Destiny Lover

涼「さて、と…」
片付けを終えて、一息つく。
芹「これで終了だな」
涼「そうですね」
大学最後の日に2人でサークルで使用していた部屋の掃除をした。
涼「結局俺らが作ったサークルは俺らで終了ですか」
2年になっても3年になっても4年になっても入部する人は誰もいない。
芹「…まあトラブルも多かったしね」
涼「……すんません」
よくまあ停学とか退学とかの処置が取られなかったものだ。
…反省文は書かされたが。
芹「まあそういった出来事もいい思い出だよ」
涼「そう思ってくれると助かりますよ」
改めて教室全体を見渡す。
この4年間色々とあった。
涼「……もしここで芹禾さんと出会わなかったらどうなってたでしょうね」
芹「…正直なところ、俺にはわからない」
涼「そうですね。俺はここの教室をのぞいたという選択肢を選んだわけですから」
また別の人生を歩んでいただろう。
それが幸か不幸なのかはわからない。
芹「…涼は『運命』を信じるかい?」
涼「『運命』…」
少し考えた。
涼「多分……信じてると言うか…あるんだと思ってます」
芹「………」
涼「まったく違う道でもいつか交差する日がやってきて、それに対して真正面にぶつかっていく。それが運命なんじゃないかと思います」
芹「……」
涼「この『運命』で……俺は芹禾さんと出会って、臣や眞一郎、茜に潤、梨花さんと美夏さん、そして……潤子さんに出会えました」
芹「……」
涼「俺はこの『運命』に……感謝しています」
芹「そう…か…」
涼「……さて、帰りましょうか」
芹「ああ、そうだね」
2人は教室を後にした。

大学を出て、突き当りのT字路に着く。
芹「…さて、ここまでか」
涼「…そうですね」
芹禾は左の道。
涼は右の道。
共に歩く事の無い道。
お互いの人生がすれ違う。
芹「明日は出られないけど、結婚式は頑張れよ」
涼「はいっ」
立ち止まらず、一気に家路へと走った。
そう、明日は俺と潤子さんの結婚式がある。
この大学4年間の最後のイベントが。

後書き

今回のタイトルはギターフリークス&ドラムマニアから。
小学校、中学校、高校と振り返っても最後の日って覚えていないんです。
まあ卒業式は覚えてますが、その一日前は一切記憶にないです。
大半は午前中に終わりとか休みとかだったりしますし、翌日が最後のイベントですから覚えている方がおかしいかもしれません。
でも、いわゆる『授業』では最後だから覚えておきたかったというのが本音です。
妙なトークになりましたが(笑)、ラスト3本の1本目でした。
それでは次回にて。