嫌悪の証

葵「…………暇だな」
涼「……修学旅行は夜が退屈だからな」
葵「………あ」
いい事思いついた。
葵「なあ、お前、怖い話持ってる?」
涼「ああ…あるっちゃあるけども」
葵「よし、怪談でもやるか」
涼「……2人で?」
葵「さすがにそれは心細い……よし、和佳奈さん達も誘うか」

コンコン。
綾「はい」
涼「涼だけど、少しの間だけど時間、ある?」
綾「ええ」
涼「和佳奈さんは?」
和「え、ええ…大丈夫ですけど」
涼「じゃあ、俺達の部屋に来てほしいんだけど」
綾「わかりました」

涼「呼んできたぞ」
葵「サンキュ」
綾「何をするんですか?」
葵「まあひらたく言うと、怪談だよ」
和「か…怪談…………」
和佳奈さんが怯えた目をする。
涼「大丈夫、怪談をするとお化けが出るってわけじゃないし、それにずっとやるわけじゃないし、大丈夫だよ」
綾「は、はあ………」
和「……………」
葵「和佳奈さん、顔色悪いけど、大丈夫?」
和「え……ええ………………」

葵「さてと……俺から行くとしますか………あ、電気消して」
涼「あいよ」
部屋の中が真っ暗になる。
葵「そうだな………これは俺が体験した話だけど……………」
『……………ふぇっ………ぐす…っ…………っく……』
誰か泣いてる!?
すぐさま電気をつける。
そしてメンバーの顔を見る。
涼は泣いていない。
藤原さんも。
無論、俺も。
和佳奈さんの方を見る。
思いっきり泣いていた。
和「ふええっ……ひっ…く………ふぅ…っく……」
ぽろぽろと涙が流れていく。
……まだ言ってもいないのに。
涼「…………葵」
葵「な、なんだよ…」
これじゃ俺が泣かしたみたいじゃん。
涼「つーかどう見てもお前が泣かしたんだろ」
……ごもっとも。
綾「それにこの怪談をやろうとしたのは篠原さんじゃ…」
……ごもっとも。
藤原さんに言われるとは思わなかったが。
和「ぐす……うっ……ひっく………ぇん………ふえっ……」
2人に言われている間、和佳奈さんは泣きっぱなしだった。
葵「と、とにかく和佳奈さんを慰めるから、2人は藤原さん達の部屋に行ってくれ」
涼「…嫌われないようにな」
……すっげえ不安。

葵「和佳奈さん、ごめん…」
まさかこんなに怖い話が嫌いだったとは。
和「ぇっ…………うっ……ひ…………っぐ……すっ……ふぇ……」
………泣き顔もかわいいな。
そうじゃなくて。
どうやって慰めようか。
…………………………………………………………これしかないな。
きゅっと和佳奈さんを抱いた。
うわっ、細いな〜。
そうでもなくて。
葵「よしよし……」
左手を和佳奈さんの背中にまわし、右手で和佳奈さんの頭を撫でる。
しばらくすると、泣き声も次第におさまってきた。
葵「ごめんね、和佳奈さん……」
すると、和佳奈さんは俺の胸に顔をうずめたまま首を振った。
葵「じゃあ……どうすれば………」
和「…………パフェ」
葵「え?」
和「今日見た所にあった苺のパフェ」
葵「それで許してくれるんですね?」
和佳奈さんはこくこくとうなづく。
葵「わかりました。俺のおごりで食べてください」
和「本当ですか?」
ぱあっと和佳奈さんが明るくなった。
………………………………嘘泣き?
だが、頬の辺りには涙の痕があった。
葵「罪滅ぼしですから、本当ですよ」
和「じゃあ、明日、早速行きましょう」
……………確か、苺のパフェの値段………………2000円…………………。
……………みやげ代から削るか。

後書き

うーん………(苦笑)。
今回のポイントは和佳奈の泣きですね。
かわいい泣き方を考えてみました。
怖い話が大嫌いという設定は和佳奈というキャラを作るのに必要不可欠なものだと考えています。
怖い話が好きな女性って割といますからね。
それでは次回にて。