聖夜の鐘

和「葵君……ちょ、ちょっといいですか…?」
葵「?何、和佳奈さん」
和「えっ………と………その……………」
もじもじしながら何かを言おうとしている。
…何だろう、一体。
和「………今月の……24日、ヒマですか…?」
葵「24日…」
………ああ、クリスマスイブか。
葵「うん、ヒマだけど」
和「も…もし、良かったら………私の家で……クリスマス………過ごしませんか?」
最後の辺りは小声になっていた。
葵「うん、いいよ」
和「本当ですか?」
ぱあっと明るくなった。
こういう和佳奈さん、かわいいなあ…。

綾「あ、涼さん」
涼「綾さん、何?」
綾「24日ですけど、用事…あります?」
涼「ないけど?」
綾「もしよろしければ、私の家で過ごしませんか?」
涼「別にいいけど……」
綾「良かった……」
?……24日ってなんかあったっけ……。
まあ、綾さんが喜んでくれるならいいけども。

終業式が終わり、冬休みとなった。
葵「涼、お前24日、藤原さんと過ごすんだって?」
涼「ああ」
葵「ああって………お前、24日が何の日かわかってるのか?」
涼「え?」
すっとんきょうな声が出た。
葵「………まあ、お前らしいといやあお前らしいけど」
涼「だから、何だよ」
葵「………やっば言わない」
涼「えーっ!さんざん言っといてそれかよ!」
葵「まあ、当日を楽しみにしてろや、それじゃな」
葵は自分の家路へ向かった。
涼「24日……ねえ」
何か…………………………あったっけ?

で、肝心の24日が来た。
結局、今日は何の日だろう。

さて、準備もできましたし、和佳奈さんの家に行きますか。
………涼のやつ、今日がクリスマスイブって事、わかったかな?
…………………まあ、あいつの事だから結局わからずじまいか。

綾「あ、涼さん。お待ちしていました」
涼「うん、ところできょ……ぶえっくしっ!」
くしゃみが出た。
誰か、噂してんのかな……。
綾「今日はちょっと寒いですからね。それではあがってください」
涼「うん」

喜「葵さん、お待ちしていました」
葵「あ、喜久子さん。こんばんは」
和佳奈さん…上かな。
葵「えーと、和佳奈さんは?」
喜「和佳奈さんは今買い物です」
ん、そっか………。
喜「ふふ、すぐに戻ってきますから」
う、読まれてるな。

…………結局のところ、今日は何の日だろう………。
綾さんに聞いてみるか。
涼「ねえ、綾さん」
綾「はい?」
涼「今日って、何の日?」
綾「………………え?」
涼「いや、だから、今日は何の日かなって………」
綾「…………ふふっ…」
綾さんはくすっと笑った。
涼「え?」
綾「…涼さんらしいですね」
涼「葵にも言われたよ、それ。で、今日は一体何の日?」
綾「今日はクリスマスイブですよ」
涼「…………………………………あっ!」
綾「……ふふっ、涼さんたら…」
綾さんがくすくすとさらに笑う。
………今日はクリスマスだったのか………。
………………………………………………ってことは…………。
……………………………………俺は綾さんに誘われたって事!?
………………………………ありがたい………。
秋ん時に下着姿を見た事を怒っていないし、ありがたいよ、ほんとに……。

和「ただいま帰りました」
葵「和佳奈さん、お帰り」
和「あ、葵君。もう来ていたんですね」
葵「うん…あ、持とうか?」
和「お願いします」
和佳奈さんの持っていた荷物を持つ。
割と重い。
結構買い込んだようだ。
袋には近くのスーパーのロゴマークがあった。
どんな料理を作ってくれるのだろうか。

綾「お待たせしました」
綾さんが持ってきたのはクリームシチューだった。
それを一口。
…………う、うまい。
綾「ど…どうですか」
涼「すごくおいしいけど、これは、綾さんが?」
綾「はい」
すごくおいしいという言葉に喜んでいる。
手作りかあ………。
涼「こんなうまいシチュー、はじめてだよ」
綾「良かった………」
信「いつも作っているのじゃが、今回はいつになく真剣じゃったからの」
綾「お、おじいちゃん……」
綾さんは真っ赤になった。
……………嬉しいなあ…。

喜「お待たせしました」
………あれ?
和佳奈さんが作るんじゃ?
葵「え、和佳奈さんが作るんじゃ……?」
和「い…いえ、それが……その…………」
喜「ふふ、和佳奈さん。もう少し前に料理を練習するべきでしたね」
和「き、喜久子さん………」
……ああ、そういうことですか。
葵「んー、でも……和佳奈さんの手料理、食べたかったな」
和「葵君………」
喜「ふふっ、和佳奈さんの上達は愛かもしれませんね」
和「もう……喜久子さん……」
和佳奈さんは真っ赤っ赤になっていた。

後書き

クリスマスネタです。
和佳奈は料理があまり上手ではないのは綾が料理が得意分野になってるからです。
がんばってうまくなろうと料理をしているのってかわいらしいじゃないですか。
次回は、お正月か…冬の章の前日とかですかね。
それでは次回にて。