※2年程前に自動車学校の学科制度が変更されましたが、この話では以前の学科制度で進めていきますのでご了承ください。
葵「なあ」
涼「あん?」
葵「免許取りたいんだけど」
涼「なんだ、高校ん時に行ってないのか」
葵「あのな、こちとらこの大学受かるためにひたすら勉強したんだ。んなヒマじゃなかったんだよ」
涼「ふーむ……とりあえず自動車学校へ行ってこい」
葵「とりあえずと言っても……クルマのクの字も知らねえんだぞ」
涼「じゃあ、特訓だ特訓。俺の家のクルマ持ってくから」
翌日、川原の近くにて。
涼「うーし、ここならクルマも通らないし、人もほとんどいないから安全だ」
葵「何をやるんだ?」
涼「クルマを走らせるんだよ。お前が」
葵「俺が!?」
涼「俺が運転したってどうしようもねえだろ」
葵「しかし俺、運転した事ねえぞ」
涼「そりゃ誰だって最初はそうだ」
葵「………………めっちゃ不安や」
涼「誰だってそうだ。さ、乗れ乗れ」
葵「……おい、なんでペダルが3つあるんだ」
涼「…………わざとボケてんのか?」
葵「んなわけねえよ。なんだ、この一番左の」
涼「クラッチペダルだ」
葵「クラッチ?」
涼「ひらたく言うと…………………………なんて言やあいいんだろ…」
葵「踏まないとどうなるんだ?」
涼「エンストするんだ」
葵「エンストって止まっちまうんだ」
涼「エンジンストップって言うんだから止まるわな。で、それが起きないようにクラッチがいるんだ」
葵「成程」
涼「ほれ、キーを刺し込んでひねれや。クラッチ踏みながらな」
葵「おっ、エンジンが動いた」
涼「さて、まずは前進させるぞ。ギアを1速へ」
葵「どうやって?」
涼「クラッチを踏みながら、シフトレバーを左上へ」
クイッ、と1速へ入れた。
涼「うーし、右足を右のペダル、アクセルペダルを踏むんだ」
葵「ん」
ベタッ
途端、クルマが悲鳴を上げたかのようにうなりをあげた。
涼「踏みすぎや!右足ちょい浮かせ」
葵「ああ」
先程よりはうなりはおさまった。
涼「うし、今度はクラッチをゆっっっっっっっっっっっっくり離せ」
葵「なぜにそこに念を押す?」
涼「最初で一番難しいとこなんだ」
葵「じゃ、行くぞ」
のろのろではあるがクルマは前進した。
涼「よし、今度は止まるぞ。真ん中のブレーキペダルを踏め」
葵「わかった、よっ」
その直後、
ガクンッッッッッッッブスッッ
葵「な、何だ何だ何だ!!??」
涼「お、お前………ブレーキどっちの足で踏んだんだ」
葵「左」
涼「ゲーセンのドライブゲームと一緒にすんな―――っっ!!」
葵「え、いやだってカートで左足ブレーキとかすんだろ?」
涼「それは熟練者がやるんだよ。トーシロは右足が基本だ。それにクラッチはどーすんだ」
葵「あいよ」
しばらく発進と停止を繰り返し、だいぶ慣れてきたようだ。
涼「エンストはよく起きるけどな」
葵「誰に言ってんだ…………」
涼「うし、今度はシフトアップだ。シフトレバーを2速に入れろ。クラッチ踏みつつな」
葵「ああ」
今度はスムーズにいった。
涼「続けて3」
葵「あいよ」
これもうまくいく。
涼「おし、止めて」
葵「あいよ」
停止。
涼「だいぶ慣れてきたな。後はまあ何度もやって覚えるんだな」
葵「ああ」
涼「よし、じゃあもういっちょやって終了だ」
葵「あいよっ」
ブスンッ
涼「3速のままで発進すんな―――っ!!」
葵「おーい、涼」
涼「んだ?」
葵「講習受けたけどハンコ押してもらえなかったんだが」
涼「……………………寝てたろ。お前」
葵「ああ」
………………………………………………どうして俺はこいつの友人になってしまったのでせうか。