innocent walls

潤子「んもーっ!信じられない!!」
涼「んな事言ったって…」

茜「また何かもめとるようやな」
臣「そうだな…」
もめている原因はした事を臣と眞一郎に話した事だ。
臣と眞一郎は言いふらす事はないが、涼が潤子に言ってしまったのである。
自爆である。
というよりアホである。
ただ、臣と眞一郎は何故もめているのかは芹禾達には言わなかった。
赤裸々な出来事を話す必要はないし、言ったらかなりの確立で殺されるだろう。

涼「しょうがないだろ。他の人はどうだったか気になるし。それに痛くさせた俺のミスがあったかもしれないし」
潤子「だからそれは他の人に言う必要なんかそもそもないのっ!」
涼「……それはそうと、痛くないの?」
潤子はかっと赤くなる。
潤子「痛いに決まってるでしょ!思い出すだけでも痛いんだから!この痛みを涼君にも教えてあげたいわよ」
涼「…まあ、俺は男だからわかんないけど」
その一言で、潤子はムカッときた。
潤子「涼君なんか死んじゃえばいいのよっ」
涼「…俺が死ぬ時は泣いてくれる?」
潤子「泣かないわよっ」
ぷいっと潤子はどこかへ行ってしまった。
涼「……」
言い過ぎたか。
…というより俺は正論を述べてるだけだと思うのだが。
まあいいや、後で謝りに…。
ちくり
ふと、腹部に小さな痛みが起きた。
涼「?」
しかし、痛みはすぐに消えた。
涼「気のせいかな…」

そして昼。
空腹ではあるがメシより潤子だ。
謝っておかないと昼メシがまずくなる。

しばらく探していると、潤子を発見。
涼「潤子さん」
潤子「…何よ」
涼「……まだ怒ってるの?」
潤子「…別に」
…明らかに怒っている。
潤子「用はそれだけ?」
涼「え、うーん…」
それだけといえばそれだけである。
潤子「じゃあね」
涼「あっ、ちょっと待っ…

ブツン

痛みが爆発した。
腹部が痛い。
下痢や食中毒のような痛みではない。
それ以上の痛みだった。
その痛みは涼の足元を奪う。
前のめりに倒れる。
両手は腹部を押さえているため、頭部を守る事無くそのまま床にぶつけた。
ゴツンという鈍い音がした。
妙な音に気づいた潤子は後ろを振り向く。
潤子「涼君っ!」
潤子の顔から、さーっと血の気が引いた。
涼の身体をゆする。
潤子「涼君っ!涼君っ!しっかりしてっ!」
芹「救急車を呼ぶぞ!」
たまたまその瞬間にいた芹禾はすぐさま携帯を取り出す。
痛みは消えない。
爆発がそのまま続いている。
意識が消えつつある。
……死んじまうのかな…。
消えつつある意識の中、潤子の顔を見た。
ぼろぼろと涙を流している。
……………なんだ…泣いてくれるんじゃないか…。
意識は消えた。

………。
…………。
意識が戻った。
どこだろう。
ゆっくりと目を開ける。
見えたのは白い壁だった。
…壁……いや、天井だ。
自分が仰向けになって寝ている事がわかった。
……病院か。
どうやら天国でも地獄でも閻魔大王の判決の待合所でもないようだ。
……腹の痛みはなかった。
手足を確認する。
ちゃんと動く。
ふと、額に何かがついていた。
絆創膏…いや、湿布薬だ。
倒れた時にぶつけた部分か。
記憶の方も問題はない。
自分の名前も誕生日も、そして好きな人の名前も。
唯一覚えてないのは倒れてから今までだけだ。
横を向く。
窓から見えたのは青空だった。
……明るいということは倒れてから2時間しか経ってないか、もしくはそのまま眠り続けて翌日か。
隣のベッドからテレビから発せられる声が聞こえた。
流行のアイドルのニュースのようだ。
そのアイドルは聞き覚えがある。
…浦島太郎みたいに何十年という事はないようだ。
とりあえず助かったようだ。
……一部始終を医者から聞くか。
そばにあったナースコールのスイッチを押した。

盲腸で倒れたようだった。
急性というのは聞いた事があったがまさかここまでとは。
退院もすぐできそうとの事だ。

臣「しかし、お前も人騒がせな事するなあ」
涼「しょうがねえだろ。盲腸ってのは予測できねえんだから」
芹「なんにせよ、無事で良かったよ」
涼「芹禾さんが救急車呼んでくれたんでしたっけ。ありがとうございます」
芹「気にしなくていいよ。人として当然の事をしただけさ……そういえば、潤子は見舞いに来たのかい?」
涼「いえ、まったく来ないですね」
臣「いくら仲悪くても一度くらいは来てもいいのにな」
涼「とっとと退院して潤子さんに謝りに行きたいよ。天井とにらめっこしすぎて天井が笑って見えるよ」
芹禾は時計を見た。
芹「そろそろ帰るよ」
臣「早く退院してこいよ」
2人は病室を出て行った。
涼「……」
そういえば潤子だけ来ていない。
眞一郎や茜、それに潤や梨香に美夏は来ている。
涼「…嫌われたのかな」
本当に。
土下座でもしないと許してくれないのだろうか。
すると、ドアノブが動く音がした。
臣か芹禾が忘れ物でも取りに来たのだろうか。
ドアが開く。

そこにいたのは潤子だった。
涼「潤子さん…」

後書き

今回のタイトルはTaQのアルバム『stromatolite』から。
ビートマニアからでもあるのですが、こっちの方がオリジナルでしたので。
作曲者であるTaQ氏が入院中に創られたという事で話の内容にピッタリでした。
天井の模様って時々顔のように見えるんですよね。笑ってたり怒ってたり。
ただ大抵はムンクの『叫び』みたいにヒィィィーみたいな感じですけど(笑)。
本文を見ての通り、まだ続きます。
前中後編というわけではないですが3話構成は久々のような気がします。
それでは次回にて。