Dreamin'Sun

梨「…………もう1回言ってほしいんだけど」
潤子「その……だからね………まだしてないの…」
梨「………はあ」
梨花は深くた溜息をついた。
告白してから1ヶ月は経とうとしているにも関わらず、まだデートをしていないとは。
梨「なんでしてないの?いくら涼が馬鹿でもデートのお誘いの1回ぐらいあるでしょ?」
潤子「それがね…すごい急に恥ずかしくなって断っちゃうの…」
……べしっ。
潤子の頭にチョップ。
潤子「何すんのよ」
梨「原因も何もあんたが断っちゃうからじゃない」
潤子「どうしても涼君とだと妙に意識しちゃってデートどころじゃなくて…」
梨「………じゃあ、こういうのはどう?みんなで旅行に出かけるっていうのは」
潤子「あ、それならなんとか」
梨「よし。じゃあ芹禾達を誘うからね」

梨「OKだって」
潤子「本当?良かった…」
梨「あ、そうそう。海へ行くから水着、用意しといてね」

潤子「え―――――――っっっっ!!!!」
梨「もうあいつらも誘いに乗っちゃったからもう後にはひけないんでヨロシク」
潤子「………」
後悔。
梨花が去り、あたりにはその2文字しか残っていなかった。
…中止にならないだろうか。

涼「いやー、いい天気だ」
恐ろしいまでに晴れていた。
芹「海に行くにはもってこいの天気だね」
臣「よし、全員いるみたいだし早速いくか。涼は運転ね」
涼「あいよ………ってちょっと待て」
茜「遅いで、ノリツッコミ」
辛口の評価だ。
涼「なんで俺運転すんだよ。せっかく潤子さんといちゃいちゃできるっつーに」
潤「それがいかんっつーんだ」
梨「あんたらが車の中でいちゃいちゃしてたら車ん中おかしくなるわよ」
涼「あんだよ、いちゃいちゃ禁止令かよ」
眞「車の中だけだ。海へ着いたらそれも解禁だよ」

で、到着。
茜「……えらいあっさりしとんな」
眞「ネタがないんだろ」
…うるさいな。
芹「とりあえず、部屋割りを決めよう。俺と潤と茜、臣と眞一郎、梨花と美夏、あと涼と潤子ね」
潤子「ちょ、ちょちょちょっと」
芹「なんだい?」
潤子「どうしてあたしと涼君なのよ」
涼「……潤子さん…俺と一緒の部屋だと嫌?」
潤子「そっ、そんなことはないわよ」
涼「じゃ、決まり」
潤子「……」
茜「芸術の域やな、この流れ」
芹「さてと、もう夕方だし、海水浴は明日からってことで」
眞「ああ、別にいいぜ」
涼「じゃ、部屋に荷物置いて晩メシ……あ、風呂はどうなる?」
芹「この人数分の風呂は無いって。近くに銭湯があるから」

晩御飯が終わり、全員で銭湯へ。

カポーン…
涼「あー、広々してていいなあ…生き返るなあ…」
臣「ほんと、極楽極楽…」
茜「……どっちや」
生き返るのと極楽はまったく逆。
眞「……どっちでもいいか」
気持ちいい事にゃ変わりなし。
芹「ふー……」
茜「芹禾、そこ……熱湯やぞ」
芹「そうかい?俺はちょうどいいんだが…」
どういう視点から見ればぐつぐつと煮えたぎってる熱湯がちょうどいいのやら。
涼「さてと、明日からだけど、海行くって事意外なんも決まってないなあ」
潤「あ、俺パラソルとビーチボールは持ってきたぞ」
涼「お、助かるよ。このままだと泳ぐだけだからな」
茜「泳ぐといえば、女子らの水着、どんなんやろな」
臣「梨花のは多分…ハイレグっぽいやつ」
涼「え、そうなの!?」
臣「いやー、目の保養になるわ」
その途端、反対側から石鹸が飛ぶ。
臣「ぐおっ!!」
見事臣にヒット。
梨「ちょっと臣!変な事言わないでよね!」
臣「んな事いったってハイレグはハイレ…ぐわっ!!」
再び石鹸来襲。
涼「んー、潤子さんはぁ?」
潤子「ちょっ、何で私にふるのよ!?」
涼「だって、気になるし」
潤子「あ、明日までのお楽しみよ」
涼「はーい」
梨「…まあ、潤子が何着ても私の方が胸あるけどね」
潤子「ちょっ!!!!!何言ってんのよ!!!!」
梨「涼の事だから小さめが好みなんだろからねえ、こういう手に収まるぐらいが…」
潤子「りっ、梨花!どこを触って…!」

