最後の大学祭

涼「いよいよオーラスか……」
綾「結構長かったですね」
葵「演劇にケーキ屋、それにオカマバーか」
涼「………やなモノ思い出した」
和「それで、今年は何をやるんですか?」
葵「………逃げ出すなよ、涼」
涼「なんだ、また去年のようなロクでもないようなシロモノか」
葵「…まあ、似たようなシロモノだな」
涼「似たような……と言われてもオカマバーはオカマバーとしか言いようがないんだが」
葵「じゃ、言うぞ」
涼「どうぞ」
葵「……………ファミレスだ」
涼「………………はあ?」
綾「ファミレスって……」
和「あのファミレスですよね?」
涼「ファミレスのどこがオカマバーと似てんだよ」
葵「…………男全員がウエイターだ。そしてこれが衣装」
葵がばっと取り出したのは……、
涼「………なんだそのフリフリなエプロンは」
綾「これ、フリルが凄いですね」
和「かわいい衣装ですけど………まさかこれを葵君と涼君が!?」
涼「なんでこんなア○ミラみてえな衣装着なきゃなんねえんだよ。こういうのは綾さんと和佳奈さんに着せるシロモンだろ!着せたら間違い無く鼻血が吹き出る程かわいいだろうけどよ」
葵「……はい、そういうわけでやる事になったから」
涼「お前はそれでいいのか!?こんなモン着なきゃなんねえんだぞ!?」
葵「…………強制だ」
涼「誰のだよ?俺が文句言ってきて」
葵「女子全員」
涼「……………………綾さん……和佳奈さん…」
綾「……だって………演劇の時かわいかったですから…」
和「それにオカマバーの時も………」
涼「……もし…………やらなかったら……どうなるんすか…?」
葵「………ご想像にお任せします」

で、大学祭当日。
涼「…………」
綾「…………」
葵「…………」
和「…………」
涼「…………なんで開店前だっつーのにこんな人が並んでんだっ!!」
綾「……すごいですね」
葵「こりゃすごい事になるな」
和「並んでる人、女性が多いですね」
涼「…俺か。俺見たさに来てんのか」
葵「……このア○ミラのようなコスでか」
涼「お前は似合わないな」
葵「いや、似合うお前の方がおかしいと思うが…」
綾「それじゃ頑張ってくださいね」
和「私達は調理の方ですから」
涼「はあ………今日はとんでもない事になりそうだな……」
葵「ほい、これ」
涼「……ヘリウムガス」
そこまで徹底する気か。
葵「今年でラストなんだ。有終の美を飾ろう」
涼「………やな有終の美だな」

で、オープン。
ぞろぞろと客がテーブルに座る。
ただテーブルの数が4つと少ないので多くの客が待つ形になった。
涼「なんだ、少ないな」
葵「おととしのケーキ屋は忙しすぎたからな。ゆとりを持つために減らしたんだ」
涼「にしても4つというのは少なすぎないか?」
葵「なあに、席に座って待つより、店の前で並んで待つ方が実はイライラしないんだ」
涼「そんなのいつ知ったんだか…」
葵「うし、じゃそろそろ客の注文聞いてこい」
涼「お前がいけ。お前もウエイターなんだ」
葵「……………」
涼「……………」
涼・葵「…最初はグー!ジャンケンホイッッ!!」
涼かグー、葵がパー。
葵「いよっしゃ!!」
涼「くっそー……」

涼「いらっしゃいませ〜♪、ご注文はお決まりですか?」
客「あ、じゃあコーヒーとオムライス」
涼「はい、かしこまりました」
別の客「じゃあ、俺はロシアンティーとビーフシチュー」
客「はい、かしこまりました。コーヒーが1点、オムライスが1点、ロシアンティーが1点、ビーフシチューが1点でよろしいですね?」
客2人、うなづく。
客「かしこまりました。それではごゆっくりどうぞ♪」

涼「………コーヒー、オムライス、ビーフシチューにロシアンティー」
葵「……お前はジキルとハイドか。」
涼「なんで俺がこんな事しなきゃなんねえんだよ」
葵「…………似合ってたがな」

涼「ぐわっ!」
注文中にお尻を撫でられる。
反射的に回し蹴り炸裂。
涼「セクハラだ〜」
漫画やアニメなら滝のような涙を流しているところだ。
何が悲しくてセクハラされるんだか。
葵「俺、何もやられてないぞ」
涼「………なんで俺ばっかり」
葵「そりゃお前がアイドルだからだ」
涼「………嬉しくねえ1日限りのアイドルだな」

涼「お…………終わった……」
葵「あー、やっと終わったか」
涼「結局開店から閉店までずっとだったな」
葵「売上は間違い無くトップだな」
綾「お疲れ様」
涼「綾さん、お疲れ様」
和「おととしのケーキの時よりも材料を多くしたのにカラッポでしたよ」
涼「だろうね。なんか100メートルぐらいの行列ができたって話だけど」
葵「そういや客の男女割合ってある?」
綾「えっと、ちょうど5:5の割合でした」

涼「…………ちょっと待って、女性が俺目当てってのはわかる。男はどういうこった?」
葵「そりゃ…………………」
和「ですよね…………………」
綾「………………」
涼「……………明日、休んでいい?ファンレターが俺の下駄箱に入っているのが目に見えるから」

涼「頼む、綾さん」
綾「これを……ですか?」
渡したものは先日のファミレスの衣装。
涼「綾さんが着てみればかわいいと思うんだけど」
綾「………」
涼「……俺に着させようとしたのは誰?」
綾「うー……わかりましたよ…」

綾「ど、どうですか?」
涼「……ああ、思ったとおり、めっちゃかわいい」
綾「そ、そんな事は……」
涼「赤くなる必要はないさ。元がいいし」
綾「……ありがとうございます」
涼「さ、そういうわけで」
綾「え?」
涼「晩御飯、作ってね」
綾「こっ、この格好でですか!?」
涼「うん」
綾「でも、これはウェイトレス用ですよ!?」
涼「………………だめ?」
綾「……もう……わかりましたよ」
涼「……とかいいつつ、何で嬉しそうなの?」
綾「そっ、それはその………着てみたかったんですから」
涼「……だろうね」

後書き

俺は女装フェチではありません(笑)。
そうでも言わないとさ(笑)。
さて、今回にて大学祭は完結となります。
この物語のクライマックスが近づいています。
悔いのないようにやっていきたいと思います。
それでは次回にて。