Fre@K $HoW

カレンダーを見た。
涼「そういや、ぼちぼち文化祭の準備が始まるな」
臣「そうか、もうそんな時期か」
眞「今年は何やるんだろうな」
涼「女装は勘弁してほしいな」
潤「結局同じだったりして」
茜「それはないやろ、同じじゃつまらんで」
芹「まあ、やる以上はちゃんとやらないとね」
今年の内容を推理していると、潤子、梨花、美夏の女性陣が入ってくる。
梨「ちょうどうまい具合に全員いるわね」
臣「文化祭か?」
梨「あんた達も同じ事考えてたみたいね」
潤子「今年はコレだって」
潤子が男性陣に紙を渡す。
紙にはモデルのファッションショーらしき絵が描かれている。
涼「…これは?」
梨「よく、パリとかミラノでやってるファッションショーがあるじゃない?それよ。あと、その服の販売もやるから」
眞「で、モデル役は?」
潤子「当然、涼君」
涼「えっ、俺がやるの?」
梨「当然よ、あんたが適役なんだから」
涼「…適役?」
梨「そ。今年も女装してもらうから」

涼「何―っ!!」
梨「今回はオカマのファッションショーよ」
眞「ははは、また今回も女装か」
臣「お前もついてねえな」
梨「…アンタ達、勘違いしてない?アンタ達も女装してもらうのよ」

男全員「うそーん!」
梨「そうそう、それとモデルウォーキングをマスターしてもらって女性の体型を作ってもらうためダイエットしてもらうわよ」
男全員「うそーん!!」

涼「めんどくせえ…」
太っているのなら痩せるのは健康的ではあるが、全員体重は標準のため、これ以上やせる必要は無い。
ちょっとしたボクサーの減量体験だ。
ただ、なんだかんだ言いつつも全員ダイエットに励んでいるのは、渋々言いつつ文化祭に取り組む学生と同じである。
臣「腹減った…」
早くも弱音が炸裂する。
だがそれは全員が思っている事。
梨「そう言うと思ったわよ」
梨花がやってきて、ぽいっと袋を渡す。
袋の中身は干し椎茸。
梨「それを口に含むのよ。ただ飲み込んじゃ駄目。口に食べ物を入れるから胃が勘違いして満足感を出すから」
臣「…文化祭が終わったら食わしてくれるんだろうな」
梨「当たり前よ。ちゃんとおごるけども、ちゃんと痩せるのよ」
男全員「はーい」
終わったら食える。
そのために男全員は頑張るのである。

一方、女性陣は。
梨「ファッションショーじゃ着替えは自分ではなく専属の人がぱっぱっと着替えさせるの。あたしらがそれをやるからマネキンで練習よ」
潤子「…男6人だから1人で2人分の着替えをこなさないと駄目ってことね」
美「それじゃ早速練習しましょう」
梨「じゃ、まずは脱がすところからね」
潤子はばっ、と素早くマネキンの上着を脱がした途端、動きが止まる。
梨「…何してんのよ」
潤子「こ、興奮しない?脱がすの」
潤子の呼吸が微妙に荒い。
梨「…何作者と同じ事言ってんのよ」
美「そういえば…終わったら晩御飯をおごるって言ったけど…何をおごるの?」
梨「ん、某チェーン店の牛丼」
潤子「安っ!」
しかも卵とかみそ汁とかもなさそうだ。
残りの売り上げは全て私欲のために使う予定だ。
美「お、お姉ちゃん…みんな怒るよ…」
梨「大丈夫よ。肉に飢えてる奴らは牛丼でも満足するでしょ」
潤子「……」
せめて、涼君にはもうちょっとおいしいものを食べさせてあげよう。
男性陣がひどくかわいそうに思えた。