茜「…ほな行こか」
眞「そうだな」
潤「うーい」
臣「あいよ」
芹「涼、最後だからその血の海と化した風呂はちゃんと流しておくように」
涼「……おう」
至福の表情を浮かべながら自分の鼻血で血の海と化した風呂にぷかりと浮いていた。

そして夕食が済み、就寝となる。

……君、……う君。
涼「う…ん……?」
誰かの声で目が覚めた。
その声の方向を向くと、潤子だった。
涼「どしたの?」
辺りを見回す。
まだ朝にはなっていない。
というよりまだ深夜だ。
潤子「な、何か音しない?」
涼「音?」
耳を澄ます。
すると、天井から何か音がする。
シュル、シュルと何か這っているような音だ。
涼「…ああ、アオダイショウだな」
潤子「アオダイショウ?」
涼「ようするに蛇」
潤子「へ、蛇!?」
涼「ああ。確か田舎には天井裏にアオダイショウがいたりして、ネズミとかを食べてくれるんで家の守り神みたいなもの…」
涼の解説を聞いた途端、潤子の顔がさあっと青ざめる。
涼「…潤子さん、蛇苦手?」
潤子「好きな人なんて少数派でしょ!?」
涼「ま、それもそうか。で……どうする?」
潤子「……どうするって?」
涼「音の正体が蛇とわかって、安心して寝れる?」
潤子「……」
首を振る。
涼「だろうね。俺も子供の頃にこういうとこで寝ようとしたけど全然寝れなかったからな」
潤子「その時はどうやって寝たの?」
涼「母さんの布団で一緒に寝た。誰かと一緒に寝ると安心できるみたいでね」
潤子「……」
涼「…潤子さん、一緒に寝よっか?」

潤子「いやちょっとでもそれなりに心の準備というそれなりの心構えが必要なわけで」
涼の一言にかなり動揺した。
涼「別にヤルってわけじゃないんだし。それに潤子さん一人で寝れる?」
潤子「………ううん」
すでに潤子に選択の余地はなかった。

潤子「へ、変なトコ触ったらただじゃすまないからね」
涼「はいはい」
と、言ったそばから
ぎゅ
いきなり抱擁。
潤子「りょっ、りょっ、涼君!!」
涼「変なトコは触っちゃいけないんでしょ?だったら普通のトコは触ってもいいし、抱いてもいいわけだ」
潤子の条件が甘かった。
一見、虫一匹も通れない鉄壁とも言える城門を見事にすり抜けた。
涼「潤子さんの身体……いい匂いがする」
潤子「……ばか」
涼「…結構細いんだね」

ドカッ

肘撃ち炸裂。
潤子「涼君、それは失礼よ」
涼「ぐふっ…すんません」
肘撃ちによって発生した鼻血を抑える。

涼「潤子さん…眠れそう?」
潤子「…………」
返事がない。
潤子「…すー……すー…」
どうやら無事に寝れたようだ。
こちらもだいぶ眠気が来ている。
涼「おやすみ、潤子さん」

ミーン……ミー…
蝉の鳴き声で目が覚めた。
ゆっくりと目を開けると、涼の寝顔が至近距離にあった。
その途端、心臓の鼓動が早くなる。
…かわいい、と言うのだろうか。
だめだ、説明できない。
夢中になってしまう。
寝顔を見ている事で気づいたのだが、抱擁されたまま寝たようだ。
…もしも、このように一緒に寝ていなかったら果たしてこんなにぐっすりと寝れただろうか。
きっと寝不足のまま朝を迎えただろう。
潤子「涼君…」
涼の手をどかして、布団から出る。
そのまま横向きになっている涼の顔、頬に唇を近づける。
潤子「ありがとう…」
そして唇が頬に触れた。

眞「おう、おはよ」
梨「んー、よく寝れたわ。騒音とかないからね」
臣「あれ、芹禾達は?」
美「あ、ちょうど起きたみたいですね」
どすどすと何人かの足音がする。
芹「ん、おはよう」
潤「あとは涼と潤子だな」
茜「なんやまだ来てへんのか。いっちょみんなで起こしにいかへんか?」
そういった時、足音が。
涼「ういっす」
芹「お、来たか」
梨「どしたの?その頬」
涼「へ?」
梨「頬が何か赤」
潤子「わ――――っっ!!!」
電光石火の速さで涼の頬に潤子パンチ炸裂。
涼は家の壁を突き破って路上に飛び出る。
梨「…あんたまた何かやったわね」
潤子「………つい、その…ね、寝顔がかわいいから…」

