綾「涼さん、お風呂入りませんか?」
涼「え?」
まさか、一緒に?
涼「い、いいけど…」
綾「それじゃ、行きましょうか」
ここのホテル、風呂は個室ごとにはなく、俗に言う大浴場なるところがある。
無論、混浴なんてモノは存在しない。
…しかしまあ、綾さんからお誘いがあるなんて。
にしても、どうして和佳奈さんと………ああ。
葵とマッサージしてんだった。
それじゃあしょうがないよな。
で、到着と。
涼「綾さん、それじゃ」
綾「はい」
それぞれ浴場に向かった。
時間が遅かったのか、人はいなかった。
ほとんど貸し切りの状態だ。
気分いいなあ、こんだけ広い中で俺だけっつうのは。
いつもカラスの行水みたいだったからじっくり入るとしますか。
しばらくすると葵が来た。
涼「よお、遅かったな」
葵「しばらくマッサージを堪能してたんでな」
涼「いいよなあ……カップルってのは」
葵「そういう……」
そういうお前だって藤原さんと仲いいじゃん、と言いたいところだが言うのはやめた。
こういうのは自分で気がつかないと。
まあ、こいつはそういうのにずっと気がつかないタイプだが。
藤原さんの頑張り次第だな。
涼「そういう……なんだ?」
……なんとかフォローしないと。
葵「そういう茶化すのはやめろや」
涼「茶化していねえよ。うらやましいよ」
……心配すんな、じきにその苦悩は消えるから。
まあ、じっくりと見させてもらうとしますか。
涼「ん、じゃあ俺はそろそろ」
葵「ん、そっか。俺はしばらく浸かるから」
浴場を出て、タオルで拭いて、脱衣場を出て、入口に出る。
綾「あ、涼さん」
すると入口に綾さんがいた。
え、もしかして……。
涼「も、もしかしてずっと待ってて……」
綾「わ…私から誘ったんですし……帰りも一緒の方が…………」
………いい子だよな、綾さんは。
相手を想う優しさ。
それが綾さんの一番素敵なところだ。
俺はそんな綾さんに惚れたんだ。
涼「ありがとう、綾さん」
綾「どういたしまして」
涼「じゃ、行こっか」
綾「はい……」