文化祭前日。
梨「で、先日言ったように、減量とモデルウォーキングのマスターを頼んだけども、まずは減量できているかチェックさせてもらうわよ。まずは主役の涼」
涼「うーい」
しゅびっとメジャーを取り出し、涼の腰に巻く。
梨「……チッ」
涼「何ですか、今の『チッ』は」
梨「…何かムカツク」
どうやら今現在の涼のウエストは女性並のようだ。
基本的なダイエットだけでなく、部分痩せダイエットもこなした結果である。
涼「痩せたら痩せたで怒られるってどういう事ですか潤子さんって…うっ」
潤子からも睨まれる。
次々と体重をチェックしていく。
梨「よし、ダイエットは全員完璧ね。あとはモデルウォーキングよ。とりあえず全員歩いてみて」
男全員が動き出す。
その歩き方はテレビで流れるモデルの歩き方と同じだ。
梨「よしっ!全員完璧ね」
涼「あとは本番でちゃっちゃとこなして、メシをたらふく食うぞっ!」
男全員「おーっ!」
もはや文化祭がメインではなくなりつつある。
…あんたらには牛丼、あたしはブランド品だけどね。
梨花は顔には出ていないがほくそ笑んでいた。

そして文化祭当日。

そして終了。
涼「…手を抜くな」
すみません。

涼「あー、疲れた。というか腹減った」
臣「同感だ。ショーの時にもグーグー鳴ってたぜ」
芹「音楽がガンガンに流れてたから幸い聞こえなかったみたいだな」
もしかすると実際のショーも腹の音を掻き消すために流れているのかもしれない。
潤子「でも、文化祭だけでなく大きな行事の後って清々しいわね」
涼「…すごくいい顔してるね」
潤子の服の着替えの担当は涼と芹禾である。
新たな快感を得た気分であろう。
梨「服もほぼ全部売れたし、あとは、売り上げでブランド……あ」
男全員「…ブランド?」
梨花の口からこぼれ落ちた『ブランド』という言葉に男全員が反応した。
涼「…もしかして、売り上げをブランド品に変える気だったのか?」
臣「ほほう、おもしろおかしいプランじゃねえか、梨花」
文字通り飢えたオオカミ6匹が梨花を包囲する。
一方、包囲されなかった潤子と美夏は、
潤子「…逃げるわよ」
美「うん」
梨花は自業自得、身から出た錆だ。
救いようがないし、助ける義務はない。
助けようとしてもあのオオカミに勝てるわけがない。
2人はその場からぴゅうっと逃げた。
涼「さて、キッチリ落とし前をつけてもらわないとな」
臣「五体満足で帰れると思うなよ」
6つの手が梨花を襲った。
梨「いやあぁぁ―――っっ!!」

梨花をとある場所までひっぱってくる。
来た場所は、焼肉屋。
梨「いやあぁぁ―――っっ!!」
梨花が再度叫ぶ。
そのぐらい6人の食べっぷりは尋常ではない。
涼「すいませーん、カルビ15人前追加」
臣「あとハラミと牛タン10人前」
梨「食いすぎよあんたら…」
眞「生中おかわりー、あ、これも10杯ね」
梨「あんた飲みすぎよっ!」

翌日。
涼「うーす」
臣「おう」
たった一晩でものの見事に元の体重に戻った6人。
潤子「ものすごい食べたわね」
芹「いやー、食べた食べた」
潤子「で、売り上げの残りは?」
梨「…ジュースも飲めないわよ」
こうして、梨花の売り上げでブランド品を買い漁るという目論見は崩れ去った。
6人はある意味ヒーローだったのかもしれない。
梨「あたしには悪魔に見えるわよ!」

後書き

今回のタイトルはabingdon boys school(通称abs)から。
とりあえず女装は必須であろうと思って考えたのがこの作品でした。
女装ネタはイマイチ評判が悪いようですが(今のところ言われてはいません)基本的に書きたいものを書くスタイルですので目をつぶっていただけたら幸いです。
…別に女装ネタが好きであって女装が好きというわけではありませんのでその辺りはちゃんと理解をしてください(笑)。
それでは次回にて。