ざざーん
眞「へえ、綺麗な海だな」
涼「それに人もそんなにいないし、遊ぶには最適だな」
芹「……涼、まだ安静してたほうが」
涼「なあに、このぐらいのケ…」
びゅうっ
あちこちから血が噴き出す。
涼「…すまん、しばらく横になってる」
ひょろひょろと隅に置いてあったビーチパラソルの下に倒れる。
ちなみにパラソルは潤が用意したものである。
梨「まったく。潤子も力の加減を知らないのよね」
梨花と美夏が着替えを終えてこちらに来た。
臣「…」
臣がちょこんとしゃがむ。
しゃがんだ目線の高さはちょうど梨花の…
梨「ちょっ、変なトコ見ないでよっ」
空手で言う前蹴り炸裂。
臣「いや一応俺の女だからそれなりにそういう部分を見てもいいという権利が」
梨「鼻血出しながらじゃ説得力ないわよ!」

涼「…楽しそうだな」
横になっている涼はちょっとさびしかった。
ふと、影が差し込んできた。
その影の根元を見ると…
潤子「…どうしたの?」
……いいアングルだ。
ちょうど下から見上げる形になっているためまあ絶景だこと。
赤のビキニというのも潤子さんらしい。
潤子「ば、馬鹿。じろじろ見ないでよ」
…そう言われても起き上がれないためどうしようもない。
梨「潤子ー、早く早くー」
涼「梨花さんが呼んでるな。行ってきなよ。もうちょいしたらそっちへ行くから」
潤子「うん。わかった……んしょっ」
涼「がふっ」
涼が突如、血を吐く。
潤子「りょ、涼君どうしたの!?」
一部始終を見ていた梨花は、
梨「潤子ー、あんた涼に向かって水着のお尻の食い込み直してたでしょう?」
潤子「あ」
当然、先程の『んしょっ』という部分がそうである。

午後になってようやく涼の体調は回復し(今朝のパンチのダメージは割と早く回復したが食い込み直しのダメージが深刻)、ようやくみんなで楽しめるようになる。

で夕方。
…ひどいというぐらいに早い展開だが気にしない方向で。
眞「あーあ、もう夕方か…」
臣「あっという間だったな。明日からまた学生か」
芹「まあ、もう少しすれば夏休みだ。それまで頑張ろう」
潤「よし、帰りの支度しようぜ」
涼「じゃあ早速…」
茜「おっと。お前さんはええで」
涼「え?」
芹「午後からようやく動けるようになったんだ。片付けは俺達でやるよ」
涼「そうか。すまんな」

波の方に歩く。
すると潤子がいた。
涼「潤子さん」
潤子「涼君…」
涼「綺麗だね。海」
潤子「うん」
涼「色々あったな…まあ特に潤子さんと寝たのが一番記憶に残るけど」
潤子「ば、馬鹿。そんなことだけ覚えないでよ」
涼「潤子さんは嫌だった?」
潤子「…………ううん」
涼「じゃ、いいじゃない」
潤子「…そう…ね」
涼「あ、そういえばデジカメ持ってきたんだ。記念に潤子さんの水着…」
潤子「ば、ば、ばかっ。そんなの撮らなくていいの」
慌てて潤子が水着を手で隠す。
涼「…あ。フィルム切れだ。ちっ」
潤子「ふふ…」
潤子が笑って、手を水着からどかした時。
パシャッ
潤子「え?」
涼「これはデジカメだよ。フィルムなんて入ってないよ」
潤子「じゃあ……」
涼「バッチリ撮れてます。潤子さんのかわいい水着姿」
その途端、潤子の顔がボンッと赤くなる。
潤子「だ、ダメーっ!」
涼「だーめ。せっかく撮れたのを消すわけにはいかない」
ぱっとその場から離れる涼。
潤子「かっ、返してよお!」
何をどう返せばいいのかわからないが、それしか言えず、涼を追う。

そしてその一部始終を見ていた他の人達はというと。
芹「潤、どう思う」
潤「…昔のマンガにしろドラマにしろこういう浜辺でカップルが走るシーンがあるけどさ」
茜「………実際にやるとなると『ひく』な」
眞「確かに…」
臣「さ、とっととあいつらも呼んで帰ろうぜ」

結局、水着の写真は消されること無く、涼の机の上にて印刷されたものが置かれている。

後書き

今回のタイトルはビートマニアUDXシリーズから。
これを書いてる時点でもう秋ですが(苦笑)、まだ小説では夏だす。
ちょこちょこと書き続けたため、かなりの時間を費やした気がします。
まだまだこのプロジェクトは続きます。
Infinityとまではいかないでしょうが長く続けていきたいものです。
それでは次回にて。