが、無論、これで終わりではありません。
まだ2人は恋という段階ですからね。
涼と綾が愛という状態と言えばわかりやすいですね。
しばらくは恋という状態で話を進めていきたいと思います。
さて、少し前に和佳奈の声の担当、要は声優さんは誰?ということを書きましたが、ようやく決定、というかこれでいいやみたいな状態です(笑)。
で、担当は久川 綾さんになりました。
綾の声が和佳奈さんで、和佳奈の声が綾さんと、非常にわかりづらいものになりました(笑)。
まあ一種の狙いではありますが。
さて、修学旅行のお話はまだ続きます。
それでは次回にて。