葵「っしゃ!体育祭だ!」
涼「……朝っぱらからテンション高えな」
葵「だって、女子だよ、女子」
涼「女子?」
葵「ブルマだが」
涼「……何ぃ!?」
葵「今年はジャージ禁止になってるが」
涼「……ってことは」
葵「そう……。藤原さんと和佳奈さんの御姿が拝めるって寸法だ」
涼「ブルマの色、何色だっけ」
葵「ズバリ、赤!」
稲妻が走った。
そして悶えた。
涼「あ……赤ブルマとはマニアックだ………」
葵「普通は紺なのに……ここの学校の規律考えた奴に拍手喝采モンだよ」
そして、御神体の登場である。
パンパン。
2人は手を叩き、拝む。
綾「そ、そんなに見ないでください……」
和「葵君のえっち……」
2人同時に両手でブルマの辺りを隠す。
……ブルマもいいが、そこから出ている生足も捨て難い…………。
涼「今日は燃えるな」
葵「あったりめえよ」
綾・和「…………」
男というのはこういうものなのだろうかと思った。
ここの学校は赤組、青組、黄組といった対抗戦はなく、ただ純粋に楽しむためのものである。
よって、熾烈な争いはなく、ほのぼのとしたものである。
ただし、男の意地とプライドは別である。
涼「最初のプログラムは100メートル走か」
葵「あ、俺が出るんだった」
葵はすぐさま集合場所に行った。
綾「篠原さんは、足は速いんですか?」
涼「ああ、あいつは通信簿で体育ずっと10だからな」
和「すごいですね……」
涼「でもあいつ、帰宅部なんだよな…」
和「どうしてですか?」
涼「野球にサッカーにテニスに卓球、あちこちからスカウトがあったからな、部活は夜遅くまでやるからかったるくて入らなかったそうだ。ま、あいつらしいけども」
和「葵君らしいですね」
涼「さて、始まったみたいだけど、あいつは……………お、いたいた」
和「8番目ですね」
ふと、葵の隣を見た。
…あいつ、どっかで……………。
涼「げ、陸上部の春日だ」
和「確か、県大会で1位の……」
涼「いくら10でも陸上部では歯がたたんな」
和「そんな………」
…………………あ、待てよ。
涼「これなら勝てるかも」
和「本当ですか!?」
涼「ああ。おーい、葵っ!」
遠くから涼の声がした。
葵「なんだ〜!?」
涼「もし、1位とれたら、和佳奈さんが膝枕してくれるって」
葵「何ぃっ!?」
やる気に火がついた。
よーし、やってやるぜ。
和「き、如月君……」
涼「ああでも言わなきゃあいつはやる気出しませんから。どうせ負けるでしょうけども」
和「……でも、葵君には勝ってほしいです………」
…………やれやれ。
そして葵の順番が来た。
よーい、ドン。
奇跡が起きた。
ラスト3メートルで陸上部が勝っていたが、ラストスパートで見事に葵が逆転した。
涼「おー、すっげえな………あ」
和佳奈さんの方を向いた。
涼「膝枕の件、よろしくお願いします」
でないと俺がやられる。
和「仕方がありませんね………」
その割には嬉しそうな顔だった。
涼「次は……女装競争、か」
俺の番である。
涼「やれやれ、なんで女装して走んなきゃなんねえんだか」
つーか何で女装競争という奇天烈な競技があるんだか。
葵「なあに、恥ずかしいなんて思うから恥ずかしいんだ。思いっきりがんばれば、どうってことはないぞ」
涼「……和佳奈さんの膝枕に寝っ転がって幸せになっているお前が言ってもあまり説得力がないな」
薄化粧でいいか………。
カツラ……はいいか。
ほい、完了。
さて、グラウンドへ……あ、先生だ。
……………なんで頬を赤く染めてんですか。
俺がグラウンドに出た瞬間、観客からざわめきが起きた。
しかも男女からである。
一体なんなんだ。
葵「おーい、涼」
涼「んだよ。そんなに変か」
葵「俺がフラれたら、俺と付き合ってくれ」
涼「………作者はホモはやらんそうだからな、却下」
昼休みが終了し、午後の部だ。
涼「俺らが出るのは……騎馬戦くらいか」
葵「おーし、ラストだ。気合入れていこうや」
そして騎馬戦が終了した。
だが、やっている最中、ハプニングが起きた。
帽子をとられ崩れ方を間違え、ケガをした。
一緒の騎馬だった葵もケガをした。
俺は膝をすりむき、葵は肘をすりむいた。
涼「痛てて……」
綾「大丈夫ですか?」
涼「まあ、なんとか。だけどもこれは……」
膝はおろかスネのあたりもすったようだ。
綾「薬、持ってきますね」
涼「いや、このぐらいだったら」
綾さんを止めようと、腕を掴んだ。
が、強すぎた。
綾さんはバランスを崩して、こっちに倒れた。
涼「痛っ!」
綾「きゃあっ!」
痛みで目をつぶったが、すぐに痛みはおさまった。
なんか、のっかってる……。
ああ、綾さんか。
そう思って目を開けると、
綾「……………」
綾さんの顔が間近にあった。
すでに綾さんは目を開けていたらしく、真っ赤になっていた。
涼「……………」
………この状況、どうすれば…。
と、とりあえず…。
涼「ご、ごめん……ひっぱって…」
綾「い…いえ……」
綾さんが離れようと起きあがる。
が、途中で止まった。
綾さんが真っ赤になりつつ言った。
綾「あ……あの……手を…………」
………手?
えーと……左手は……あ、何もつかんでいない。
で、右手は…と。
腕から手をたどっていくと……。
ああ、何だ。綾さんの胸をつかんでるんだ。
……………………ええ!!?
光の速さで手を離す。
涼「ご…ごめん……」
綾「い、いえ…」
……………………さらに気まずい。
………おとなしく薬を持ってきてもらおう。
涼「あ、薬…お願いします」
綾「は、はい」
綾さんはすぐに救護室へと向かった。
改めて右手を見た。
ちょいちょいと指を動かす。
…………柔らかかった。
葵「つっ!」
和「し、しみますか?」
葵「いや、このぐらいなら大丈夫」
消毒液を脱脂綿に染み込ませ、チョンチョンと傷口につける。
葵「……カッコ悪いとこ、見せちゃったね」
和「そんなことありませんよ。葵君、かっこよかった……」
葵「え、ほんと?」
そう言って、振り向いた、が。
ふに。
振り向き方が悪かった。
いや悪いのかいいのかわからないけど。
肘が和佳奈さんの胸に当たった。
……柔らかい。
……じゃなくて!
マッハ2の速さで胸から離れる。
葵「あ、ごめん……って痛えっ!」
無理に肘を動かしたために痛みが襲った。
和「くすくす……」
和佳奈さんは再び消毒液をつけた。
葵「………ご、ごめん」
和「…いいですよ」
涼「ふー、やっと終わった」
葵「うー、疲れた…」
和「お疲れ様」
綾「ご苦労様」
涼「さて、明日は代休で休みか」
葵「明日は筋肉痛になるな」
涼「確かに………」
翌日、葵の言う通り、ものの見事に筋肉痛に襲われたのは言うまでもない。