あまい果実

梨「だいたい、何で苺狩りなんかに行くのよ。女の子じゃないんだから」
臣「…だったら来なくていいだろ」
梨「う、うるさいわね」
一同は麻雀サークル『十三不塔』の毎年の恒例行事である、苺狩りツアーに出発していた。
そもそも何故苺狩りなのか?
それはサークル結成の時の会話に遡る。

涼「そういえば、サークルの行事ってあるんですか?大会に出るとか」
芹「いや、まったく考えてないな。大会に出る事を目標としてないしね」
臣「何か作るか?大会以外で」
眞「大会以外って…麻雀にちなんだものってあるか?」
潤「うーん…苺狩りとかは?」
茜「何で苺なん?」
潤「いや、苺を取る時って摘むって言うだろ?麻雀のツモとひっかけてみたんだけど。取る時の指の形も似てるしさ」
芹「…うん。採用」
茜「はやいで!」
臣「えーっ!苺かよ!?」
芹「苺は嫌いかい?」
臣「嫌いじゃねえけど…説明を求められたら笑われるぜ」
涼「そしたら『来なくていい』って言えばいいじゃん。俺達だけで楽しむって寸法でさ」

そして、あれから2年経過になろうとしている今、結成時のやりとりが実行されていた。
女性陣は『来なくていい』という言葉を無視して強制的に参加している。
涼「ぼちぼち着きますけど、去年の所はやめてくださいよ」
芹「ああ、あそこは行かないよ」
梨「…あんたら去年何をしたの?」
涼「いや、俺は普通に食ったんだけど他が馬鹿みたいに食べ過ぎて怒られたんだ」

『そんなに食べたら実がなりません!』

涼「こんな感じで。んで臣のやつがとんでもない返事をしたんだ」

『うるせえ。苺狩りって書いてあるだろ』

涼「結局ビニールハウス4箇所全滅させたんだ」
梨「…あんたいくつ食ったのよ」
涼「俺は20個ぐらいだよ。他が60個ぐらい食ったか。臣は85個だったな」
臣「まだ食い足りなかったもんでまだ熟してないやつも食ったな」
涼「…『熟したやつは85』か」

で、到着。
臣「…さっき通ったら去年のところはやってなかったな」
涼「今日のところも来年はなくなるのかな…」
潤子「…まるでイナゴね」
まるで、というかイナゴそのものである。

芹「よし、二手にわかれて食べる事にするか」
眞「全員で9人か。女子と涼と芹禾、他4人にするか」
涼「それが無難だと思うな。臣がいると自分の分までなくなるからな」
臣「…俺はそこまで貪欲じゃないぞ」
未熟の苺まで食う男のセリフではない。

1時間後。
臣「お待たせ」
涼「やっと来たか」
梨「…あんたどんだけ食ったのよ」
臣「未熟なのを除いて100個だ。記録更新だ」
…店にとっては悪夢のような数字だ。

結局、臣のグループはビニールハウスを6棟程全壊にした。
芹「店の人、黒い帳簿に何か書いてたな」
涼「…また行けなくなった店が増えましたね」
果たしてあと2回苺狩りをできる場所があるのだろうか。
潤「…何か車の中が妙に臭うな」
正確には苺と練乳と汗の匂いだ。
ビニールハウスの中はちょっとしたサウナのような状態だった。
眞「どっかで風呂にでも入らないか?このままだと窒息するぞ」
梨「賛成。手も洗ったけどベタベタするしね」

数分後、スーパー銭湯があったので早速入ることにする。

女風呂の方にて。
梨「…アンタ、何バスタオルなんか巻いてんのよ」
潤子「ん、ちょっとね」
美「…太ったとか?」
潤子「違うわよっ!キスマーク!」
ばっ
太ったという誤解を解くため、バスタオルを一気にとる。
梨「なーんだ。キスマークか……お腹に?」
みっしりと潤子のお腹にキスマークの跡がついている。
美「涼さん…マニアックですね」

一方、男子はというと。
涼「…さすがにすごいな」
臣「国産とは思えねえな…」
潤「俺のもでかいけどさ、あれは規格外だよ」
眞「アメリカ人も真っ青だよな」
茜「あいつの彼女は大変やろな…」
芹「…全員で俺のを見るなって」
涼「しょうがないですよ。こんなにでけえとついつい見ちゃいますよ」
臣「…お、向こうになんかあるな」
向こうにあったのは椅子のようなものだった。
芹「ああ、あれは『まんじゅう蒸かし』だな」
茜「なんや?その『まんじゅう蒸かし』ちゅうのは」
芹「椅子に穴が開いていてその下から蒸気が出て暖めるんだ。痔に効くから『痔蒸し』とも呼ばれてるな」
臣「座ってみるか?涼」
涼「………まんじゅうを蒸かせるぐらいの蒸気を俺の肛門に当てる気か。というか俺は痔じゃないぞ」

お互いなんだかんだ色々あって風呂から出る。
臣「あー、さっぱりした」
梨「裸の付き合いってのも割と大切ね」
涼「…何です?俺の方見てニヤニヤして」
梨「ううん、何でもないの」
涼「…潤子さん、何か俺の事言いました?」
潤子「う、ううん。何も言ってないわ」
言ってはいない。
見せただけである。
奇妙な性癖を、だ。

後書き

今回のタイトルはスガ シカオから。
実はさて、書くかなと思ったらタイトルを考えておらず、急遽探してつけました。
ちなみにタイトルをつけた日にFF12をやっていたらタイトルと同じ『あまい果実』というアイテムをゲットした事をよく覚えています。
偶然というのはすごいものですね。
ひょっとしたら今後も偶然という副産物があるかもしれませんね。
それでは次回にて。