ゴーイングmy上へ

臣「ふーん、あの女にねえ……」
涼「知ってんのか?」
涼が二索を切る。
眞「有名だな。美人で頭もいい。言う事なしだ」
芹「結構近寄る男もいるみたいだが諦めてるみたいだな」
涼「……好みじゃないからか?」
臣「それはわかんねえけど、その内の1人に聞いたけどよ、『アレが怖い』と言ってたな」
臣が北を切る。
涼「アレ?」
臣「アレって何なのか聞こうとしたが、怯えた顔をして逃げちまった」
眞一郎が二萬を切る。
眞「気になるな。『アレ』って」
芹「まあ、俺達は涼の味方だ。妨害とかしないから」
芹禾が白をツモ切り。
涼「助かります。妨害なんてあったらさすがに大変ですから」
涼が九筒を切る。
芹「ただし」
芹禾の手牌が開く。
左から順に一筒の刻子、二筒三筒四筒の順子、六筒の刻子、そして八筒と九筒が2枚ずつ。
事前にリーチをかけており、ドラは二筒、裏ドラは九筒。
芹「麻雀では妨害するから。倍満ね」
涼「げ」

翌日。
潤「よお涼。おは……」
涼「…おう」
潤「なんだ、その目の下にあるドス黒いクマは」
涼「実はあの後、臣と眞一郎と茜と麻雀をやった。しかも徹マン」
潤「…寝てねえのか」
涼「ほんの1時間しか寝てねえ…」
潤「授業、大丈夫か?」
涼「大丈夫じゃないな。立ったままで寝ちまいそうだ」
潤「どうするんだ?」
涼「仕方ねえ、確か2時限に古典があったな。そこで寝る」
潤「ああ、確か古典の教授、寝ていても怒られねえし単位も取れるし」
涼「授業内容はわからなくなるが芹禾さんにノート借りれば問題は無い」

そして2時限。
涼「………眠い」
茜「せやろな。俺らも1時限来ないでその分寝とったし」
眞「お前の隣にいると俺らも寝ちまいそうだから離れさせてもらうぞ」
眞一郎と茜は端の方へと向かっていった。
涼「……さてと、とっとと寝て…」
女性が横にいた。
その女性は潤子だった。
潤子「ここ、空いてる?」
涼「あ、ええ。空いてます」
お、ラッキー。
すぐ隣に潤子さんか。
……話しかけたい衝動があるがどうせぶつかった時の事なんか覚えちゃいないし、何より睡魔が…。

で、授業開始。
……この授業、根本的に眠い。
眠くなくても眠くなる。
………睡眠学習を主軸にしているのだろうか。
…………もしくはこの眠くなる授業を特許で取ればたちまち億万長者に……。
……………う、だんだん眠く……ねむ………。

隣の男がぐらりぐらりと頭が揺れている。
眠いのだろうか。
いや、間違いなく眠い。
てゆーか眠ってる。
確かこの男は以前ぶつかった男だ。
やれやれ、前もろくに見えない居眠りする男か。
こんな男、よくもまあこの大学に…
ん、男の顔がこっちに…。
…………。
…う……かわいい。
男の寝顔ってこんなかわいかったっけ。
…………………。
……って、ちょっと!
何で私が男の寝顔なんかに…。
うう………かわいいよぉ…。
どこをどうすりゃこんなかわいい寝顔できるんだか。
……………ってちょっと!!
なんかこの男、動いてない!?
机に顔くっつけたまんまずりずりとこっちの方に動いていって…。
………って、ちょ、ちょっと!??
私の膝に落ちて……………ってこれ、膝枕じゃないの!!??
…………こっ、こっ、この男はっっ!!
私の……足に……………何のっけてんのっっっ!!!!

ドゴォッ
古典の教授「………今何か爆音がしなかったか?」
潤子「気のせいです。ちゃっちゃと授業を再開してください」
その横で死んだように、というか死んでいる涼の顔面からは大量の煙が立ち昇っていた。

眞「だははははははは!!!」
臣「はははは!何だよ涼!その顔!!」
涼「え、顔って?」
潤「ほれ、鏡」
涼「うおっ!なんじゃこりゃあ!?」
涼の顔面、しかもど真ん中に拳の形をした赤々しい跡がついていた。
眞「何やらかしたんだ?」
涼「何をと言われてもただ寝てただけなんだが」
臣「いや、いくらなんでもこれはないだろ」
涼「となると………潤子さんが横にいたのが原因なのかな?」
眞「へ?潤子の横?」
臣「……………………もしかして」
涼「なんだよ、もしかしてって」
その時だった。
潤子がこっちの方へ向かってきた。
涼「や、潤子さん」
涼と潤子の目が合った。
その途端、潤子は授業の時の事を思い出した。
があっと顔を赤くし、次の瞬間、
潤子「うるさいわよっ!この馬鹿っっ!!!!」
バキィィッ
潤子の拳が涼の顔面に炸裂。
ヒットした瞬間、涼の身体は吹っ飛び、数メートル先の壁に激突。
そして壁と一体化するかの如く壁にめりこんだ。
そしてその光景を目の当たりにした3人は戦慄を覚えた。
眞「こ…これがあの『アレ』ってやつなのか…」
臣「怖えよ!あんなん喰らったら誰だって諦めるって!!」
潤「そりゃ怯えて逃げ出すよ。思い出したくもないんだろうな」
潤子「ふんっ」
潤子はぷいっと反対の方へと歩いていった。
眞「おい、涼の方は大丈夫か?」
潤「……死んだかもしれんな」
壁の向こうから声がした。
涼「………くくく、こんなすげえパンチを持ってるとはな…」
臣「お、生きてたか」
眞「ま、これでわかったろ?こんだけ凶暴なんだ。諦めろって」
メキメキと音を立てて壁から抜け出た。
涼「いいね、ますます惚れた」
臣「なんでだよー!なんでそうなんだよー!」
眞「パンチ喰らって頭の中もイカレたのかー!?」

そして遠くでそのやりとりを見ていた茜は言った。
茜「………アホとしか言いようがないわ…」

そしてこの一撃が、後に大学内で伝説となる『潤子パンチ』の誕生となる。

後書き

今回のタイトルはSURFACEの『ゴーイングmy上へ』から。
さ、相変わらずの展開となりました(笑)。
今回にて潤子パンチなる新しい技が増えましたが、今回のプロジェクトは今までの設定ではありません。
まあ基本的には同じなんですが設定の追加もしくは若干の変更があります。
その変更点は少しずつ明らかになると思います。
それでは次回にて。